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2013年09月の記事は以下のとおりです。

やっとまともなFMステレオ標準信号

  • 2013/09/11 09:51
  • カテゴリー:make:

 絶滅して久しい「高級FMチューナー」を愛でる一部の奇特な人々にとって,その調整が経年変化でずれてしまったり,故障してしまって初期性能が出なくなってしまうことほど,悩ましいものはありません。

 調整は10年もすれば大きくずれるものですし,ずれてしまえば強烈なカタログスペックを誇る高級FMチューナーも,ラジカセ以下に成り下がります。これは不本意で悔しいことに違いありません。

 昨今,インターネットでFMラジオを聞くことが出来ますので,FMチューナーの役割はもう終わったかなと思う所もありますが,100kHz近い帯域を効率の悪いアナログ変調で贅沢に使ったFM放送は,本気になればビックリするほど高音質です。

 ただ,アナログですので,条件が揃わないと音質の劣化が激しいため,ラジオ=音質が悪いという一般的なイメージは,変わらないのではないかと思います。

 そんなわけで,私もパイオニアのF-757というチューナーを若いときに買って現在も保有する以上,ベストな状態を維持するために必要な保守は,もはや義務となったと自覚しています。

 そこで初めてオークションでジャンク測定器(略してジャン測)に手を出したのが,SSGであるVP-8191Aです。これは一般的な無線機の調整に使う事を目的にしたSSGのようで,AM変調とFM変調がかかり,下は90kHzくらいから,上は130MHzくらいまで発振できるものです。

 一応シンセサイザ方式ですので,それなりの精度が出ているものだと思いますが,FMチューナーの調整に欠かせないステレオ変調機能が搭載されておらず,VP-8191AだけではFMチューナーの調整に使えません。

 にもかかわらず手に入れたのは,手頃で程度の良さそうなSSGにあたる可能性がそうそうあるとも思えないことと,内蔵のステレオ変調機の性能は高級FMチューナーの調整にはちょっと物足りないものが多いこと,それにモノラルの段階ですでに大きく調整がずれている私のF-757にとっては,VP-8191Aで調整出来る範囲でさえも,大きな成果を得ることが出来そうだという期待があったからです。

 この春に手に入れたVP-8191Aで調整を行ったF-757は,大きく調整がずれていることがわかったのと,可能な限り再調整を行い,かなり状態は良くなりました。しかし,FM復調の調整が出来ないことは大変フラストレーションがたまりますし,実はFMステレオの復調は音質に大きな影響を与えるので,やはりちゃんと調整出来ないとつらいのです。とにかく,現在の状況もわからないというのは,気持ちが悪いです。

 ロームのFMステレオトランスミッタICを使って,簡単な変調器を作って見ましたが,あまり性能は出ず,気休めに過ぎません。せっかくオーディオアナライザも手に入れたことですし,VP-8191Aを買うときにも「そのうちFM変調器を買えばいいや」と思っていたこともありますから,オークションでの出品状況を見てみました。

 すると,安いものが見つかりました。VP-7635Aです。

 VP-7635Aは,VP-7633Aというこの時代の標準的なFM変調ユニットに対し,北米や欧州で使われていた渋滞情報をFMラジオで伝達する方式をチェックする機能が付いている,上位機種です。

 FMステレオ変調ユニットとしてはVP-7633Aと全く同じように使う事が出来るのですが,この時代のものですのでそんなに突出した性能があるわけではありません。しかしSSGに内蔵されたものよりはずっとよい性能を持っていて,歪率0.01%,セパレーション66dB以上,S/N90dB以上となっています。

 これをVP-8191Aと組み合わせると,一応高級FMチューナーを綺麗に調整出来そうです。欲しい。

 ジャンクに手を出すのはオーディオアナライザで懲りたはずですが,3000円ほどでしたので入札しておいたところ,うまく落札できました。

 届いたものを見てみると,やっぱり汚いです。なんでこうも汚いんですかね。

 通電して一通り試して見てから,分解して水洗いをします。気持ち悪くないように磨いたら再度組み立てていきます。

 ただですね,これ,ぱっと見ただけでは使い方がさっぱりわからないんですよ。今まで触ったこともないような測定器ですし,FMステレオの仕組みをちゃんと知らないといけないわけですから,動作を見て正常か壊れているのかを判断することも難しいです。

 説明書があれば勉強しながら使えるようになるのでしょうが,そんな気の利いたものはありません。手に入れたのは当時のカタログくらいのもので,搭載された機能が簡単に紹介されているだけのものです。

 面白いのは,VP-7635AはGP-IBを搭載しているのに,マイコンを内蔵していないことでしょうか。CPUなんてそんなに高価なものでもなかったし,安い製品ではなかったことを考えると,どうしてCPUを使わなかったのか疑問ですが,まあそれはいろいろ事情があったんでしょう。

 ですから,電源を入れれば以前の状態に復帰せず,必ず決まった状態からスタートしますし,初期設定はすべてフロントパネルから触ることが出来る半固定抵抗です。GP-IBについてもリスナのみで,簡単なものしか実現出来ていないようです。

 とにかく,その初期設定を行わなければ調整作業に進めません。ほとんど唯一のヒントとも言えるVP-8191Aの説明書を見ながら,なんとか使えるようにします。

 ところで,FMステレオ放送の原理は,左右のチャネルの信号の和信号と差信号を送信し,受信したらこの2つの信号から左右の信号を分離するというものです。

 なんでそんなことをすんの?と思うでしょうが,そうしないとモノラルしか受信出来ないラジオで,正しい音声が出なくなってしまいす。

 L+Rというのはモノラルの信号ですから,モノラルのラジオでこれがそのまま再生されるように電波に乗せる信号を作っておけば大丈夫。一方ステレオのラジオの場合は,L+RとL-Rを加算するとL信号が,引き算すればR信号が出てきます。

