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ちょっとした編み物ブーム

 昨年のことですが,娘がお世話になっている学童で,編み物をするとアナウンスがありました。小学1年生の娘が,手編みのマフラーなど出来るはずもなく,少なくとも私はやらないものだと思っていました。

 しかし,本人はやる気です。友達もやると言ってるらしいです。学童の先生も「大丈夫です」と言い切ります。聞けば,機械を使うとのこと。

 機械?

 編み物の機械と言えば,編み機です。多数の編み針が並んだ上を,ハンドルの付いたキャリッジが左右に行き来する,あれです。

 確かに,左右に動かすだけなら子供でも出来るかも知れませんが,それでも機械編みは教室に通って習って初めて出来るものです。だから大人がほとんどやるんだろうと思っていました。

 始まってみると,その機械というのはなにやら手作りという話です。ますますわからなくなり,現場を見せてもらいました。

 すると,ペットボトルを半分に切り,割り箸を何本か立ててものを使い,これに毛糸を引っかけて,筒を編んでいます。リリアン編みというやつですね。

 娘は2日でポンポンまでついたマフラーを完成させて,上機嫌です。

 これに味をしめた娘は,正月番組のCMで見た「ラブあみ」なるおもちゃを欲しがりました。これ,編み機というより,機織り機です。

 確かに面白そうだと思った私は,度重なる我々両親のうっかりを埋め合わせる事もあり,早速リサーチを開始します。しかし複数ある商品セットごとの構成や価格の違いがわからず,また買い足すオプションで何が出来るようになるのか理解出来ず,この商品は却下しました。

 代わりに買ったのが,リリアン編みの本格的な道具である「ニットクイックルーム 帽子作成編み台」です。ペットボトルを使った自作品では,ペットボトルの太さの筒しか編めません。マフラーは出来るかも知れませんが,太いものが欲しい時,あるいは帽子はお手上げです。

 そこで4サイズの輪っかがセットになってるこれを使えば,すでに習得した技術で帽子を編めます。実はこれが本命でした。

 しかし,これだと「ラブあみ」と違うという指摘に抗しきれません。そこで用意したのが,上位機種と考えて良い「モコもじオリーナ」です。

 縦糸と横糸のある機織り機ですが,パンチカードによる文字や図形を織り込む事が出来る優れものです。パンチカードってのが痺れますよね。

 で,これを探しているときに,偶然見つけたのが「あむかわアミーナ」です。

 そう,これこそ,あの機械編みを行う編み機を,子供向けにアレンジしたものです。

 私の母親も,他例に漏れずまるでギターかキーボードかと思うような大きな編み機を担いで教室に通い,機械編みをマスターしていました。大きく重くかさばり,機械で編める部分は速いけど,それ以外の部分は手作業になり,トータルではそんなに楽できないという根本的なことに気が付いて,母親も熱が冷めてしまい,引っ越しの際に編み機は処分されたことを覚えています。

 なら,なにが編み機の魅力だったのかと思えば,やはり既製品と同じような風合いが手作りで得られる事にあったのでしょう。手編みが尊ばれ,その風合いこそ正義とされる現代においてはにわかに信じがたい面もありますが,当時は既製品が高価で,手作りの理由が「安い」ことだったことで手作りが既製品よりも低く見られる風潮もあって,自作派は一歩でも工業生産品のクオリティに近づこうと頑張っていたのです。

 だから,「レストランの味をご家庭でも」という触れ込みで編み機が入り込むことも,まあわからなくはなく,しかし次第に変化する価値観の中で,すっかり忘れられた存在になっていました。

 と思っているのは私くらいのもので,確かに編み機は30年ほど前に最終製品が出てから消えてしまいましたが,今でもマニアはメンテをしながら使い続けているそうですし,最終品はフロッピーディスクで図案を流し込めるようになっているらしく,これをハックしてUSBでPCに繋げるようにする改造が海外で報告されるや,任意の画像を毛糸を編んで描画できる「プリンタ」として,maker達の間でブレイクしているらしいのです。

 本当かどうか知りませんが,6本の色を切り替えて,キャリッジをモーターで動かす事の出来るようなバケモノのような編み機も存在したらしく,これは稼働するものが世界に数台というレアモノで,伝説となっているそうです。

 一方で,特に女の子向けのおもちゃとして,手作り道具をオモチャにした物の再販がここ数年で続いています。確かに私が子供の頃には,こうしたクラフト系のオモチャがたくさんあったように思うのですが,しばらく見ていませんでした。

