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2019年09月の記事は以下のとおりです。

Rollei35の修理

 東急百貨店最後の「世界の中古カメラ展」で思わず買ってしまったRollei35,3連休で分解と修理を進めました。

 分解して程度を確認した印象で言えば,正直なところ,35000円という価格に対して十分見合った価値があるとは思えません。もう3000円出せば整備済みのものが買えたりするわけで,この値段でこれだけ問題を抱えた個体を売っている業者は,そんなに良心的ではないとも思えます。

 もちろん,修理も点検もサポートすることをを約束してくれている(その上着払いで送ってくれれば構わないとまで言ってくれている)し,その信用に対する価格が随分上乗せされているのだと思う訳ですが,見方を変えると業者も修理費用を負担してしまえば即赤字になるような個体を売ったりすることはないはずで,さすがに50年も経過したカメラが現時点でどんな状態にあるのが「普通」なのか,私にはつかめていません。

 つまり,修理を行うにしても部品交換が必要なほど深刻な不良はなく,修理を前提としたベースモデルとしては十分だという意味で,この値段が付いていると考えるのが適当かも知れません。それにしては高いですかね・・・

 ただ,これもちょっと疑問があって,レンズは一見すると綺麗ですが,後玉には傷かカビの跡かがありますから,写りに問題ないという実際の問題とリセールバリューとは別の問題とすれば,やはり買うときに教えておいて欲しかったなあと思います。

 これまでに判明した問題点は,以下の様な感じです。

・ファインダーのクモリ
・巻き上げレバーのクッションの破損
・1/2秒が出ていない(実質1秒)
・露出計の指針がシャッタースピードや絞りと連動しない
・露出計の狂い
・ピントリングのグリス抜け
・全体的に動きが渋い
・巻戻し時に使うリリースレバーがきかない

 まあでも,この程度で済んでいるんだから,随分ましなんでしょうね。

 修理中に私が壊した箇所は2つで,1つはレンズの分解を行う時にピントリングの回転を制限するストッパーの爪を折ってしまったこと,もう1つは巻き上げレバーの飾りネジを折ってしまったことです。

 巻き上げレバーの飾りネジは無理をして壊したわけではなく,突然ポロッと取れたと思ったら,ネジが折れていたという感じです。

 
(1)ファインダーのクモリ

 これは購入前に聞いていたことではありますが,気にしないだろうと思っていたらやっぱりとても気になるので,上カバーを外してファインダーブロックをを取り外して,分解清掃を試みました。

 あくまで推測ですが,このファインダーにはセロテープが貼られており,かなり劣化が進んでいました。糊の部分がファインダーブロックの隙間に貼られており,ここから発生したガスがファインダーを曇らせているような感じです。

 シンガポール製なのでプラスチック製だろうと思いましたが,私には3つの光学部品はすべてガラス製に思えました。

 分解出来るようになってはいないのですが,慎重に分解し光学部品を取り出します。銀蒸着を傷つけないようにアルコールで両面を拭き,クモリはなくなりました。

 元のように組み直し確認をしてみましたが,クモリも軽減され,ゴミもなくなって綺麗な視野が開けてくれました。ファインダーが綺麗なのはいいですね。


(2)巻き上げレバーのクッション

 これは修理の終盤で対策したのですが,手元にあった1mm厚のウレタンテープを切って貼り付けました。もともと柔らかいゴム製の丸いポッチが取り付けられているのですが,これが劣化して破れてしまうのが持病として知られていて,そうなってしまうとレバーが上カバーを叩いて傷だらけにしてしまいます。

 張り付けたウレタンスポンジのテープは大変調子がよいです。


(3)1/2秒が出ていない

 そもそもレンズシャッターのシャッター速度って,どのくらい正確で,調整はどの程度出来る物なのか,分解も調整もやったことがない私にはさっぱりわからなかったのです。

 本来,レンズシャッターは丸い鏡筒に収まるように調速機構も仕込むのですが,Rollei35の場合専用設計になっていることから,調速機構などは本体側に搭載されています。

 フォーカルプレーンシャッターと違って,幕速とスリットの幅でシャッター速度が決まる世界と違いますから,複雑な調速機構をあちこちいじって調整するんだろうなと思っていました。

 とはいえ,すでに調整済みで出荷されているわけですので,そんなに狂ってしまうわけではなく,古いオイルを抜いて新しいオイルをさしてやれば,それなりの速度が出るだろうと思っていたのです。

 1/2秒であるはずなのに,1秒くらい開いているこの個体は,このままでは使い物にはなりません。ということでサービスマニュアルをしっかり読み込んで,調整をします。

 サービスマニュアルによると,スローガバナーの脱進機のシャフトがぶつかるタブを適当に曲げて,脱進機の速度を調整することで1/2秒を調整出来るとあります。

 うーん,こんな方法でいいかいなと思って半信半疑で試しましたが,なるほどちょっと曲げるだけで大きく変化するのがわかります。

 F3の1/2秒と同じタイミングでシャッターが閉じるように,このタブを少しずつ曲げておよそ0.5秒になるようにしておきました。後日ですが,シャッター速度の測定を行ったところ548msと出てきましたので,まあそれなりにシャッター速度が出ていると言うことでしょう。
 
 Rollei35が,その後の廉価版シリーズと大きく異なるのが,このスローシャッターの搭載の有無です。わざわざ高価なRollei35を買ったのは,スローシャッターを使いたかったからですし,ここはきちんとしておきたいです。;


(4)露出計の指針の連動

 これは購入前に気付くべきでした。家に持って帰ってから気が付いた大問題です。

 Rollei35の露出計の指針は,機械的な仕組みによってシャッタースピードと絞り値とISO感度に連動しますが,この連動機構が動かないようです。

 分解して見ると,露出計の指針を動かす機構が曲がって動かなくなっています。分解しないとこういうことは起きないと思いますので,素人が分解してそのままにしてあったんじゃないかと思います。