 ミソは,L-Rの信号をどうやってモノラルのラジオに影響を出さないように,また現在の放送システムと互換性を取りながら一緒に送信するのか,です。そこで考え出されたのが,現在のFMステレオ放送の方式です。

 2つの信号の和(L+R)と差(L-R)を作り,和信号は通常の音声として,差信号は38kHzのキャリアで振幅変調をかけ,しかもキャリアを抑圧します。DSBという変調方式ですね。

 そしてキャリアの半分の周波数である19kHzをパイロット信号として用意しておき,この3つを合成してコンポジット信号として,電波に乗せます。

 コンポジット信号は,モノラルのFMラジオの帯域にL+Rが存在するので,そのままモノラルラジオでも音を出すことが出来ます。L-Rは38kHzで変調されたので,38kHzというずっと高い周波数を中心に,低いところと高いところの両方の側波帯が出来ます。この結果,23kHzから53kHzまでがL-Rの信号となります。

 そしてここに19kHzのパイロット信号がのっかります。これがFMステレオのコンポジット信号の正体です。

 ここで,モノラルのFMラジオならあまり気にしなくても済んだ,音声信号の周波数帯域に気をつけなくてはいけないことに気が付きます。少なくとも19kHzのパイロット信号にぶつかってはいけませんから,音声信号の周波数帯域は19kHz以下に制限されます。実際には15kHz以上はカットされます。

 これはもう1つ理由があり,38kHzで振幅変調をかけるL-Rの帯域制限です。38kHzの両側に±15kHzの側波帯が出来るのですから,低い方が19kHzのパイロット信号にぶつかってはいけませんし,高い方も他の信号にぶつかってしまうとまずいのです。

 この両方の理由から,音声の周波数帯域は15kHzまでに制限されているわけです。

 ついでにいうと,その昔,ドルビー方式のノイズリダクションを搭載したカセットデッキで,マルチプレックスフィルタというローパスフィルタを搭載するものが高級機種では多かったのですが,これは周波数によって録音レベルを可変して聴感上のノイズを減らすドルビー方式のノイズリダクションが,19kHzのパイロット信号によって誤動作することを防ぐ目的で用意されていました。

 せっかく20kHz以上を録音できる高級機種で,高域をカットするのはもったいないと思うのは早計で,19kHzのパイロット信号が存在するのはFMのステレオ放送だけで,そのFMステレオ放送は15kHz以上の高域をばっさりカットされているのですから,積極的に使うべき機能でした。

 もっとも,FMチューナー側にも19kHzをカットするフィルタが搭載されているのが普通ですから,あまり実害はなかったのかも知れないし,FMステレオのS/Nがかなり条件の良い場合でも60dB程度だったことを考えると,ドルビーを使う意味がそもそもあったのかどうか,今にして思えば疑問ですね。

 さて,コンポジット信号をのせた電波を受けたラジオでの話ですが,モノラルのラジオの場合は和信号がそのまま再生されますので問題なし。

 ステレオの場合は19kHzのパイロット信号を2逓倍して38kHzを生成,これを元に差信号を復調し,和信号と差信号を加減算して,もとの左右の信号を得ます。この方式をマトリックス式といいます。

 復調の方法にはもう1つあって,19kHzのパイロット信号の2倍の周波数である38kHzを作り,この周波数で復調したコンポジット信号をそのままスイッチングして左右交互に出してやります。

 そうするとあら不思議,38kHzがHighの時とLowの時に,それぞれ左右の信号が出てくるんです。これをスイッチング方式と呼んでいます。

 なんで?と思うでしょうが,この2つは実は同じ事をやっています。変調時に38kHzのキャリアで振幅変調を行って,キャリアを抑圧しましたが,これは平衡変調器を使って実現します。

 平衡変調器というのは,2つの周波数の和と差を出力するものですが,それぞれの周波数は平衡しているので出てきません。そもそも振幅変調というのは,2つの信号の和と差を作る作業ですから,キャリア抑圧まで一緒にやってくれる平衡変調器というのは,とても都合が良いのです。

 ここで,2つの周波数の和と差というのは,2つの信号の積になるという事を,高校の時に習った数学で思い出して欲しいと思います。

 38kHzの信号が+1から-1まで変化するとし,もう1つの信号である(L-R)を平衡変調器に入れると,38kHzに同期して(L-R)と-(L-R)が交互に出てきます。これがFMステレオの信号には含まれているわけですね。そしてこの38kHzに同期して入れ替わっていることが,振幅変調そのものなのです。

 この信号を復調する時には,まず普通にFM検波を行ってコンポジット信号を手に入れます。コンポジット信号には,(L+R)と38kHzで正と負が入れ替わった(L-R),そして19kHzのパイロット信号の3つが含まれています。

 そしてパイロット信号である19kHzを2倍して38kHzにしてやり,この周波数で(L+R)と38kHzで正と負が入れ替わった(L-R)が混じった(言い換えると加算された状態の)コンポジット信号をスイッチングします。

 38kHzが+1になったときには,(L+R)+(L-R)=2L,-1になったときには(L+R)-(L-R)=2Rとなり,混じった信号から左右の信号を分離することができました。

 別の見方をすると,コンポジット信号を,1秒間に38000回のスピードで左右を切り替えて出しているのが,FMステレオです。人間の耳にはこの速度で左右を切り替えられても区別が出来ず,一緒になっているように聞こえるわけです。

 また,この38kHzで左右を切り替えるわけですから,送信時の38kHzとぴったり同期している必要があります。周波数は当然ですが,位相もぴったり合わないと左右の信号が漏れてしまいます。

 こうしたアナログ技術てんこ盛りな信号処理を使った方法は,お金をかければそれなりの性能が出ますが,お金をかけないと全然性能が出ません。高級なFMチューナーの性能がずば抜けていたのには,こういう理由もあるわけです。