 私たちが子供の頃は,親がやっていることを真似したくて,それで親の道具をオモチャにした物が人気を保っていたのだと思いますが,やがて大人が自作をせず,価格の下がった高品質の既製品を買うようになって,子供がこれらに憧れることがなくなったのでしょう。

 しかし,ここ最近,本質的にモノづくりが大好きな子供達の間でブームが到来し,織機や編み機が復活しているという話を聞きました。だから,「モコもじオリーナ」も「あむかわアミーナ」もここ数年で出た新製品ですが,我々と同じ世代の反応は「持っていたものと同じだ」「いやはやなつかしい」となってしまうわけです。

 まあ,こうしてブームは回っていくものです。私としては,知らずに育ってしまった世代と知って楽しんだ世代の違いが,なんだかんだで大人の都合だったりすることを理不尽だと思いつつ,我が子にこうした機会が訪れたことを素直に喜んで,買うことにしたのです。

 ところが,このうちあむかわアミーナについては,ちょっと様子がおかしいのです。元の値段が1万円超えなのに,特価で1500円です。いくらなんでも安すぎます。

 レビューを見ると,星1つの最低のものがならんでいます。読めば最悪だの子供が泣いているだの欠陥品だの金返せだの責任者出てこいだのと,もう散々です。

 確かに機械編みは難しく,道具も調整が必要なものですが,それらを簡略化した子供向けのオモチャが,話にならないほどの完成度というのは大手メーカーの製品としては信じがたいものがあります。

 しかし実際この価格ですし,調べてみるとクレームが殺到し販売中止になっていることから,まるっきりウソでもなさそうです。つまり,売る側と買う側の想定がズレていたということでしょう。(その原因は価格である事も忘れてはなりません)

 なら,過度な期待をしないで使いこなして見ようと意気込んで,自分用にあむかわアミーナを買ってしまいました。

 週末に少し時間が出来たので,家にあった毛糸を使って試してみました。

 ・・・全く編めません。

 なにより精度が出ておらず,キャリッジが引っかかり進みません。無理に動かすと針が曲がってしまいます。

 なんとか頑張ってみましたが,2時間格闘して8段が最高記録です。

 で,説明書をもう一度見てみると,7号の棒編みの毛糸は使えるが,アクリル100%はダメとあります。手元の毛糸のラベルを見ると,アクリル100%でした。

 ならばと付属の少し細い毛糸で試してみたら,サクサク編めます。いや,おもしろい。

 確かに説明書通りで,欠陥ではないんでしょうけど,本当ならアクリル100%でも編めるようにするべきなんでしょうし,買う側はそれを期待しますよね。

 機械編みとは言え,あむかわアミーナは針の数も少なく,目も粗いですから,糸は太くないと実用的なものを作る事ができないでしょう。

 良く出来ているなあと感心する反面,おそらく昔のまま再版されたこの商品は,十分な検証もされず,また現代のニーズや購入者のスキルを推し量ることが出来ずに,欠陥商品扱いを受けることになったんだろうと思います。

 機械編みは前述の通り,手動で操作する部分がかなりあります。特にセーターなどは袖の部分の太さを変えるところや袖のゴム編みなど,完成までに大変な手間がかかります。

 私はニットを作る趣味はなく,むしろ苦手ですのでこうしたものを完成させることに興味はありませんが,キャリッジを左右に動かす事でなぜ1本の糸が面になるのかをようやく知る事が出来て,それでもう満腹になっています。

 私が平編みや模様編みを綺麗に出来るようになったら,娘に払い下げる予定です。娘は実用品を作る事を目的にしているので,きっとあむかわアミーナも使いこなして。マフラー何かを作る事をするでしょう。

 父親としては,それがどこの馬の骨かもわからん奴のために作られることがないように,心から願っています。


 追伸:モコもじオリーナは娘も面白がって遊んでいます。パンチカードで模様が編めることもおもしろいらしく,寝食を忘れて編んでいるのですが,いかんせん最初と最後やミスをしたときのリカバーを自分で処理できず,結局母親の手を患わせてしまうので,買い与えた私は不評を囲っています。

 しかし,娘は自分の祖母に名前入りのマフラーをプレゼントしたいらしく,一生懸命です。けなげだと思う一方で,自分の作ったもので他の人が喜ぶことの楽しさを味わってくれて,私はよかったと思っています。

 

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