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2009年11月の記事は以下のとおりです。

Haynesが作ったAPOLLO 11のマニュアル

  • 2009/11/09 17:17
  • カテゴリー:散財

ファイル 333-1.jpg

 Haynesというイギリスの出版社は,昔から自動車やバイクのサービスマニュアルを一般向けに編纂し販売することで知られています。

 日本では馴染みがないかも知れませんが,特にヨーロッパでは自動車は長く乗るのが当たり前で,日々のメンテはもちろん修理も極力自分で行う事が普通に行われているんだそうです。そのためのちょっとした部品や工具は,少し大きなスーパーマーケットなら手に入ったりします。

 ですから,ヨーロッパではサービスマニュアルに需要があり,本屋さんでHaynesのものが買えます。日本では自動車のサービスマニュアルは基本的にメーカーが整備士向けに発行するので,一般のユーザーには手に入りません。外国車の面白いところは,こういったマニュアルや部品が割と楽に手に入り,自分でなんとかしようと考えている人が世界中にいて,実際になんとかなってしまう場合が多かったりする,という点ではないでしょうか。


 日本でも,今ほどたやすく入手できたわけではないのですが,Haynesのマニュアルを手に入れる事は出来ました。私も先日手放したプジョー306(N3)のサービスマニュアルを持っていましたし,父は私が子供の頃に当時乗っていたBMWの320iのサービスマニュアルを持っていました。

 会社の知人で,メルセデスの300TD(W124)に乗っていた人も持っていると言っていましたし,やっぱり知っている人は知っているシリーズなんですね。

 そして,このHaynesの最新刊が,なんとAPOLLO 11です。

 6月頃の話ですが,いつも楽しみにしているWiredVisionのメールマガジンを見ていると,HaynesのマニュアルにAPOLLO 11が登場する,というウソのような話が出ていました。

 日本のamazonでも買うことが出来るという事で,年末発売に向けて予約を受け付けていたのを見て,迷わずポチってしまったわけですが,それが一昨日,私の手元に届いたのです。

 面白い事に,6月後半には日本国内でも洋書の専門店では販売されている一方で,日本のamazonでは現在も予約中,しかも価格は3000円を超える値段になっています。紀伊国屋で頼んでもこのくらいの値段になるようですが,実際に手元に届いた伝票によると,2162円と大幅に安くなっていました。

 USのamazonでも22ドルくらいでしたから,結局円高のおかげで安く買えたというのもあるようですが,いずれにしてもこの本が2000円ちょっとというのは,随分得をさせてもらいました。

 Heynesのサービスマニュアルらしく,青く,硬い表紙に,おなじみの透視イラストが笑えますが,中身は結構真面目な本で,ジョークな本ではありません。

 もちろん,Workshop Manualといいつつ,メンテナンスの方法や分解方法などが書かれた部分はほとんどないので,この点についてはウソなんですが,ではなにがのっているかといえば,アポロ計画という壮大なプロジェクトを,機器や機材という面から見たものであるという感じでしょうか。

 今年はアポロが月に着陸して40年というメモリアルイヤーであり,多くのアポロ関連図書が世界中で出ているのですが,多くはいかにアポロ計画が壮大だったか,という話が中心に据えられます。

 もちろん,一般にそれがもっとも重く,人類の歴史に刻まれることだと思うのですが,しかし材料学,信頼性工学,電子工学,コンピュータ工学,放射線工学など様々な科学技術分野はもちろん,生物学,医学,精神医学といった分野であったり,プロジェクトを率いるリーダーシップのありかた,定量的な評価を行う開発手法など,人間の行動様式について探求された結果など,多岐にわたる成果が幾重にも連なり,あの壮大なアポロ計画が成功,賞賛されるに至っているわけです。

 ただし,それぞれの分野の成果はあまりに専門的すぎ,実際に我々の生活の中に直接間接に組み込まれているものであっても,気付かずに過ごしてしまいます。

 そんな中,Haynesらしいなあと思うのは,アポロ計画を自動車という得意な視点で本にしたことでした。

 Heynesのマニュアルを見たことがある人ならわかると思いますが,最初はその車の大雑把な紹介,それと距離ごとの定期点検,その後各ブロックの分解方法と電気系統の図面が続き,最後に用語解説と索引となります。