 ここに限らず,もう2箇所ほど,大きな力がかかって曲がったレバーがありました。きっとかなり無謀ないじられ方をしたんでしょう。

 問題の場所は指でちょいちょいと逆方向に曲げることで,無事に連動して動くようになりました。


(5)露出計の狂い

 生きていれば狂っていることは問題ないと割り切っていましたし,電池を水銀電池ではなく酸化銀電池にすると決めた以上,電池電圧に依存するRollei35の露出計の仕組みから考えて,露出計は再調整が必要だと思ってはいました。そう,水銀電池は1.35Vでほぼ一定,酸化銀電池は1.55Vでほぼ一定だからです。

 ここで,LR44などのアルカリ電池を使うと,1.6Vから1.2Vくらいまで電圧が緩やかに変化しますので,どの電圧で調整するべきか悩む結果になります。

 なので,現在手に入る電池として定電圧特性に優れている酸化銀電池を使うしかありません。

 私がオマケで付けてもらったアダプターは,関東カメラサービスのものと思われるのですが,電圧調整機構がないものです。ただ,この電圧調整機構というのもちょっと眉唾で,一定電圧に安定化してくれる物ではなく,抵抗かダイオードの順方向電圧のドロップ分で電圧を下げているだけのもののようです。

 安定性は電池の特性に頼っているので,水銀電池にはやっぱりかないません。

 で,酸化銀電池と水銀電池の電圧差は公称値で0.2Vです。この0.2Vというのはなかなか難しいもので,うまく作る方法を思いつきません。ダイオードの順方向電圧は,実は流す電流に大きく依存し,その変化率はリニアではありません。

 それに,シリコンで0.6V,ショットキーで0.3Vから0.4Vですので,0.2Vを作る事はできませんし,0.2Vのゲルマニウムダイオードを使っても,温度によっても大きく変化するので,結構怪しいのです。

 それくらいなら,1.55Vで露出計をあわせ込んだ方がよほど合理的なはずで,この方向で調整を進める事にします。

 まず,露出計を守る上カバーのカバーガラス(といってもプラスチック)に大きなクモリがあって,このままでは使えそうにありません。そこでこれを外す(といいますか外れなかったのでドリルで抜いた)ことにしました。そして,透明な0.2mmのプラ板を張り付けておきます。

 上カバーはCdSへの光の入射角を決めているフードの役割も担っているので,おかげでカバーを外すと3段ほど明るい表示になってしまいます。しかしカバーを外さないと調整用の半固定抵抗を触れませんので,専用のジグが必要になりそうです。

 実はこういう無理がRollei35には散見され。私はもうちょっと設計を練って欲しかったと思うのですが,世の東西を問わずこのカメラの設計者には合理的な設計だと賞賛がやみません。私はこういう細かいところで失敗があることを知っているので,ことさら設計者を持ち上げることはしません。

 とりあえず上カバーを外してCdSにシールを貼り付け,おおよそカバーありの時と同じような値になるようにしておきます。ここで,7EVと13EVでの調整を2つの半固定抵抗で繰り返し行い,なんとなくあわせ込んでいきます。

 そもそも外光式ですし,ラチチュードの広いネガで使う露出計ですので,精密な調整には意味はありません。子孫であるGossenのDigiSixを反射式露出計にして,似たような値になるようにすればOKとしました。

 幸いなことに,高輝度側も低輝度側も,ほぼ揃いました。仕組みも特性も異なるF3と比べても,ほぼズレていません。いい感じです。


(6)ピントリングのグリス抜け

 距離計がなく目測でピントをあわせるカメラとはいえ,やはりピントリングの回転のしっとりとした感触はこの時代の高級カメラの証です。抜けてカスカスになっている感触はよくありません。

 そこで分解しグリスアップをするのですが,このレンズの分解に随分手間取りました。みんな簡単にやっているようなので,なんで出来ないかと焦りもあって,ますます分解出来ません。

 わからなかったのは,飾り環をどうやって外すのかです。

 通常,飾り環はレンズ名やスペックが刻印されていて,ゴムで回転させて外します。その下には3つ程度のビスが顔を出し,ここを外すことでレンズの分解が始められます。

 なのにこのTessarは,刻印のある部分をいくら回しても回ってくれません。ゴムがゆるゆると滑ってしまって回らないのですが,油がきれているのか,鏡筒が歪んでいるのかと必死で反時計回りにひねっているときに,突然ポリッという感触が・・・

 その後,無限遠で回転が止まらなくなりました。どうもストッパーを折ってしまったようです。あーーーー!

 ますます焦っている自分をなだめ,深呼吸をして先人達のWEBをもう一度読み直します。すると一部「細いドライバーで外すと」と書かれています。

 もしや,と思い,刻印のある部分ではなく,一番表にある輪っかの,0.5mm程の小さな穴にピンセットを突っ込んでみたら,なんとプカプカと浮くではありませんか。

 そのままこじると,ペリペリと接着剤が剥がれる音がして,見事にそのまま輪っかが外れました。もちろんその下には,3つのビスが顔を出しています。ふふふ,とうとう見つけた!

 何のことはない,飾り環はプラスチック製で,接着でした。外すには小さな切り欠きに細い針を差し込んで浮かせます。

 わかってしまえばなんてことはないのですが,その被害は甚大でした。

 うれしさのあまり考えもなく,反射的に3つのビスを外してしまいました。出てきたのは前群をピントリングに固定するネジを受けるバネについている,無限遠側のストッパーがくきっと曲がって折れている姿でした。

 あわてて前群を外し,この前群をくわえ込んでいるバネを取り外してストッパーを逆方向に曲げますが,当然ポロッとおれてしまいました。万事休す。

 この日はここで精神的にも体力的にも力尽きて寝てしまいました。

 翌朝,この部品の役割と修復方法を考えて見ました。

 このバネは前群の外周をくわえ込んでいますが,同時にピントリングとネジ留めされます。ネジを締めると前群の外周に掘られた溝に密着し,固定される仕組みです。これで無限遠を出して固定するのですね。

