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日本にはJICOがある

  • 2019/04/16 14:04
  • カテゴリー:散財

 前回,イコライザアンプの大改修について書きました。直接のきっかけはDL-103で録音をしようと思ったからなのですが,根本的なところで,私がまたアナログレコードを聴いて楽しいと思った理由が,V15typeIVを手に入れたことにありました。

 何でも書いているように,これは針なしのものを偶然落札できたものだったのですが,壊れている可能性も考えるといきなり高価な針を買うのも恐ろしく,互換性のあるとされるtypeIIIの安い針で動作の確認をしたところ,思いのほかいい音がしたという話でした。

 いい音がするとは言え,ささやかな経験から,カートリッジの音は針で決まると思っている私は,見るからに太く野暮ったいカンチレバーにごつい接合針が付いているこの安物互換針ではV15typeIVの本当の音は出てくるべくもなく,純正針の入手が次のテーマになってしまいました。

 とはいえ,純正針はもう入手が出来ません。中古品を探す方法もありますが,消耗品を中古で買うというのは難易度が極めて高いですし,それにこの時代のシュアのカートリッジは,ダンパーの固化という持病があるので,純正針の入手は非現実なのです。

 ならば互換針となりますが,V15シリーズで高品質の互換針といえば,もうJICOのSASしかありません。

 職人芸にこだわった日本製で,ただ音が出るという話ではなく,音質に配慮した針を独自の創意工夫で製造し,しかもそれが十分にリーズナブルという,とてもありがたいメーカーがJICOです。

 「シュアはカートリッジをやめたが,日本にはJICOがある」とまでいわれるほどの存在感で,国内はもとより,広く海外にも多くの顧客がいるとの話です。

 すでに私のV15typeIVはちゃんと動く事がわかっているので,JICOの針を買えば,きっと幸せになれるでしょう。しかし,安いものでも15000円です。もし好みの音でなかったらどうするか・・・心配ではありましたが,今こそJICOを使うチャンスだと,SASのボロンタイプを注文してみました。

 そうそう,ついでにいうと私は,悪名高いダイナミックスタビライザーと名付けられた,あの黒いブラシが大好きで,他のシュアのカートリッジでも常用しています。

 音質に影響を与えるといわれて,マニアほど使わない傾向があるように思いますが,レコードの反りによる上下運動にきれいに追随することが出来る上,静電気の除去,溝に入り込んだホコリを掻き出すなどのメリットもあり,私はずっと気に入って使っています。

 typeIVはV15シリーズで初めて,このダイナミックスタビライザーを装備したカートリッジになるのですが,typeIIIの針には当然こんなものはついていません。typeIVを完全な状態で使いたいというのであれば,ダイナミックスタビライザーもちゃんと使えないといけないのです。


 さて,10日ほどかかりましたが,無事に届きました。amazonやヨドバシになれていると,この10日が長く感じて大変です。

 届いた針は,想像を超える精密さです。本当にまち針くらいの太さしかないカンチレバーに,緻密に加工された特殊形状のSAS針は取り付けられています。

 頼もしいのは,捺印のある検査証です。この個体をきちんと確かめてくれていると言うのですから,ありがたいです。

 この,緻密な針に対して,チャチなのはダイナミックスタビライザーを含むプラスチックの成形品です。

 特にダイナミックスタビライザーは,あのヌルヌルと抵抗をもって上下に動く仕組みが今ひとつで,途中で引っかかって動かなくなります。

 どうも,このダイナミックスタビライザーを「どうせ使わないだろうし」と軽視しているように思うのですが,私のような人もいるのですから,やはりちゃんと作って欲しいし,出来ないなら出来ないと書いておいて欲しいものです。

 別に動きが悪いくらいいいじゃないかという話もあるんでしょうが,ダイナミックスタビライザーを使う時には針圧を0.5g増やすことになっています。もし,ダイナミックスタビライザーが動かなくなってしまうと,針圧が0.5gも増えた状態になるのです。

 同じような互換針で,ME97用を持っていることを思い出し,これのダイナミックスタビライザーがどうなっているかを見てみたところ,やはりちゃんと動いています。こういう不良は,高価なものだけにいやになってきます。

 少しピンセットで曲げて,動くようにしてみたのですが,それでも完璧とは言えません。

 私は,シュアの高級カートリッジというのは,このダイナミックスタビライザーも他社が真似できない開発成果だと考えていて,上下の運動を適度にダンピングし,静電気もホコリも除去するという巧みな仕組みを,音質やレコード盤に影響を与えないで実現することはとても難しいものと想像しています。

 そしてこのダイナミックスタビライザーは,本体ではなく交換針に付いているために,純正と同じ機能を持つ交換針をシュア以外が作る事は不可能であると考えています。

 しかし,JICOについては,JICO自身もそうしたことを一言も言っていませんし,悪い評判を耳にしません。むしろ絶賛ばかりです。

 期待したのですが,やはりダメだったようです。初期不良で交換をお願いしようかと思いましたが,音そのものは大変良かったので,交換することはやめることにしました。

 で,その音ですが,これは確かに良い音がします。高域も良く出てきますし,低域の膨らみもなく,伸びやかです。

 内周でも全くと言っていいほど歪まず,大振幅も楽々こなします。SAS針のトレース能力の高さは強烈です。

 しかし,V15ってこんな音でしたっけ?もっと骨太で,もっとしっかりとした重心の低い音ではなかったですか?

 JICOの針は綺麗で伸びやかな音がでます。しかし重心は高くなって,オーディオテクニカのカートリッジみたいな高性能っぷりです。

 うーん,V15typeIVをまだ扱い切れていないのかもしれません。少なくともV15typeVxMRの方はボーカリストが目の前にいるような立体感のある音を出しています。typeIVにはそこまでのリアリティがないのです。

 以前も書きましたが,M97xEにV15typeVxMRの針を取り付けるとV15typeVxMRの音になりました。V15typeVxMRにM97xEの針を取り付けると,M97xEの音になりました。

 発電機構よりも,カンチレバーとスタイラスチップが音質に影響を与えるんだという経験則ですが,JICOの針は良くも悪くも,日本の超高性能な針です。そしてV15の音とは違う音を出すのだろうと思います。

 とはいえ,V15らしい立体感や中低域の豊かさは健在ですし,その意味では他のMMが霞んで見えるくらいの精緻な音であることは間違いありません。これはこれで,高評価なのは理解出来ます。

 でもなあ,この音が欲しいなら,オーディオテクニカでいいんじゃないの?

 当時の新品の店頭価格くらいで,V15typeIVを新品に近いコンディションで手に入れたことになった今回の顛末ですが,なんだかんだで結局,V15typeVxMRとDL-103の出番ばかりになってしまうような気もしなくはないです。

 

 

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