 そりゃ,世の中デジタルが歓迎されますわね。余談ですが,このくらいの周波数をデジタル演算で処理する事は,今なら簡単にできます。大体,変調や復調というのは,純粋な数学の世界の話ですから,DSPを使ってもいいし,FPGAで作っても良いのですが,数式通りに実装してやればほぼ理論値に近い結果が得られるデジタル処理を行うことで,究極のFMチューナーが出来る時代です。

 やっと時代が追いついたんですが,悲しいかな,今そんな高性能なFMチューナーに需要はありません。
 
 話が逸れてしまいました。

 それで,FMチューナーを調整するには,日本のFM放送の規格に準じたコンポジット信号を作って,それをFM変調してやらねばなりません。SSGはFM変調をかける機械ですので動作は単純ですが,変調されるコンポジット信号を生成するVP-7635Aは,この規格に従った信号が出るように設定をしなければなりません。

 調べてみますと,日本のFM放送は,モノラル時最大75kHzの偏差で変調されることになっています。つまりこれが100%変調ということですね。

 そしてステレオ時には,主信号であるL+Rと,副信号であるL-Rの合計が90%,19kHzのパイロットが10%でなくてはなりません。75kHzの90%ということは,67.5kHzの偏差です。ステレオ信号をモノラルのラジオで受信すると,モノラルの信号を再生するより,少し音が小さくなるんですね。

 SSGであるVP-8191Aには外部入力端子がありますが,正確に75kHzの偏差で変調できるように,レベルインジケータがついています。OVERとUNDERのLEDが両方消灯するようにレベルを調整して入力すると,日本のFM放送でいう100%変調がかかるようになっています。

 ここまでわかれば,VP-7635Aの初期設定を始める事ができます。

 まず,VP-7635Aの出力レベルツマミを引っ張り,右に回しきります。このツマミは,押し込めば半固定抵抗が有効になり,設定した出力レベルになりますが,引っ張り出せば暫定的に値をツマミで調整が出来るようになります。

 そして,内蔵発振器を1kHzにセットし,変調モードをMONOにします。つまり,ただの1kHzの発振器の状態です。つまりこれが100%変調されると,75kHzの偏差になるわけです。

 VP-7635Aのレベルメータがフルスケールになるように,発振器の振幅を半固定抵抗で調整します。レベルメータはフルスケールで100%になるようよう,目盛りを切ってありますので,直読出来るようフルスケールにあわせます。

 続けて,内蔵発振器をOFFにし,パイロット信号をONにします。そしてNORMというボタンを押して,この時のレベルが10%になるように,半固定抵抗を調整します。ありがたいことに,VP-7635Aはパイロット信号だけ出力しているときには,レベルメーターはフルスケール15%のレンジに切り替わってくれます。

 普段の測定には使いませんが,ついでにパイロット信号のレベルを少し増やした状態と少し減らした状態を設定しておきましょう。+ボタンを押して11%に,-ボタンをおして9%になるように,それぞれの半固定抵抗を調整します。

 さて確認です。パイロット信号をNORMにし,内蔵発振器を1kHzにセット,変調モードをL=Rにします。そうするとレベルメータは100%になっているはずです。なってなければ,故障しています。

 これも普段は使いませんが,変調度が一発で30%になるようにしておきます。変調をMONOに切り替え,REDUCEDボタンを押します。そしてレベルメータが30%になるように半固定抵抗を調整します。

 そして最後に,パイロット信号の位相を合わせます。オシロスコープをX-Yモードにし,Xにパイロット出力,Yにコンポジット出力を繋ぎます。

 そして,変調をOFF,パイロット信号をONにします。この状態で,オシロスコープに出ている斜めの線が,綺麗に1本になるように,SCOPE PHASEと書かれた半固定抵抗をあわせます。この調整は,オシロスコープが最初から持っている位相差を含む,系の位相差を補正するものです。

 次に,内蔵発振器を1kHzに,変調をL=-Rにします。すると画面上にリボンのような図形が出ます。周波数比が1:2の時の図形ですね。

 画面の真ん中に,菱形の部分が出ているようなら,これがなくなって,2つの線が交差するような状態になるよう,PILOTと書かれた半固定抵抗を回します。

 ということなのですが,FMステレオモジュレータにおいて,この調整は一般的なもののようで,後継機種であるVP-7637Aの説明書にも書かれていました。私の場合,PILOTを回しきっても菱形を消すことは出来ず,最も小さくなるところで妥協せざるを得なかったことも記しておきます。

 また,これも面白い事なのですが,VP-7635Aは19kHzを手早く正確に合わせるための,周波数計を搭載しています。METERと書かれたボタンを押すとメーターが周波数計になり,パイロット信号を出力していたBNCコネクタが入力端子になって,ここの周波数が19kHzだとメーターがセンターに来るというものなのですが,入力端子になにも繋がない場合には内蔵の19kHzが校正用に入力されるらしく,SCOPE PHASEが調整済みの場合には,ぴったりセンターに来るのです。

 調整がずれることを覚悟してSCOPE PHASEを回せば,メーターが大きくセンターから外れるのですが,波形を見れば斜めの線が重ならず2本の線になっています。

 偶然かも分かりませんが,周波数計の校正に使うのはSCOPE PHASEで,19kHzのパイロット信号出力と,38kHzのコンポジット信号との間の位相差をゼロにすることで,周波数計の校正が出来る仕組みなんじゃないかと思います。

 それで,PILOTを調整して菱形を消すことが出来ないのは,私のVP-7635Aの不良ではないかと思います。内部を見たのですが,たくさん調整箇所があります。調整位置を示すマーキングから大きくずれている半固定抵抗も多数あり,再調整されたのか,それともでたらめに誰かが触ったのか不明ですが,いずれにしても完調ではないということでしょう。