 ということは,私は前群をあわてて外したので,無限遠の位置がわかりません。

 あちゃー,やってしまいました。

 無限遠の位置で固定するストッパーを修復すること,そして無限遠を出すという,とても難しい問題を2つも抱えてしまったのです。

 まず,ストッパーの修復です。

 いちばんいいのは,バネごと交換です。しかし交換するバネをもっていないので却下。

 では自分で作る,しかし,この複雑な形状を,最適なバネ圧で作るだけのスキルも工具も材料ももっていません。却下。

 代用の部品を探すというのも考えましたが,全く思い当たらずあきらめました。

 万策尽きたように改めてバネを観察すると,幸いなことに真鍮にメッキであることがわかりました。真鍮ならまだ手はあります。ハンダ付けです。

 ストッパーのような応力のかかる部品を小さい面積でハンダ付けしても,すぐにとれてしまうでしょう。そこで,別の銅板を切ってあてがい,ハンダを盛って固定します。特に力がかかる反対側には,ハンダを多めに盛って強化します。

 最後に他の部品と干渉しないように削って,完成です。

 試してみると,それなりに強度もあり,他の部品との干渉もなく,実にいい感じです。ハンダ付けも綺麗に仕上がっており,削ってでてきた断面をみると,きっちり接合しているのがわかります。

 よし,とりあえずこれでいこう。

 最悪,部品取りにジャンクのRollei35を探すかと思っていましたが,そこまではとりあえずしないで済みそうです。

 次に無限遠ですが,目測式で精度を全く問われないわけですから,実際に無限遠を見てピントを合わせるという方法でも構わないくらいです。しかし,なんとなく気持ち悪いですし,近距離での誤差が大きくなるこの方法では,目測でも失敗するほどズレるかも知れません。

 そこで,面倒がらずに,もう1台のカメラを使ったオートコリメータを組み立てて,無限遠を出します。

 10年ほど前に同じ方法で無限遠を出しているので恐るるに足らず,なのですが,この時使った300mmF4の無限遠がきちんと出ている望遠レンズは知り合いにあげてしまって手元にありません。

 調整したいレンズの焦点距離に対し,最低でも2倍の焦点距離が欲しいと言われるので,100mmくらいのレンズがあればいいのですが,手持ちのレンズはどれも無限遠が出ている保証はありません。

 唯一昔1度だけ確認したSMCTakumar135mmF4を引っ張り出し,ピント精度が出ていると思われるSuperAにアダプターを介して取り付けて,これでシステムを組み上げていきます。

 プラ板をサンドペーパーで擦ってすりガラスのようにして鉛筆でマーキング,これをRollei35に張り付けて,そのレンズを三脚に取り付けたSuperAで覗き込みます。

 SuperAのレンズを無限遠にすれば,平行光に対してくっきりとした像を結ぶはずなので,Rollei35のレンズを回転させて,鉛筆のマーキングがくっきり見えたところがすなわち無限遠の位置となります。

 ですが,SuperAとこのレンズ,絶望的に暗いし見にくいです。しかもRollei35の調整が難しく,どうも正確に合わせ込めません。

 そこで方針変更,F3にAiNikkor105mmF2.5に交換です。これで随分見やすくなりました。裏側からライトで照らしてさらにピントの山をつかめるようにして,代替このくらいかなと思う所で固定できました。試写しないとなんども言えませんが,無限遠もほぼ出ているだろうし,近距離でも目測で外してしまうほどズレていないと思います。


 とまあ,いろいろあったのですが,あとは通常の洗浄と注油でかなり動きも軽くなりますし,正確に組み立てれば完成のはず,なのですが・・・

 続きは後日。すんなりいかないものです。

 

Rollei35を買ってしまった

 先日渋谷で行われた,世界の中古カメラフェアをのぞいてきました。

 実はこの日,F2の動作確認のためを含む,合計7本のネガフィルムを現像に出すために,当日で仕上げてくれるキタムラに行くことにしていました。

 混雑具合にもよるけど,と前置きをした上で,1時間ほどで出来るということだったのでお願いすることにしたのですが,問題は待ち時間に何をしていようかという事でした。

 するとまあうまい具合に,東急百貨店で「世界の中古カメラフェア」の初日でした。渋谷の街中をウロウロをするのも気が重い人嫌いの私ではありますが,こういう場合は背に腹は代えられません。

 特に,東急百貨店が閉店する関係で,この場所で毎年行われて来たこの催し物も,今回で最後になります。8階の催し物スペースは,まだ小学校に上がる前の娘と一緒に古本を見に来たことでも思い出深いところで,今回で見納めになるということも背中を押してくれました。

 先に現像のことを書いておくと,何ら問題なく1時間ちょっとで仕上げてくれました。助かりますね。

 F2の撮影結果は,インデックスプリントとネガの状態を見る限り,良好でした。露出計(特にフォトミックA)はよく出来ていて,ほとんど外していないようです。

 切れが悪くて不安だった1/2000秒も実用上問題はなさそうで,特にAi45mmF2.8Pの写りの良さが印象的でした。ただ,コマ間隔にちょっとバラツキが出ているようで,これが私の個体の問題点という事になるでしょうか。重なったり大きくあいたりということはないので,気にしなければよいのですが,そこはFヒトケタですので,綺麗に揃っていてほしいのです。

 さて本題。

 世界の中古カメラフェアをただブラブラするのものバカらしい(そりゃそうです,十分に年寄りになった私より,さらに一回りお歳を召した方々と,主に中国あたりから来られた大きな荷物を引き摺ったバイヤーの方々のるつぼに,一見さんが目的もなくフラフラするなんて馬鹿らしいにも程があります)ので,ちょっと無理にでも目的をでっち上げます。

(1)M-Rokkor
(2)MD-Rokkor およびMC-ROkkor
(3)Rollei35

 (1)はCLE用のレンズで,私の中では別格のCLEについているレンズがコシナのものばかりというのは,いささか不憫に思われたからです。今の金銭感覚ならM-Rokkorもいける!とふんで探してみたのですが,今ってもう数が減っていしまっているんですね。