 基本的にこれをフォーマットとしているわけですが,いつもと雰囲気が違うのは著者のアポロに対する熱い思いと,開発中の様々な機材の美しい(本当に美しい)写真がふんだんに使われていることでしょうか。

 もっとも,サターンロケットの分解方法や定期点検を書いても仕方がありませんから,一言で言えば「Heynesがアポロ計画のガイドブックを作るとこうなる」という,実に興味深い内容になっています。

 正直なことを言うと,これはイギリス人らしいジョークで,本当にサターンロケットや司令船の組み立て方や修理方法が書かれていると思っていたのですよ。「こんなの知っててどうすんねん」という突っ込みを,くだらないことに全力投球するHeynesに対する賞賛と共に送るつもりだったのですが,それがどうしたことか,大人も子供も読み物として楽しく,写真の美しさにため息をつき,そして散々語り尽くされたアポロ計画について初めて知る情報が満載であることに,驚くことになりました。

 ほら,アポロ計画の関連の本というのは,舞台が宇宙ですから,どうしてもそういう方面の話が中心になるじゃないですか。私はこんな人ですが,宇宙とか天体とか星とか惑星とか相対性理論とかケプラーとかコペルニクスとか,あんまり好きではありません。好きなのはロケット(特にロケットエンジン),宇宙船,コンピュータ,宇宙服,生命維持装置,通信や制御装置といった機材,システムです。それに,人間である以上,スイッチは押したいし,つまみはひねりたいですから,あの強烈なコンソールもちゃんと見たいわけです。

 だけど,そんな本ってなかなかなかったのです。

 この本は,アポロ計画の概要に始まり,ロケット,司令船,着陸船の構造や詳細,開発の経緯などが書かれています。

 例えば,アポロ計画の成果の1つに,集積回路を使った超小型コンピュータの開発成功が挙げられます。私のようなコンピュータ工学に興味のある人間にとって,この成果はとんでもなく大きいものなのですが,私は日本のアポロ計画関連の本で,このApollo Guidance Computer(以下略してAGC)について詳しく触れたものを,見たことがありません。

 しかし,この本は貴重な写真と共に,その開発の経緯や役割が書かれています。もっとも,Haynesのマニュアルですので,アーキテクチャや回路図,プログラムの書き方が書かれているわけではありませんが,コアメモリの製造現場の写真,初期のブレッドボードの巨大なラック,そして自らの背丈ほどに積み上がったテストのプリントアウトに列んでほほえむソフトウェア技術者のMargaret Hamiltonさん(メガネっ娘属性の人にはたまらんものがあるんじゃないですか)と,始めて見る写真にドキドキしました。

 もちろん,司令船のコンソールもちゃんと詳細に書かれています。そしてなんといっても宇宙服です。初期の宇宙服からアポロ計画に使われたものに至る過程がしっかり記述されており,写真がその進化を雄弁に語ります。

 アポロ計画が好きな人にはもちろんですが,私のように少し宇宙開発に距離を感じているような人にとっては,アポロ計画が決して地球外生命体からもたらされたオーバーテクノロジーで一足飛びに作られたものではなく,あるいは一握りの天才が閃きと勢いで作り上げた奇跡ではなく,我々人類が1つ1つ基礎から積み上げて作った成果であったと認識させ,身近なものだと感じさせてくれる,正義のガイドブックであると思います。

 だって思いませんか,そこらへんのアポロ計画の本を見ても,すごかったんだなあ,というくらいの感想しか出てこないでしょう?私のような,月面着陸が生まれる前の話で,物心ついた時にはスペースシャトルが往復していた時代の人間にとって,やっぱりアポロ計画というのは,今ひとつリアリティがない,歴史の上のお話です。

 この本が素晴らしいのは,それが現実であったことを教えてくれることです。

 簡単に手に入るかどうかは分かりませんが,この本は中身を見ずに買っても損はしないと思います。英語?いや,そんなものは大丈夫です。写真を見るだけでも十分楽しいです。宇宙に興味のあるお子さんへのクリスマスプレゼントなんかに,最適ではないでしょうか。

安価な地デジブースターを考えてみる

 PCでテレビを見ることも板に付いてきた今日この頃ですが,多摩川沿いに住む私としては神奈川県の住民にもかかわらず,テレビ神奈川が安定しないという問題点にいまいちすっきりしていません。

 地方UHF局(テレビ放送からVHFが廃止された暁にはこの表現はどうなるのでしょうね)にそんなに躍起になるのもどうかと思うのですが,なにげにテレビ神奈川は面白い番組をやっているので,実は気に入っています。