 きちんと調整を済ませたいところですが,なんの半固定抵抗かわかりませんし,回路図もない,調整方法もわからないので,かえって悪くする可能性が高いです。ここはぐっと堪えて,現状のままでいくことにします。

 後述しますが,F-757の調整の結果,セパレーションは60dB近いのです。VP-7635Aのスペックでは66dBとありますが,F-757は60dB程度ということですし,完璧ではないにせよ,このVP-7635Aを使えば60dBくらいの性能が受信側でも出るという事がわかっているので,変にいじるべきではないと判断しました。


 さて,いよいよ仕上げです。VP-7635Aの出力レベルツマミを押し込み,出力端子をSSGに接続してSSGを外部入力モードに設定,変調をFMにして変調度を75%にします。この状態でUNDERとOVERの2つのLEDが消えるように,VP-7635Aの出力レベルの半固定抵抗を調整します。大体レベルメータの読みで40%くらいのところのはずです。

 これで,VP-7635Aの設定は終わりました。1kHzを発信させ,MONOにしたりL=RにしてもSSGのUNDERとOVERが消えていることを確認してみて下さい。

 私のVP-7635Aは結構怪しくて,発振周波数を切り替えるとOVERになったりUNDERになったりします。まあ,1kHzと400Hzくらいしか使いませんし,実は手に入れたVP-7635Aは改造品で,切り替えられる周波数が標準品とはちょっと違っています。あんまりこだわるのも面倒なので,もうこのままいきます。

 ところで,この内蔵発振器の性能についてですが,周波数はほぼ正確です。歪率は標準的で,0.002%くらいでした。VP-7722Aに比べると悪い値ですが,FMチューナーの調整には申し分ないです。

 では,早速F-757の再調整をしてみましょう。モノラルの調整は前回と同じです。しかし今回は左右同時測定可能なオーディオアナライザに高レスポンスのDMMがあります。実にスムーズに確認と調整が進みます。いいですね,気分がいいです。

 そしていよいよステレオの調整です。F-757はステレオ時に歪率を補正する回路があるそうで,ここを調整して歪率を下げていきます。そしてセパレーションが最善になるように,マルチプレクサの調整もします。

 そして,19kHzの漏れが小さくなるように,キャリアリークが最小になるようにします。

 この結果,以下の性能になりました。

・歪率
 MONO:0.0552%
 L:0.1%,R:0.1%

・セパレーション
 L->R:58.72dB,R->L:57.72dB

・S/N
 MONO:77.2dB
 L:61.4dB,R:61.37dB

・キャリアリーク
 -61.33dB

 おいおい,カタログスペックからすれば,全然ほど遠い結果です。取説に記載されている仕様によると,歪率はモノラルで0.005%,ステレオで0.008%です。一桁以上悪いです。

 セパレーションは70dB,S/Nはなんとモノラルで100dB,ステレオでも92dBとCDなみです。これはいくらなんでも盛りすぎですわね。FM放送のポテンシャルやF-757の回路形式を考えると,これは無理です。

 日本の取説にはありえない神スペック(嘘スペック)が書かれているので無視するとしても,正直で現実的な海外仕様のスペックに対しても実は届いていません。特に歪率が0.1%というのは,ちょっと悪いなあと思います。

 これなら,F-757を大事に調整して使うのではなく,別の中古のチューナーを探して買い直すのも手かも知れないですが,なんだか本末転倒ですね。

 あるいはF-757の不良箇所を調べて修理するという手もあるでしょうか。電解コンデンサは20年もすれば,悪くなっているものもあるでしょう。交換するだけで随分良くなるような気もします。

 9月になると,毎年恒例の東京Jazzの生中継がFMで行われるはずです。これに間に合うようになにか手を考えてみましょう。

 VP-8191AにVP-7635Aと,まあ滅多に使わない測定器をよくも揃えたものです。代用の利かない測定器で,これがないと全く話にならない,でも持っていても滅多に出番がないという,つぶしの利かない面倒な存在ですが,あまりこじつけて無理に納得することはしないで,FMチューナーをベストな状態にするために必要なものだったと,割り切ることにしたいと思います。


 測定器の話は,あと最後に1つ,2465Aの調整のために新品を買った,ファンクションジェネレータAG-1022のお話を次回にして,やっとおしまいです。

業界標準のDMMの使い心地

  • 2013/09/06 08:51
  • カテゴリー:make:

 VP-7722Aを見つけた時に,業界標準で知られるアジレント(旧HP)の34401Aを安く見つけました。とりあえず入札しておいたのですが,かなり汚く,程度もよくなさそうです。

 にも関わらず,終了間際で値段が上がり,結局25000円ほどになりました。ジャンクはもとより,程度もよくない感じですから,これはちょっと高いなと思いつつ,気が付いたら落札。2年前にDL2050を3万円で買ったのに,DMMが増えてどうするんだという感じです。

 届いた34401Aは想像以上の汚さです。表面はヤニのようなものでネトネトしていますし,日焼けもすごいです。アクリルの風防は,型名やメーカーロゴが一部消えています。

 これ,仮に動いても精度は全然信用出来ないんだろうなあ。

 そんなことを考えつつ,とりあえず清掃です。可能な限り分解して,水洗いします。煙草のヤニかもしれないので,強力な洗浄剤を使って掃除します。

 だいぶ綺麗になったとは思うのですが,それでもまだまだ薄汚いという印象です。しかし,汚い外側と打って変わって,中身は大変綺麗です。ちょっと期待が持てそうです。

 元のように組み立てて,動作チェックです。まず,セルフテストを走らせます。ありがたいことにすべてパス。基本的な動作は大丈夫なようです。

 入力をショートさせて電圧を見ると,さすがに6桁では完全に0mVにはなってくれません。まあ,これはケーブルや端子の接触によるものですので,精度が出ていないせいかどうかは,わかりません。