 特に28mmについては写りがいいこと,Mマウントレンズとしてはそれでも安価なことで根強い人気がある上に,最近は数がめっきり減ってしまっているようです。残念な事に修理出来ないクモリが持病としてあり,良品はもうほとんどお目にかかれません。

 しかしそこは稀少品も出てくるこのフェアです。とても程度のいい28mmが出ていました。とても高価だったので完全にスルーしましたが・・・

 90mmは数もあるし人気もいまいちなので安価なのですが,いくら安くても90mmを使う事を想像出来ず,これもパス。

 (2)はミノルタの旧レンズなのですが,とても青が綺麗に出るレンズです。私は28mm,50mm,135mmと定番のラインナップを持っているので困っているわけではないのですが,28mmはF3.5ですからF2.8が欲しいなあと思っていました。

 ですが,ミノルタの旧レンズと言っても,すでにアルファ用のレンズが旧レンズ扱いで,MD-Rokkorなんて珍品扱いです。ミノルタの旧ロゴなんど,数えるほどしかお目にかかれませんでした。

 で最後の(3)です。

 昔から気になっていたのが,この名機Rollei35シリーズです。後に日本のお家芸となる世界最小を1960年代後半に成し遂げたのが西ドイツの名門Rolleiです。

 あちこちでうんちくを目にしますので説明は省略しますが,このカメラの登場でハーフサイズカメラのブームにピリオドが打たれたと言われるくらい,衝撃的なカメラだったようです。

 とはいえ,レンズもシャッターも露出計もドイツの一級品の供給をうけた高級コンパクトカメラですので,大変高価でした。その分その精密感は圧倒的で,50年の月日が流れた今も高い人気を誇っています。

 長期間にわたってシリーズ化されて販売された物としても知られていて,その分多くのバリエーションがあります。

 私はやっぱりあのシルエットにクラクラしていて,古くさいんだかそうでないんだかわからない年齢不詳のデザインに,テッサーとスローシャッターを装備した機械式カメラというという立ち位置が独特すぎて,欲しいけど縁遠い存在として認知していました。

 生産時期が長いという事は,コレクターズアイテムのビンテージものから,実用バリバリの安価な最近のものまで,よりどりみどりだと思っていたのですが,案外そうでもないらしく,調べてみると精密感があるのは初期のものくらいで,年を経るごとに低コスト化が図られて,どんどん軽く安っぽくなっていました。

 でもまあ,私はこのシルエットが欲しいわけで,変なこだわりがないのがいいんだと思って,会場をぐるっと回ってみます。

 目に付いたのは,無印の35です。相場は4万円前後。35Sだと程度の良いものは6万円から7万円という所でしょうか。

 現実にはこのくらいから選ぶ事になりそうだなあ,でも4万円ならここで買う必要はないよなあと思って歩いていると,後期の廉価版シリーズが目に入ってきます。そう,ダイアルがレンズの横に並んでいないやつです。

 35LEDという機種が21000円ほどでしたので,思い切って声をかけます。

 一通り機能が生きていることを確認しながら,お店の人と話をします。なにせ付け焼き刃で少しだけ勉強してきたRollei35の知識ですから,素直にわからないと言って教えを請います。

 普通に使うならこの35LEDで問題ないというのは事実だと思いますが,スローシャッターがないこと,レンズがトリプレットになっていることで,かなり購入意欲が落ちています。

 そしてついでに出してくれた無印35を手に取ったのが決定的でした。重さが全然違います。巻き上げの感触が全然違います。

 これはもう完全に別物です。2万円の価格差は,むしろ小さすぎると思わせるほどの違いでした。

 謝った上で35LEDを買うことは取りやめ,やはり無印35にしないとだめだと会場をもう一回りします。うーん,4万円がギリギリとして,でも4万円だとぶつけた跡があったりストラップがなかったり,なにかと妥協を強いられます。妥協するならもうちょっと安くないとなあ。

 お,35000円で無印35があります。特にぶつけた跡もなく,動作していればお買い得かも知れません。(中古カメラにおいては損をすることはしょっちゅうあっても,お買い得ってのはありません)

 思い切って声をかけ,見せてもらいます。大阪から来ているお店だそうで,心地よい大阪弁が私の心を開いていきます。

 正直によくわからないと話をすると,使い方や個体の問題点を教えてくれます。一番の問題は,ファインダーのクモリだそうです。

 確かに曇っています。でも,距離計連動でもなんでもないファインダーですので,別に私は気にしません。

 スローシャッターも狂ってはいますが動作しているし,露出計の針も動いています。かなり使い込んだ感じがありますが,レンズも綺麗ですし,すぐに撮影に使えるかも知れません。

 レンズキャップがなかったので尋ねると,向かいの別のお店から分けてもらってきてくれて,オマケしてくれました。私の相手をしてくれたのはこのお店の社長さんなのだそうですが,現金での値引きかキャップのオマケかという話になり,手に入るかどうかわからないキャップをお願いしたのでした。

 さらに電池のアダプタもオマケしてくれるということで,すでに買う気になっていた私は,結構気をよくして支払いを済ませ,会場を後にしたのです。

 自宅に帰ってから確認したのですが,やっぱ価格相応,あるいは価格以下かもなあと思って,舞い上がった自分にしょんぼりしました。

 ファインダーのクモリは,かなり気になるレベルです。明るいところではそうでもないでしょうが,暗い所ではもやーっとしていて,すっきりしません。

 それ以上に問題なのは,露出計です。なるほど針は動きます。しかし,指針が全く動かないのです。そういうものなのかなあと思っていたのですが,本来シャッタースピードや絞り,感度に連動しないと露出計は意味がないので,そういう仕組みがないというのはおかしいです。

 調べてみると,やはりツマミが機械連動で指針を動かす仕組みになっているそうで,私の個体はこの段階で故障していたことになります。

 お店の人は,責任持って修理するので任せて欲しい,と言い切っていましたが,それにしてはそんなに高いものではないし,なんやかんやで渋られるだろうとも思いましたので,とりあえず自分でなんとかすることを考えます。