 例えば「岡崎五郎のクルマでいこう」は全国枠でないのが惜しい良い番組だと思いますし,「天体戦士サンレッド」も楽しみにしています。実家にいた頃はずっと見ていた「探偵ナイトスクープ」もテレビ神奈川で放送されています。

 そんなわけで民放では最も見ているテレビ神奈川ですが,私の環境では少し受信レベルが低く,アンテナブースタなしではドロップがひどくて,満足に見ることが出来ません。

 そこで半信半疑で導入したのが,YAGIのDPW02というアンテナブースタです。ゲインは低く,その代わりノイズも小さいという「もうちょっと足りない」という用途に向けたアンテナブースタだそうですが,私が購入した6月時点のamazonの価格が約4300円とリーズナブルなわりに,私の環境では劇的な改善が見られました。

 ただ,安定受信ギリギリのところのようで,天候が悪いときなど,一瞬ですがドロップが起きているような感じです。別に実害もないのでほっときゃいいんですが,夜も眠れないくらい気になるのはやはり性格の問題でしょうか。

 アンテナブースタにもうちょっとゲインがあったら違うかも,そんな素人的な考えが浮かんで,少しamazonを散策してみました。すると,以前は見つからなかったユニデンのRB30Uというアンテナブースタが,非常に安価に出ているではありませんか。

 約3200円という値段ですが,ゲインは標準で30dB,NFは3.0dB以下というスペックです。ゲインは連続可変出来るようになっているので,安い割には使い道が広そうです。

 一方で私が今使っているDPW02ですが,ゲインは12から15dB,NFは2.0dB以下とローノイズが光るスペックです。価格は当時は4300円ですが,現在は3600円くらいまで値下がりしているようです。うむー。

 ノイズの差というのは実は結構大きいことが後々わかるわけですが,ゲインがこれだけ違ってくると,受信安定性も多少は良くなるんじゃないかと思いました。これも後々誤りであることがはっきりとします。

 そもそも,アンテナブースタというのは,テレビの手前に置いて使うものではなく,アンテナの直下に置いて,ケーブルや分配機による損失をカバーするために入れる一種のバッファと考えるべきものです。弱った電波を増幅する機能は確かにありますが,テレビの受信には電波の強さだけが重要なのではなく,ノイズの少なさ,平たく言うと電波の質こそ重要です。

 私のようなアパートでは,各部屋に分配するロスを補うためすでにブースタが入っているはずで,そこから何十メートルも同軸ケーブルで引き延ばされた後の電波を,室内のブースタで再び増幅したところで,一緒にノイズも増幅することになってしまい,電波そのものは強くなっても電波の質は改善しません。

 このあたり,なかなか直感的にモヤモヤするのですが,自分自身へのまとめとして書いておきます。同じくモヤモヤしている方は,辛抱して読んでスッキリしてください。

 まず,SN比についてです。信号とノイズの比率として馴染みのある数字ですが,通信分野ではSをキャリアの強さとしてCN比,もしくはCSNと書くことも多いようです。

 SN比は電力比で示され,信号レベルをS,ノイズレベルをNとした場合,

SN = 10*log(S/N) (dB)

 となります。ま,これはいいですね。

 次に雑音指数NFです。NFはある系における,入力と出力のSNの比を示します。つまり,その系を通ることで増える(もしくは減る)雑音がどれくらいあるのかを示すわけですね。入力の信号レベルをSin,ノイズレベルをNin,出力の信号レベルをSout,ノイズレベルをNoutとすると,

NF = (Sin/Nin) / (Sout/Nout)
= (Sin*Nout) / (Sout*Nin)

 となります。もちろん,それぞれの入力は電力です。

 もし,ある系が発生させるノイズがゼロだったとすると,ノイズの量は増えも減りもしませんから,入力と出力のSNが変化しない,つまりNF=1(=0dB)となります。

 さて,アンテナブースタ,同軸ケーブルや分配器など,チューナーまでのトータルのNFを考えてみます。なぜなら,結局のところ電波の品質,すなわち受信レベルというのは,系全体のNFが低いほどよいことになるからです。