 34401Aは,6桁半という高精度DMMを,当時の常識を破る低価格で実現したベストセラー機です。事実上のDMM標準器といってよいと思います。私にとっては,6桁半という精度よりも,高速な測定周期や周波数特性が300kHzまで伸びていることが機能的には大変魅力です。

 私が2年前に買ったDL2050も,同じOEM元からアジレントは供給を受けて自社ブランドで販売していますが,34401Aに比べると何もかも1ランク下で,ちょっと使い比べてみると,使い心地が違うことは否めません。なんででしょうね。

 DL2050はデュアル表示なので,周波数と電圧を同時に測定出来たりしますが,実際に使ってみると測定周期が遅くなって今ひとつ実用的ではありません。製造ラインの検査では役に立つ機能かも知れませんが,普通に使う場合電圧と周波数を切り替えて使う方が良い場合がほとんどのような気がします。

 まあ,そんなことより34401Aの実用的な精度が気になります。DL2050と比べてみたのですが,ほぼ一致しています。DL2050は5桁半ですから,最終桁はわからないんですが,とりあえず大きな差があって悩む,と言うことはなさそうです。

 抵抗も周波数も問題はないようですし,ステップ式のアッテネータを持つ低周波発振器を繋いでアッテネータの減衰率を見てみたところ,ちゃんと決まった数字だけ変化していますので,相対的な精度もそれなりにあるようです。

 34401AはDL2050と違って調整(校正)もユーザーが出来るようになっているのですが,さすがに6桁半を合わせきる自信もないし,さっと試して見た感じで今以上の精度を出せるとも思いません。

 よって,34401Aについては,このままにします。

 しかし,テストリードは買わないといけないです。

 DL2050の時には,計測器ランドのオリジナルブランドのものを買いました。ものは悪くないのですが,その代わりちっとも安くないというもので,お得なのかそうでないのか,今ひとつはっきりしないものでした。

 使ってみると,不必要にバナナプラグのL字部分が長くて,非常に邪魔です。自ずとDL2050を使う機会が減ってしまっていました。

 その後,アジレント純正品を調べてみると,同じ値段で手に入ることがわかり,地団駄を踏んだわけですが,この純正品はICクリップや先の長いテストリードなどの付属品もちゃんとついていて,価格以上のお買い得感があります。

 ということで,これを今回34401A用に買ってみました。これ,大変よいです。

 バナナプラグの部分はストレートなので,ベンチ型DMMには最適です。ケーブルもしなやかで邪魔にならず,先端のリードに装着するオプションはどれも大変便利です。もう1つ買っておこうかと思ったくらいです。

 ということで,DL2050よりも全然使いやすい34401Aが,うちのDMM主力機の座に座ってしまいました。DL2050は保証のある状態で購入したという「まともさ」だけが存在価値になってしまった感じもありますが,これでも34401Aより1万円も高かったことをどう考えるべきか,ちょっと複雑な気もします。

 いや,DL2050は,これはこれで愛着があるんですよ。


 で,そろそろ測定器祭りも終わりだろうって?冗談じゃない。まだありますよ。

燃えろ!アナライザ基板!

  • 2013/09/04 09:05
  • カテゴリー:make:

 VP-7722Aの修理の続きです。片CHは生きていましたし,低歪み発振器も生きていますので,とりあえずこの状態で「使える」ものであることは,かなりの安心感を与えてくれました。

 しかし,人間欲が出ますね。両CHが使えたら,どんなに面白いでしょう。

 VP-7722Aは,2次側の電源にヒューズを入れてくれていたので,他のブロックを壊さずに済んだ可能性があります。電源部もヒューズの交換だけで動いていますし,もともとCH2用だったANALYZER BOARDをCH1のスロットに差し込んでやると,CH1の入力で動作してくれます。

 修理をするのに,正しく動作する現物があるとどれほど助かるかわかりません。回路図はありませんが,似たような回路であると思われるVP-7720Aの回路図はあります。

 まずは,焦げた部品の特定です。

 +15Vと-15Vラインに入っている10オームは,跡形もなく吹き飛んでいます。入力保護と思われる22オームも吹き飛んでいますし,入力とGNDの間に入っている保護ダイオードも真っ白です。

 なにを血迷ったか,この基板をもう一度差し込んで電源を入れてみました。案の定ヒューズは飛び,表示も消えてしまいました。

 白くなったダイオードをテスターで当たってみると,完全にショートしています。+15Vと-15VとGNDがつながっているのですから,そりゃーヒューズも飛ぶってなもんです。

 貴重なヒューズを再度交換し,原状復帰をしたところで,本格的に修理再開です。

 どうやら,入力に過大入力を入れたか,例えば,大出力のパワーアンプを入れたとか,ダミーロードが外れたとか,そういう話ですね。

 まず過大入力でダイオードが破損,ショートして電源がショート,直列に入っている10Ωが燃えたというわけです。入力の22Ωが焼き切れるより先に,ダイオードがショートしたわけです。まあ,概ねこんなところでしょう。

 目で見て明らかに壊れている部品は交換するとして,見た目になにも変わらないけど壊れている部品をどうやって見つけ出すかです。

 回路図を元に特定するのも良いですが,気持ち悪いので,抵抗は基本的に全部交換します。ただし,高精度のものは特殊なので,値を測定してそのまま使います。

 抵抗を交換し,付近にあったトランジスタ(出力用)を一度外してhFEを計ります。一応動作しているようなので元に戻して,ダイオードを1N4148に交換します。

 これで基板を差し込み,電源を入れます。

 今度はヒューズは飛びません。しかし,値は全然でたらめです。基板の部品をあちこち触ると値がコロコロ変わります。もっとも値が変わる部分を調べて,そこを重点的に調べていきます。