 スローシャッターについても問題がありました。1/2秒は1秒くらいの長さですし,1/4秒や1/8秒は区別が付かないくらいです。これも残念でした。

 あと,ARレバー(撮影終了後にパトローネに巻き戻すときに,スプロケットが逆回転しないようにしてあるロックを外すレバーです)がききません。Rの位置にしてもスプロケットは逆回転しないです。これもいきなりフィルムを入れたら大失敗しただろう故障です。

 あちこちに分解痕もありますし,素人の手が入っているような気もしますが,中途半端な良品を4万円で買うのが良いか,どうせ手を入れるんだから多少の問題は安くなる分かえってラッキーと思うか,微妙な所です。

 前者なら問題があったらがっかりするだろうし,後者にしては35000円ですから,あまり安くなっていません。やっぱり,あまりよい買い物とは言えなかったような気がしてきました。

 せっかく涼しくなってきましたし,世界中にファンがいるRollei35ですから,じっくりオーバーホールを行って,楽しく撮影をしたいと思います。

 

F2フォトミックA完調

 フォトミックAファインダーの修理をなんとなくでっち上げ,実用レベルで使い物になりそうだからこれにて終了と,なんだか後味の悪い形だったAi対応のF2ですが,γが0.5と低いCdSを安価に入手できたこともあり,もう一度きちんとした修理を試みることにしました。

 私が行った修理というのは,2つあるうち1つが劣化したCdSをもう1つのCdSに似た特性の動作品に交換して調整を追い込むという物でした。

 で,今回はフォトミックAファインダーだけではなく,きちんと動作してることがはっきりしているフォトミックファインダーのCdSも,特性を測定してみることにしました。

 とはいえ,明るさのはっきりしている光源はないので,真っ暗と普段の部屋の手元の明るさと,デスクライトから10cmほど離したところの抵抗値を記録するだけです。

 細かい数値は意味がないので省略しますが,わかったことは,フォトミックファインダーとフォトミックAファインダーというCdSを使ったニコンのファインダーは,左右で特性が全く異なるCdSを使って,この1つを並列に接続しているという事です。

 特性は,同じ明るさで抵抗値が違うことは当然ですが,γも異なるので,とにかくもう別物です。

 非常に単純に考えると,γが異なるCdSを並列に繋いだ場合,低輝度側ではγが小さい方が支配的に,高輝度側ではγが大きい方が支配的になりますので,どちらか1つを使うよりも広い測光範囲を得られる事になります。

 そういう意図があるという文献を見たこともないし,世界中の修理を嗜む識者の意見も聞いたことがありませんが,とにかく事実はそうです。

 測定ミスかもしれないなと思ったりもしましたが,そもそも特性の違いに気が付いたのは,左右のCdSで見た目が異なることに気が付いたからです。

 CdSの受講面には,硫化カドミウムがウネウネと引いてあります。曲がりくねっているのは長さを稼ぐためですが,このウネウネとした長さが左右で違っているのです。

 もちろん,長さの違いが直ちに特性の違いにはなりませんが,同一メーカーの同一品種で,しかも同一ロットであれば,ほぼ間違いなく同じ長さであるべきでしょう。それが異なるというのですから,特性が違うと考えるのが自然です。

 で,実際に測定してフォトミックファインダーのものと比較してみると,先日のフォトミックAファインダーの劣化したCdSは,γが大きいものでした。γが小さい物は劣化しておらず,初期性能を保っているようです。

 とはいえ,その左右の違いはそんなに大きな物ではなく,せいぜいγが0.65程度の物だと思います。手持ちのCdSの多くはγが0.85であり,これは本当に急激に値が変化し,暗部では10MΩを越えてしまうこともあります。

 フォトミックAファインダーの劣化したCdSと交換した手持ちのCdSは,たった1つだけ見つかったγの小さい物だったのですが,これは本来,もう1つのCdSと特性が似ているからという理由で起用したものです。

 しかし,フォトミックファインダーの劣化していないCdSと比較すると,ウソのように特性が一致します。もう同一と言っていいくらいです。

 フォトミックファインダーが調整を追い込んでほぼ満足な動作をしていることを考えると,フォトミックAファインダーでも劣化していないCdSと今回のCdSの組み合わせでちゃんと追い込む事ができるはずで,特に低輝度と高輝度の補正用半固定抵抗の位置は,そんなにクリティカルに変化する物でないことを考慮すると,似たような位置にしておくだけで問題ないのではないでしょうか。

 とまあ,その前に,200kΩのソリッド抵抗を交換しておきます。もともと230kΩくらいの実測値で,10%の許容誤差を越えてしまっていますからね。

 と,基板から外すときに,この抵抗を壊してしまいました。というか,ポロッと端子がもげてしまいました。劣化が激しいです。

 まあ,ソリッド抵抗は見つけ次第交換せよと,昔の人達もいっているくらい,経年変化が大きく,信頼性も低いです。交換しておいて良かったです。

 そのせいもあるのでしょうが,組み上げてからの調整が,なんとまあ楽ちんなこと。低輝度高輝度の補正はフォトミックファインダーと同じ位置に合わせておくだけでOK。

 その上で,露出計の調整はF3でグレイカードを測定し,その結果であわせ込むだけで,低輝度から高輝度,開放F値の異なるレンズでも,いつもズレのない値を示します。こんなに簡単に調整が出来てしまっていいのだろうかと不安に思うほどです。

 そして試し撮りです。とにかくレンズをとっかえひっかえ,テンポ良く撮影します。いや,楽しいです。巻き上げレバーにグリスを塗りすぎたせいで柔らかくなってなりすぎたことを除けば,感触も音もメカが動く実感もすべて,写真を撮るという行為にプラスの力を与えてくれます。

 AEで撮影することになれているので,ついつい露出を確認しないでシャッターを切りそうになりますが,被写体中央で露出をあわせておけば,構図を変えてもいちいち補正をしなくて済むテンポの良さはとても楽しく,軽快です。

 露出計は全く問題なく動作しています。Aiニッコールとの連動もズムーズで,1972年に製造された私のF2は,クラシックなカメラと言うより現役バリバリの実用機と言っても違和感がありません。