 今,直列に繋がっている機器のそれぞれのゲインをG1,G2...とし,それぞれのNFをF1,F2...とします。全体のNFをFTとすれば,

FT = F1 + ((F2-1)/G1) + ((F3-1)/(G1*G2)) + ((F4-1)/(G1*G2*G3)) + ...
+ ((Fn-1)/(G1*G2*...G(n-1)))

 となります。(各値はdBではなく真数です)

 これを見て分かるように,NFに対する個々の機器のゲインの影響は後段になるほど小さくなります。また,初段のNFとゲインがもっとも系全体のNFに影響を与えることもわかります。

 ということはですね,同軸ケーブルのようにゲインは1以下,ノイズは増えるという装置を初段に置いてしまうと,後段でいくら高性能なブースタを入れてもほとんど効果がない,ということになるわけです。

 逆に,初段にブースタをいれてしまえば,後段に分配器や同軸ケーブルを入れても,あまり影響を受けなくなります。同軸ケーブルの長さを無視できる,分配する数を気にしなくてよい,というのが,アンテナブースタの本来の役割であることがおわかり頂けるでしょう。

 参考までに,いくつかのデータを紹介しましょう。

 まず,パッシブな機器のゲインとNFに対する考え方ですが,例えば分配器は2分配の場合に,4.0dBほどの損失があります。1つのエネルギーを2つにわけるのですから,損失が3.0dB以下つまり半分以下になることがないのは,ごく当たり前の話ですね。

 それで,この分配器のゲインはというと,-4.0dBとなります。ではNFはどうかというと,これは4.0dBとなります。結構なノイズ源になっていますね。

 同じように同軸ケーブルはどうかというと,BS用の5Cタイプ(直径5mmの太いやつですね)で,10mあたり約2dBの損失があります。安いケーブルは損失が大きく,高いケーブルは損失が小さいので,長く引き延ばすなら高価なケーブルを使わないとダメだとわかります。

 もし20mも伸ばすと,そのゲインは-4.0dBとなり,NFは4.0dBまで悪化します。これはなかなか強烈です。

 チューナーにも損失があります。空から飛んでくる電波のエネルギーを消費して信号を得ているわけですから,これも当たり前の話です。いわゆるゲルマラジオってやつは電池がいらないラジオですが,これは電波のエネルギーだけで音まで鳴らしてしまうゆえ,音も小さく感度も低いわけです。

 そのチューナーですが,損失は通常5.5dBと言われています。

 ここで分かるのですが,各部屋に分配されたその先で,複数のテレビやDVDレコーダを繋いで電波が弱った時に,各部屋でブースタを用いると効果がある場合があります。

 もちろん,チューナーの手前にブースタが入っていてもあまり効果がない,というセオリーが変わるわけではありませんが,それでも複数のチューナーを接続して電波が減衰してしまうような状況だと,室内のブースタでもそれを補う役割くらいは期待できるということです。

 さて,2分配器を入れ,同軸ケーブルを20m伸ばした先にチューナーを1つ繋げたケースで,トータルのNFをこれらの数字を使い,ちょっと計算してみると,さっと21.88となります。13.4dBというところでしょうか。

 ここでゲイン30dB,NFが3.0dBのブースタを用意します。最初にアンテナ直下にブースタをいれて,そこから2分配器と同軸ケーブルを経た場合のNFは,ざっと2.02です。ブースタのNFが3.0dB,つまり約2ですので,2分配しても20m伸ばしても,ほとんど悪化していないことがわかります。これはすごい。

 次に2分配器から20mの同軸ケーブルを経て,チューナーの手前でようやくブースタを入れた場合を計算します。すると12.52となります。ブースタなしより幾分良くなっていますが,やはりアンテナの直下が一番良いというのがよくわかります。

 では,今度はブースタをローゲイン・ローノイズのものに変えてみましょう。ゲインは12dB,NFは1.5dBとします。ゲインは先程のブースタの1000倍に対し,16倍まで低くなっています。これだけ低いとさすがに芳しくない結果が出るかと・・・

 まず,アンテナ直下に入れてみます。先程と同様に計算すると,2.70となります。このブースタのNFは1.5dB,つまり約1.4ですのでゲインが低い分,かなり悪化しているのがわかります。16倍程度のゲインだと,2分配とケーブルの損失を補うのは,けっこう重たい仕事だということになりますね。

 次に,このブースタをチューナーの手前に入れてみます。先程同様計算すると,9.73となります。

 比べてみましょう。

 ブースタの種類 アンテナ直下 チューナー手前

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