 もしかするとツェナーダイオードかも知れません。結構よく壊れるんですよ。

 外して調べてみると,これは正常です。

 ここでまた数日膠着状態に陥りました。

 仕方がないので,トランジスタも交換することを考えてみます。しかし,特殊なトランジスタもあるので,すべてを交換することは出来ません。高周波用の2SC1215と初段差動増幅用デュアルFETのuPA70Mです。

 高周波用の2SC1215は2SC1906で代用できるとして,uPA70Mは他に変わるものはありません。デュアルであるかどうかもそうですが,それ以外のスペック,VGSやgmもなかなかぴったりのものがありません。

 他の2SC828や2SA564は,hFEさえあっていれば2SC1815と2SA1015で置き換え可能ですから,ちゃんとペアを取っていきましょう。ダイオードは1N4148に交換です。

 一気にトランジスタを外して,hFEを確認します。ほぼ200前後で揃っています。2SC1215も問題ないようです。しかし,2SA564の1つだけ,100程度しかないものがありました。不良とは言いにくいのですが,気持ち悪いのでこれだけ200程度の2SA1015に交換します。また,ペアが組めないので,単独で使われている部分にあてがいます。

 トランジスタとダイオードをはずした基板を改めて見てみると,焦げたパターンが良く見えます。一応確認しておくかと,導通を見ていたら,見た目には正常なパターン切れを見つけました。燃えた抵抗の近くの電源のパターンです。

 これが切れていたため,電源が供給されず,まともに動かなかったようです。

 他に似たような箇所がないかを総点検し,トランジスタを取り付けます。そして切れたパターンをつないで,満を持して本体に差し込みます。

 電源を入れます。

 おおお,左右で同じような値を示しています。レベルも歪みも,ほぼ同じ値です。とりあえず修理出来たようです。なにがよかったって,2SC1215とuPA70Mが死んでいなかったことです。

 uPA70Mのオフセットだけはなんとか調整し,左右の基板のワイアリングをうまく調整して,左右の値が近づくように調整します。入力端子から遠いCH2だけは,ちょっとだけ歪率が悪く出る傾向があるようです。

 レベルが小さい時,周波数が高いときの歪率は,修理した方が悪い値を出します。ダイオードの問題か,ノイズの問題でしょう。

 オリジナルのダイオードは1SS101らしく,これがなかなか絶妙な小信号用ショットキーなんですね。手持ちのショットキーを探してみたら,電源用だったりするので容量(キャパシタンス)が大きかったり,速度が遅かったりと今ひとつです。結局一番近いスペックだったのが,接合型の1N4148だったのですが,高周波特性に違いがあったり,小信号時のリニアリティに差があったりするのかも知れません。

 まあ,それは頭に入れて使えば良いだけのことです。1kHzで2Vrmsくらいなら,左右の差はほとんどありません。

 ということで,VP-7722Aは一応実用レベルに復活しました。

 自作の歪率計は調整が狂っていて,確からしい値が出てきていないのですが,自作の発振器の歪率をVP-7722Aで調べてみると,完成時の値にほぼ一致した値が出てきます。0.0006%程度です。VP-7722Aの発振器が0.0004%くらいですので,自作の発振器は大健闘,VP-7722Aの発振器はまずます優秀ということになります。

 実は,0.0002%くらいまで追い込もうかと思ったのですが,発振器が悪いのか,歪率計が悪いのかわかりませんし,あちこちいじって壊すのも嫌だったので,このくらいで妥協しました。

 ここまでくると愛着がわいてくるものです。

 ケースを分解し,水洗いです。スイッチ類も丁寧に拭き掃除をし,可能な限りホコリを掃除機で吸い取ります。

 冷却ファンは密封されたデジタル部に1つ,全体の廃熱に1つ付いていますが,先の部品屋で280円で出ていたファンがデジタル部に使えそうだったので交換しました。全体の廃熱ファンは同じ物が手持ちになかったのですが,一回り大きなものが新品であったので,これを無理矢理取り付けました。ファンが壊れると,全体がダメージを受けますので,新品交換はぜひやっておきたいです。

 再度組み立てて,ワイアリングを綺麗に行い,チェックしてからケースを閉じます。完成です。

 
 それにしても,なかなかVP-7722Aは便利です。ぱっと入力信号に同調してすぐにひずみ率が出てきますし,左右のレベル差をdBで表示すればセパレーションが一発です。S/Nも自動化されていて,発振器の動作を制御して無音時と信号入力時の比率を一撃で表示してくれます。

 まだ試していませんが,当然フローティング入力にも対応しているので,BTLのアンプでも2CH同時測定可能です。また,レベルの相対値表示も出来るのですが,これも上手に使えば便利に使えそうです。

 VP-7722Aが結局3万円だったと考えれば,まあ相場程度かなと思う訳ですが,壊れたものを買わされて,あげく自分で修理する羽目になるとは,とんだ失敗です。修理をしている間,部屋は散らかり放題,大きな筐体にたくさんの部品と基板で足の踏み場もなく,しかもどれも真っ黒に汚れていて,スリッパの裏側が黒くなります。

 検討部屋ではこれ以外に何も出来ず,早く片付けたいというプレッシャーもきついものがありました。

 今回は修理出来ましたが,いつもこうとは限りません。過大入力で初段のFETが壊れていたらもうアウトでしたし,DSPが死んでもアウト,ROMが死んでいてもアウトです。電源が壊れておかしな電圧が出たら,すべてのボードが全滅したでしょう。交換する部品は容易に入手出来ても,どこが壊れているか特定するのは困難だったでしょうし,なにが正しい状態かわからないと,ゴールも決められません。

 やはり,オークションにはそれ相応の目利きが必要だと,痛感した一件でした。

 
 え,これで測定器祭りが終わりと思ってる?