 F2はよいカメラです。F3もよいですが,実際に使ってみるとF2の方が手に馴染みます。F3の発売当時にF2とF3で迷っていたら,F2を買っていただろうと思います。そして,それから30年たち,結局F3と買った方が賢かったと悔やむことも,きっとしただろうと思います。

 そんなわけで,一気に100枚ほど撮影してしまうという,とても贅沢な時間を過ごしました。あとは現像して確認が必要ですが,まあ多分大丈夫でしょう。

 気になっている巻き上げレバーの,ロック位置からの動きが柔らかすぎる問題は,そのうち上カバーを開くときにでも確認しようと思います。今は巻き上げが終わった位置から指を離すと,勢い余ってロック位置までレバーが動いてしまうほどなのですが,これだとやっぱり使いにくいです。

 で,足下には,フォトミックAファインダーがついてきた,肩の派手にへこんだF2が転がっています。これも一応練習がてらオーバーホールをしようと思っていますが,すでにセルフタイマーのネジを傷つけてしまい,モチベーションがだだ下がりになっているので,困ったものです。

 部品取りとしてこのままにしておくべきか,予備機として復帰させるか。大いに迷うところですが,苦手なマイナスネジと格闘すると考えただけで,二の足を踏んでしまいがちです。さて,どうしたものか・・・

 

 

MDR-M1STは次世代主力モニタの座につけるのか

  • 2019/09/06 13:08
  • カテゴリー:散財

 新しいヘッドホンを買いました。ソニーのスタジオモニターである,MDR-M1STです。

 先日出たばかりなのですが,(メディア関係者ばかりなのがきな臭いですが)大絶賛です。

 私は昔からスピーカーよりもヘッドホンで音楽を聴く習慣がある人なのですが,ながら聴きを含むリスニング用にはスタックスのSR-303を,なんらかの作業のための確認用にはT50RPmk3nを使っています。

 どちらも高解像度で周波数レンジも広く,位相の乱れがない優秀なヘッドホンで,音の傾向もよく似ています。違うのは音場の再現で,スタックスは目の前にぱーっと広がる空間的な音,T50RPmk3nは頭の中で鳴っている感じです。

 この,音の近さというのは思った以上に重要な事で,ある音に注目して作業をするのに空間的である事はより神経を研ぎ澄ます必要がありますし,リラックスして音楽を全体として愉しみたいのに,音が近いというのは疲れてしまうものです。

 用途で分けることはこのように必須とも言えますが,大事な事は違いがあって欲しいところと同じであって欲しところがあるということです。高音や低音の出方の傾向は同じであって欲しくて,ヘッドホンを交換したときに「あれっ」という違和感が一発入ることは,私はどうしても避けたいと思っています。

 位相が揃っていることはヘッドホンにとどまらずオーディオ機器に最低限必要な性能だと思いますから,やっぱり音の近さが一番大きい差だと思います。

 で,T50RPmk3nとぶつかるMDR-M1STを何故買ったかといえば,いわゆる業界標準(になるであろう)モニタを1つ手に入れておきたいということと,同じ理由で必要性を感じつつもどうしても気に入らず使う事がなかったMDR-CD900STへのリベンジです。

 業界標準のモニタを手に入れて,それで評価することは,非常に客観的な結果を生み出すための第一歩になります。自分の気に入ったヘッドホンで調整をしても,その結果を「よい」と思ってくれる人は限られます。

 かといって大多数が使っているヘッドホンなどわかりません。

 そこで,プロがモニタに使っているヘッドホンを使うわけです。これで調整を行って破綻がなければ,とりあえず「いいわけ」が出来ますよね。

 いいわけ,とはまた刺激的な言葉ですが,逆の言い方をすると自分の作ったオーディオ機器や音が業界標準のモニタで作られていないと,その段階でほとんど信用されないというのが現実です。

 もちろん,最終的には好みの問題なのでどうでもいいといえばそうなのですが,そのモニタが業界標準になっているには相応の理由もあるわけで,そこである程度追い込めたら,私にも自信が付くというものです。

 そういう理由で,宅録をする人やオーディオ機器の自作をする人の間では,好き嫌いとは別の軸で,MDR-CD900STを使う人が多いです。

 私もそう考えたのですが,一度MDR-CD900STを使ってみる機会があったときに,30秒で「これかあかん」と投げ出してしまったのです。

 耳殻を押さえつけるイヤーパッドは長時間の使用に耐えられず,典型的なかまぼこ形の周波数特性は,特に高域のつまり具合に我慢なりませんでした。

 それまで聞こえていた音が聞こえなくなったこともそうですし,私がお金がなかったころに辛抱して使っていたヘッドホンとそっくりな音だったことが,つまらない過去を想起させたからかも知れません。

 着け心地も悪く,頭にかぶると言うより頭を挟むという感覚は,非常に窮屈でした。

 私は自分の耳はもう腐っていると思っているので,音質云々を評論する資格はないと思っているのですが,それでも音の違いは区別出来る場合はそれを信じて判断しています。そしてその判断は概ね最初の10秒で決着し,逆に30秒以上聞くとわからなくなってしまいます。

 慣れてしまうんですね,スピーカーもヘッドホンも。脳が補正をかけてしまうからだと思うのですが,これを肯定するともうどんなヘッドホンでもええやんけ,となってしまいますし,補正も少ない方が疲れないと思いますから,最初に感じる違和感が少ない方が良いという判断は妥当だと思っています。さらにいうと,普段から良いものに慣れておく方がよいですよね。

 ということで,慣れという観点でスタックスとT50RPmk3nはベストなタッグだと思っているのですが,もしかするとMDR-M1STは,ここに割って入ることが出来るかもしれないという期待があったのです。