 まだまだ,続きますよ。

ゴミは甦るのか

  • 2013/09/03 14:40
  • カテゴリー:make:

 粗大ゴミを3万円で買った私は,嫁さんにその事を正直に話しました。「いくらしたの」「3万円」「それは痛いねえ」という彼女の目は,ざまあみろと笑っています。

 嫁さんがその後,堰を切ったように数万円の買い物に嬉々としていることを,私は見逃しませんでした。しかし,今の私にそれを咎める資格もなければ,そんな強い心も持っていません。

 自分の身に起こった残念な話はおもろいネタとして活用するのが関西人ですが,今回の失敗はネタに出来る喜びを,ほんの僅かな自尊心が上回り,私にしては珍しく黒歴史として封印されることになりそうでした。

 VP-7722Aは修理を試みる人間を返り討ちにするような複雑さです。回路図はおろか,マニュアルもない中で,手の出しようがないというのが最初の状況です。

 VP-7722Aは,マザーボードに多ピンのコネクタが並んでおり,ここに様々な機能を持つカードを差し込んで行くような仕組みです。VP-7723Aのように,1枚の基板にいろいろな回路を入れ込んだ構造ではありません。

 しかし,カードの枚数が多いのです。アナログ部が6枚,デジタル部が6枚で構成されていて,それぞれの基板には部品がぎっしりです。コネクタの接触不良もあるかと思い,とりあえず一度外して,差し直しをします。

 ・・・全然駄目でした。

 もう少し考えて見ましょう。

 表示が出ないわけですね。発振器は動いていますし,操作も出来ますね。ということは,メインのCPUは動いています。しかし,歪率に関係のないレベル計に切り替えても表示が出ません。

 まず疑うのは,デジタル部です。しかし基板に書かれた「名称」くらいしかヒントがなく,仮にこのうちどれかが壊れていても,それを私が見つけて修理するのは,回路図もないのに難しいでしょう。

 とりあえず,バックアップ用のNi-Cd電池をCR2032に交換です。

 当たり前ですが,全然変化し。

 付着したホコリが湿って導電性を持ち,ショートしている可能性もあるなと思って,とにかく掃除機とブラシで徹底的にホコリを取りました。

 それでも全然変化無し。

 これで数日経過しました。まさに膠着状態です。

 一方で,とにかく回路図を手に入れねばと探し回りますが見つかりません。仕方がないので,手持ちのVP-7720Aの回路図を見ます。全然違う機種ですが,回路構成や部品などは共通の所もあるでしょう。何もないより,少しは訳に立つはずです。

 そうこうしているうちに,ふとヒューズに目が行きました。ガラス管のミゼットヒューズですが,ホコリまみれで中が良く見えません。

 テスターで念のため当たってみると,いくつかあるヒューズのうち,2本が切れていることがわかりました。おお,ヒューズが切れているということは,どっかで電源がショートしているという事ですね。一歩前進です。

 もう一度基板を見直します。

 アナログ系の基板は,シールドの為に鉄の板が被さっていますが,面倒くさがらずこれを外して見てみます。

 そうすると,ANALYZER BOARDと書かれた基板が,なにやら丸焦げです・・・

 すごいです。抵抗は煤になっていますし,ダイオードはカラーバンドが真っ白になってガラス管が曇っています。基板も黒く焦げていて,燃えた部分は凹んでいます。これは強烈です。

 よく見るとシールド板にも焦げがありますし,ケースの裏側にも焦げた跡があります。この規模から考えると,周辺の部品も道連れにしているかも知れません。

 VP-7722Aは2CH同時測定可能な高級機ですから,ANALYZER BOARDは2系統存在します。燃えているのはどうもCH1入力のもののようで,CH2の入力を受けるもう1枚のANALYZER BOARDは,ぱっと見ると無傷です。

 そこで,焦げたボードを抜き取り,ヒューズを交換して見ました。

 電源をドキドキしながら入れると,おおおー,表示が出ました。

 発振器の出力をCH2に入れると,周波数とレベルが表示されています。歪み測定のスイッチを押せば,なにやらそれらしい数字も出ています。0.00043%くらいですね。もしこれが本当なら,なかなか素晴らしいです。

 周波数を可変すれば,測定した周波数も変化します。歪率はほぼ一定で,レベルも他の電圧計の指示とそんなに変わりません。

 この段階で,VP-7722Aは歪率計として機能している可能性が高まりました。2CH同時測定は出来なくても,歪率計としては使えるかも知れません。ああ,粗大ゴミではなくなったのです。

 しかし,出来る事なら修理を行って,VP-7722Aの本来の機能を復活させたいものです。2CH同時測定が出来ると,例えばセパレーションの測定も出来るし,左右同時に負荷をかけたときの歪率を見ることも出来ます。

 ということで,焦げた基板(というかもはや燃えた基板という方が正しい)の修理を試みるのですが,これがまた茨の道でした。次回に続きます。

3万円で粗大ゴミ

  • 2013/09/02 09:23
  • カテゴリー:make:

 デジタルオシロが新品でも3万円で買えてしまう昨今,アナログオシロの人気はすっかり衰えてしまいました。

 アナログにはアナログの良さがあるし,趣味で使うには十分なことも分かっていますが,小さく軽く,電気も食わず,しかも多機能で安いとくれば,アナログをわざわざ選ぶ理由は少ないです。

 むしろ,アナログのメリットが見えてくるような使い方は,趣味の範囲やアマチュアの道具としては,ないのかも知れません。

 しかも,オシロスコープのメーカーは,アナログオシロをもう作っていません。新品で手に入れる事が現実的に難しい中では,中古で出てくるものも,ましてオークションなどで出てくるものも,デジタルオシロになってしまうことは避けられないでしょう。

 ですから,アナログオシロの値段の下がり方は大きくて,100MHzクラスであれば数千円です。新品が買えないものですから,手に入るものは必ず中古ですが,時間が経過すれば調整がどんどんずれるものもまたアナログの特徴です。だから,価格は年々確実に下がります。