 レビューを見ていると,MDR-CD900STとは別物で違う音だとか,もっと高域が出ているとか,音が近いとか書かれています。着け心地もよいそうです。

 なら,今ひとつ着け心地がよくないT50RPmk3nを置き換えることが出来るかも知れません。置き換えることができると,自分の作品にお墨付きも得やすいですし。

 こういう長ったらしい理由で,MDR-M1STを買ってみました。

 まず最初に注意点。理由は今ひとつわからんのですが,ソニーとしてはプロ用のモデルなので通常の1年保証はしません,ということです。壊れたらどんな場合も有償ですということなのですが,これは壊れやすいという意味なのか,プロはよく壊すという意味なのか,どうも釈然としません。

 どっちにしても,無償修理期間がないことと修理費用が安くなっていることとはペアだと思う訳ですが,その事もアナウンスされていません。おそらく修理費用が安いということがないからでしょう。

 本体価格も安いとは思えず,MDR-CD900STよりも随分高価です。壊れたら買い換え,あるいは消耗品として定期的に交換,という発想で使うにも,結構厳しいかも知れません。

 まあ,単純に商流の問題でしょうけど。

 もう1つ,ケーブルが6.5mmの標準プラグしか付いてきません。一般的な3.5mmはそのままでは使えません。

 ケーブルの断線にもさっと対応出来るように,Lチャネルの片出しでケーブルを着脱できます。ケーブルはLとRがそのままで出ている4極のプラグを持っていて,バランスにも対応するのは結構なことです。

 3.5mmのジャックに繋ぎたい(DR-100mk3です)私は,6.5mmを3.5mmに変換すると邪魔になることを知っているので,ケーブルを交換したいと思っていましたが,こういうのって結構高価なので困ります。

 なにかいい方法はないかと探してみると,3.5mmの3極のプラグが両側についたケーブルがそのまま使える事に気が付いて,以後これで使っています。


 さて,装着感からみてみます。

 T50RPmk3nは重い上に剛性が低く,グニャグニャです。これを強く挟む込むことで固定し,強い側圧を軽減するために大きなイヤーパッドを使っています。アメリカンですね。

 MDR-M1STは精密機械のような出来で,剛性感もそこそこありますがなにより精度が高く,かっちりとしています。軽いですし,これだと側圧が強くなくてもちゃんと装着出来ます。

 イヤーパッドも近年のソニーのヘッドホンのように着け心地にこだわっていて,とてもよいです。ただ,ちょっと小さいので耳殻にあたってしまうことは避けられず,長時間の仕様で痛くなりました。

 このあたりはさすがソニーです。

 続けて音です。

 がっかりしたのはここからで,やっぱりかまぼこ形でした。明らかにMDR-CD900STの延長線上にある音で,MDR-CD900STに慣れた人には全く問題ない音に聞こえるでしょう。

 いくらMDR-CD900STとは別の機種だの併売するだのといっても,そこはやっぱり同じ方向です。うがった見方をすれば,MDR-CD900STを否定しきれなかったということかも知れません。

 ただ,さすがだなと感心したのは,MDR-CD900STの傾向でありながら,実に自然に高音が伸びていて,解像度が劇的に上がっているということです。

 特に高音は,いやらしい付け足しではなく,ごく自然に聞こえてきます。不思議な感覚といいますか,これまで聞いたことがない音と言いますか,とにかくこれは見事だと思います。

 だから,MDR-CD900STとの互換性は高く,違和感なく移行できるのに,これまで聞こえなかった音が聞こえるようになるのではないでしょうか。

 これが狙いだといえば,してやったりなのでしょう。

 しかし私にはあまりにも違和感がありました。MDR-CD900STを気に入らない私が,その延長にあるこの音を受け入れるはずがありません。

 それは私の好みとして置いておくとして,やはりドライバが40mmと今どきのヘッドホンとしては大きいとは言えず,どうしても小さい穴から絞り出されて耳に届いている感じがしてなりません。加えてダイナミック型特有の暴れ(というか破綻)も気になります。

 これがスタックスやT50RPmk3nのような平面振動だと,耳と言うより頭の両側からまっすぐ平行に振動されるような感じで聞こえます。全帯域で伸びやかで,雑味がないのは,平面振動が理想的に起こっていて,チャンバー内の空気が等しく加圧されるからではないかと思います。

 

 直径40mmくらいの振動面では,扇を広げるように圧力が伝わっていくのだと思うのですが,この差は特に周波数によって聞こえ方が違ってくると言う形で,聴感上意外にに大きく影響しそうな感じがします。
 

 ということで,結論です。

 MDR-M1STは,MDR-CD900STを置き換えることが可能なように配慮されています。

 MDR-M1STは,MDR-CD900STよりも大幅に良くなっていて,きちんとハイレゾに対応しているばかりか,解像度も上がっています。

 MDR-M1STは,着け心地も大幅に良くなっていて,長時間の使用にも十分耐えることが出来そうです。

 しかし,MDR-CD900STが気に入らなかった人は,MDR-M1STも気に入らないと思います。

 私は,確認用のモニタとして使う事はやめませんが,これをうちのメインにはしません。

 しかしながら,世の中ではこういう音が,色づけのない素の音として認知されているんだなあと学ぶ良い機会になりました。なるほど。

 

F2がAI対応に

 先日,生きていれば格安,死んでいれば高価なゴミというF2を買ったわけですが,週末に時間が出来たので,様子を詳しく見てみました。

 まず手始めにボディからです。シリアルから1972年ごろの製造で,マイナスネジが使われる初期型です。確かに低速のシャッター速度もきちんと出ているようですし,ぱっとみてわかるようなおかしな所はないようです。

 しかし,裏蓋を開け閉めしている時に,裏蓋がやや斜めになって閉じることに気が付きました。可能性は2つ,フタがゆがんでいるか,ボディがゆがんでいるか,です。

 右肩の大きな打撃痕があるのですが,これだけのへこみを作るんですから,かなり強くぶつけた(あるいは落下させた)のでしょう。外側だけで済むはずもなく,おそらくボディが歪んでしまっているんじゃないかと思います。

 ボディが歪んでいると,フィルムに平面が出ません。フォーカスが周辺でズレるとか,どこかから光が漏れるとか,そういうトラブルが発生します。そうした致命的な問題を出すボディの歪みは,修正する方法がありません。