 もう,アナログオシロというのは,ビンテージカーなんかと同じで,かつてそれを使っていた人が当時を懐かしむ,趣味性の強い機械になっているといって差し支えないでしょう。

 加えて,テクトロニクスの24xxシリーズにはもっと別の理由で,価値が暴落しています。24xxシリーズは1980年代にアナログオシロの完成形として登場したわけですが,性能や使い勝手は申し分ない代わりに,カスタムICやハイブリッドICが多用されているために,修理が難しいという事情があります。

 特にハイブリッドICの故障は深刻で,メーカーの部品在庫がなくなってからは修理不能となってしまい,多くの24xxシリーズが廃棄されたんじゃないかと思います。今壊れていなくても,そのうち壊れる,壊れてしまえばもはや修理の方法はない,という状況から,10年ほど前からは中古価格も暴落しています。

 それでも,私にとって2465Aは「嫁入り道具」です。これはとにかく大事にしたいです。

 ハイブリッドICのような部品は,もう正常に動作するものから外して移植するしかありません。だから,精度や信頼性はともかくとして,とにかく動くようにするにはなりふり構っていられません。

 いずれ,ジャンクの24xxを1台部品取りに確保しないといかんなと思っていたのですが,最近,オークションでもアナログオシロの出品が減ってきているという話を耳にしました。値段も付かず,程度の良いものが減ってきている状況ではやむを得ない話で,いずれ入手困難になる可能性も考えねばなりません。

 今のうちにドナーを手に入れて置こうと,オークションを探してみると,うまい具合に2445が出ていました。難ありという事と,帯域150MHzでジャンクとあれば,いかに2445といえ,値段は上がらないはずです。果たして,私は6500円で入手しました。

 6500円かあ・・・私が高校生の時に始めた買った松下のオシロは,5MHzで8000円だっただったんですよね。150MHzで4CHなら,アマチュアの工作にはもう十分すぎるんだけどなあ。

 まあ,とにかくこのドナーで2465Aが復活したことは前回書きましたし,プリアンプを除くハイブリッドICも入手出来たので,当分2465Aを修理することが出来るでしょう。


 前置きが長くなりましたが,ようやく本題です。

 オークションというのはまさに歓楽街ですね。楽しさと危険が同居しています。一度踏み入れると次から次へと面白いものが眼に入ってきます。怖いところです。

 2445を見つけた時に,オーディオアナライザのジャンクを見つけてしまいました。

 VP-7722Aという松下の機種です。見た目に随分巨大な装置で,まるで1970年代のミニコンピュータみたいです。調べてみれば松下のオーディオアナライザのフラッグシップモデルだそうです。

 オーディオアナライザは,オーディオの自作をする人間にとっては,1つの目標点と言える憧れの測定器です。レベルやS/Nなどは電圧計と発振器で測定出来なくはないんですが,歪みだけはどうにもなりません。

 一度,HPのオーディオアナライザを中古で買おうと思ったのですが,安く出ていた(それでも12万円ほどしていた)を買い逃したのが15年ほど前,以後「これに手を出したら最後」と踏みとどまって,一昨年は歪率計の自作で決着を着けたはずでした。

 歪率計の自作は良い勉強になりましたし,歪率計の調整に歪率計が必要になるという話もなく,それなりの精度が出ているように思われたので満足していたのですが,やはりちゃんとしたものが手に入れば,それが一番いいです。なにより,自作の歪率計はBTLなど,出力がGNDから浮いているアンプの測定が出来ないのです。

 そのオーディオアナライザが安く出ています。しかも高級機であるVP-7722Aです。写真で見る限りかなり程度は悪く,しかも安全の証である,自分の歪率を測定した写真がありません。これは,壊れている可能性が高いです。

 VP-7722Aは2CH同時測定が可能で,発振器は0.0001%の超低歪み,通常の歪率だけではなく,DSPを内蔵して2,3,4,5次の高調波を抽出したり,S/Nの自動測定や,左右の相対レベルを計算して表示したりと,まさにオーディオの測定を簡単確実高精度で行うことが出来る,魔法の機械です。

 1980年代中頃というCDやDATなどのデジタルオーディオ機器の登場に対応すべく,0.0001%の歪みまで直読出来る性能は,現在でも見劣りしません。当時130万円という高価な測定器は,伊達じゃありません。

 欲しい。

 でも,壊れていると厄介だ。

 でも,これが次にまた出てくるとは限らない。

 ・・・気が付いたら,3万円以上という高価格で,手に入れていました。

 届いたVP-7722Aは,私のワクワクした期待を完全に打ち砕き,地獄の底にたたき落としました。恐れていた,粗大ゴミだったのです。

 あまりに汚く,触るのも憚られるほどです。電源を恐る恐る入れると,ファンは回りますが,表示は消えたまま。

 こりゃやられたなあと思いつつ,発振器の出力をオシロスコープに繋いでみれば,一応正弦波は出ています。周波数も振幅もそれなりの精度です。自作の歪率計で歪みを計ると,自作の発振器よりは低いこともわかりました。

 完全に壊れているなら,速攻で粗大ゴミにするところですが,超低歪み発振器が生きているなら,ちょっと捨てるのも惜しいですね。なんとか修理出来れば御の字です。

 そう思って,ケースを開いて見ました。

 真っ黒なホコリが渦を巻いています。どこを触っても指が汚れます。大きな筐体に部品がぎっしり詰まっていて,もう何がなにやら,と言う感じです。修理しようという気が失せるほど,複雑な構造です。

 とにかく,もうこれはゴミだ,捨てることが決まったものだ,だから,気が済むまでいじくって,あとは捨ててしまえばいいと,そんな気分で分解を始めました。あー,ホコリが鼻に入ってくしゃみが出ますよ。ハクション。

 次は修理編です。

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