 よって完全なゴミになってしまうのですが,このF2はおそらくボディが歪んでしまっていると思います。価格のうち,ボディは0円になりました。

 次は,お目当てのフォトミックAファインダーです。

 とりあえず明暗に反応してメーターが動きますし,AI連動レバーを回してもスムーズにメーターが動きます。致命的な故障は起きていないと思っていました。

 一安心してメカを分解,注油してスムーズに動作するようにしましたが,続けて調整を行ったところ,レンズを交換すると調整が大きく狂うことに気が付きました。

 詳しく調べてみると,明るい場所と暗い場所で全然値が違ってきます。

 これは電気系に問題があるということです。まず200kΩのソリッド抵抗を確認しますが,ちょっと大きめ(220kΩ)ではありましたが,一応問題なしです。

 そうなるとCdSです。祈るような気持ちで左右のCdSを取り外してテスターで確認すると,やはり片側のCdSが死んでいました。真っ暗にしても抵抗値が上がり切りません。

 困りました。

 まさかCdSの不良だったとは。これでこのファインダーも0円になりました。つまり,今回の買い物は全くのゴミに高価なお金を払ったことになりました。やっぱり中古カメラ専門店はよく分かってますね。

 カメラ用のCdSは,リニアリティのある測光範囲を広く取る必要があるので,γ(簡単に言うと100lux時の抵抗値と10lux時の抵抗値の比率)が小さい事が望ましく,市場で流通していたものとしては最も小さい0.5くらいの物を使うことが多かったようです。

 ところが,単なるON/OFFのスイッチとして使う場合にはγは大きい方が設計が楽で動作も確実であり,通常簡単に手に入るものは0.7とか0.8とか,使いやすい大きめの物ばかりだったりするのです。

 それにCdSはばらつきが大きく,20%程度のバラツキは普通にあります。出来れば選別して似たような物とペアにしたいところですが,そのためには数を買って実測してペアを組むしかありません。

 壊れたCdSを交換出来ればよいのですが,同じ物は手に入らないので,理想的にはペアを組み直して2つとも一気に交換するのがベストです。しかし,そもそもW他足は手持ちで使えそうなCdSを持ってはいません。以前,NikomatELを修理するのに,秋葉原で様々な種類のCdSを買ってきましたが,どれ一つ使えそうなものがなかったのでした。

 NikomatELと同時代のフォトミックファインダーですから,CdSも同様の特性である可能性が高いと思うのですが,つまり残っているCdSに使えそうな物はないということです。

 そうはいっても一応確かめてみます。生きているCdSは,真っ暗にすると500kΩ以上の値を示します。15Wの蛍光灯に15cmくらい近づけると1.5kΩくらいになります。

 これに近いものを探してみると,1つだけ見つかりました。しかも外形は6mmのメタルCANでガラス窓です。ただ,値は常に20%ほど大きめに出ます。しかしγは揃っているような感じです。

 これくらいならなんとかなるかもしれないと,早速交換してみます。

 一応,明るさに応じてメーターが適切に振れるようになってくれました。動作そのものは治ったようなのですが,問題は調整が可能かどうかという問題と,精度の問題です。

 試行錯誤をしたのですが,やはり完璧に調整することはかなわず,被写体の明暗によって,測光値に半段ほど差が出ています。これくらいの違いならまあ実用上は困らないので,とりあえず良いとします。

 いろいろな開放F値のレンズを試したり,いろいろな明るさの被写体で試したりと何度か繰り返していますが,全然ズレてしまって困るという問題は起きてはいません。

 というわけで,完璧とは言いがたいですが,とりあえず実用レベルに復帰したフォトミックAファインダーですが,実際に使ってみた感じでいうと,F2がクラシックカメラから現行機種になったような錯覚をしてしまいます。

 なんといっても,AI方式に連動するようになった事が大きいです。うちでいえば,AI45mmF2.8Pも,AIAF85mmF1.8Dも普通に使えます。試していませんが,AIAF300mmF4Sも使えるでしょう。

 ガチャガチャをしなくていいと言うのも地味に便利ですし,デザインも少し変わっていて,おでこの部分がやや狭くなっているので,バランスが良くなって見た目も格好いいです。

 ただ,ファインダー内に表示される絞りの値が見にくくて,F3に持ち帰るとその見やすさに驚きます。F3はやはりF2の改良型だったんだなあと思われる瞬間です。

 もちろん,現像して結果を見なければ使えるかどうかわかりませんが,完璧を求めなければ使えそうな感じですので,これで一旦修理を終わります。

 それにしても,いくらメーター不良と書いてあっても,CdSが死んでいるファインダーにおそらく歪んだボディを組み合わせて12000円というのは,もっとあこぎなカメラ屋さんでも付けない値付けじゃないですかね。

 いくらF2とはいえ,基本的に修理不能なジャンク品ですからね,逆説的な言い方をすれば,こういうお店でそれなりの保証のある高価なものを買えば,自分に見る眼がなくても失敗しないという事になるでしょう。

 さて,CdSをどうにか調達しないといけないですね。F2用として売られているものを探すのもいいですが,汎用の物から使えそうな物をストックしておき,他のカメラの修理にも使えるとよいと思うのですが,そもそもCdSのことを私はあまりよくわかっていません。

 実はCdSって,詳しい文献が少ないのです。RCAが開発したことになっていますが,登場は1960年代のようですし,1970年代中頃にはフォトトランジスタが使われるようになって,どちらかというと光センサとしては安かろう悪かろう的な扱いだったようです。

 ただ,人の目に近い感度特性を持っていたり,抵抗が変化する受動デバイスだったことで,詳しいことを知らなくてもそれなりに使える,手軽な光センサだったことは事実で,カドミウムが規制対象になる2000年頃までは,割と目にすることも多かったように思います。

 環境規制が理由だとすればこのまま絶滅するだろうと思っていたのですが,どういう訳だから未だに入手可能で,中国あたりで現在も生産されていると聞きます。保守用の部品として作られるにしては規模も大きいようなので,手軽で安いというのは,それなりに需要があるのかも知れません。

 

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