エントリー

D850をもっと活用

 ミノルタオートコードで中判を初めてワークフローにのせることになったわけですが,できるだけ新規の投資はしたくありません。そこで,今ある機材とノウハウでなんとかしのげない物かと工夫を試みるわけですが,ここでD850というカメラがとても力になってくれました。

 今もってトップクラスの性能を誇り,プロからもアマチュアからも大きな支持を集めるD850ですが,冷静に考えて見るとその性能はもはや検査機器や測定器レベルです。

 普通に撮影しても高精細な画像を吐き出しますが,そのために要求される精度レベルは高く,しかも今どきの使いやすさが随所に見られます。

 今回の中判デビューにあたり,D850のおかげでうまくいったことを2つ紹介して起きます。


(1)オートコリメータ

 いきなり耳慣れない言葉が出てきましたが,平行光を作る機械のことです。平行光というのはつまり無限遠からやってくる光のことで,この光にピントが合うようにすれば,無限遠が出ていると言えるのです。

 レンズ分解のあるあるの1つに,無限遠のマーキングを忘れてヘリコイドを分解,と言うのがあるんですが(え,私だけですか),仮にマーキングをしても元々が正確に出ていたかどうか怪しいですし,やっぱり確かめておきたいじゃないですか。

 だからオートコリメータは是非とも欲しいわけです。

 ただ,本物はとても大きく重たく,扱いが難しい上に高価で,全然現実味がありません。

 なので,アマチュアは昔から工夫をしてきました。きちんとピントが出ている一眼レフに,きちんと無限遠が出ているレンズを取り付け,無限遠に回しきってから,調整したいレンズを覗き込むのです。

 調整したいレンズもあらかじめピントの出ているボディに取り付けておき,すりガラスをフィルム面において裏側から照明を当てておきます。

 そしてレンズを無限遠の出ている一眼レフで調整したいレンズを覗き込んで,すりガラスがくっきり見えるところが,無限遠です。

 この方法は理にかなっていて,周りにある機材で手軽に無限遠を作る方法として知られていますが,すりガラスのザラザラをきちんと見るためには無限遠を出しているレンズの焦点距離が長くないといけなくて,ざっくり目安として相手の3倍の焦点距離が必要と言われています。

 50mmのレンズを調整したいなら150mm以上の無限遠の出ているレンズが必要なのですが,言うは易し,でも実際には大変です。

 まず,近頃のAFレンズやズームレンズは,無限遠が出ていません。オーバーインフと言って,フォーカスリングが無限遠で止まらず,無限遠よりもさらに回った位置まで回ってしまいます。

 AFなんだからその都度ピントをあわせるのでこれで問題はありませんし,むしろ無限遠でストップされる方がAFの仕組みによっては問題を起こすので正しい対応ですが,我々はレンズ回しきったところが無限遠になっていると信じているわけなので,こうしたレンズは使えません。

 それに,調整した焦点距離ごとに,いくつも無限遠の出ているMFレンズを揃えておけません。もし200mmのレンズを調整したいなら,無限遠の出ている600mmのレンズが必要になるのですが,そんなの非現実です。

 しかも,無限遠が出ているレンズは出来るだけ明るく,かつボディのファインダーは見やすくないと,無限遠が出ているかどうか判別しにくくて仕方がありません。

 調整したいレンズと無限遠が出ているレンズとの距離が近くないと調整作業も出来ませんし,何だかんだで条件がきびしいのです。

 そこでD850です。

 もともとコンパクトデジカメを使ってオートコリメータを作る人はいたようですが,ではそのコンパクトデジカメの無限遠はどうやって出すのよ,と言う難問が残ります。

 ですがD850を使えばすべて解決です。

 私の場合,無限遠の出ているレンズとしてAi-Nikkor105mmF2.5を使っているのですが,これをD850に取り付けて,無限遠にしておきます。

 そして向かいあわせに調整したいレンズを置いて,ライブビューを動画モードで起動します。

 さらに拡大ボタンを連打して,すりガラスのザラザラがくっきり見えるように調整をすれば,もう無限大無限遠が出ています。

 明るさもシャッター速度で変更出来ますし,ファインダーを覗き込むこともなく,作業もとても楽ちんです。拡大するので見やすいですし,105mmのレンズ1本で様々なレンズの調整が出来ます。

 しかもライブビューですからね,ピント精度は抜群ですし,画素数といい明るさといい,もう十分な性能です。

 こうしてミノルタオートコードの撮影レンズとビューレンズを調整しましたし,ついでにRollei35のピントも確認することが簡単にできました。


(2)フィルムスキャン

 私はCoolScanVEDというニコンのフィルムスキャナを長年使っていて,35mmについてはこれでコンピュータへの取り込みをやっていますが,中判デビューの最大の難関は,どうやってコンピュータに取りこむかでした。

 CoolScanVEDは35mm専用で,残念ながらブローニーには使えません。

 お店で現像の時にデータ化してもらうのも手ですが,自家現像の時に困りますよね。かといって,今さら透過原稿ユニット付きのデスクトップスキャナを中古で探して買うというのもハードルが高いです。

 一度ベタを焼いてからスキャンするのも手ですが,印画紙の現像という新しいプロセスが入り込むのも大変です。

 そこで考えたのが,D850のネガ取り込み機能を使うことです。

 D850には,マイクロニッコールを使ってネガやポジを取りこむ機能があります。特にカラーネガはベースのオレンジ色をうまく補正することが出来るので,とても優秀で便利です。

 ただ,フィルムを平行にレンズと対峙させるオプションであるES-2はブローニーには対応しません。

 そこで,ES-2を使わないように,ネガを取りこんでみる事にしました。

 D850にはAF-S Micron-Nikkor60mmF2.8を付けて,三脚に乗っけておきます。

 レンズと平行な位置にライトボックスを置き,その上にネガとガラスの板をおきます。

 そして動画モードでライブビューです。フィルム取り込みモードに設定すると,綺麗に中判のネガが反転されています。

 あとはこれを撮影するだけです。わずか12枚ですのであっという間におわります。

 まあ,嫁さんなんかは,わざわざフィルムで撮影してデジカメで取りこむくらいなら,最初からデジカメで撮影すればいいのに,といったりするわけですが,それこそ愚問で,銀塩フィルムというフィルタが入った画像を鑑賞しているわけで,D850で撮影しても普通の写真になってしまいます。

 ちょっと計算してみましょう。D850の画像サイズは8256x5504ピクセルです。上下をフィルムにおさまるようにして撮影すると,ざっと5000x5000ピクセルの画像になります。

 6x6版のコマサイズが56mmx56mmですので,5000/2.2 = 2272dpiです。

 CoolScanVEDが最大4000dpiですので解像度という点では及びませんが,画面サイズが35mmよりも遙かに大きいので2000dpiもあれば十分で,拡大率が大きくない分,光学的にも有利な条件で,5000x5000ピクセルという大きな画像を作ってくれます。

 優秀な画像処理とネガポジ反転のおかげで,出てきた画像は35mmの見慣れた画像ではなく,いかにも中判という滑らかな画像です。

 ただし,ブレには注意が必要で,安定した三脚が必要ですし,リモートケーブルも必須です。揺れが止まってからそっとシャッターを切らないと,ぶれて眠たい画像になります。

 わずか12枚ですから,あっという間に取り込みが終わります。取り込んだ後は思う存分PCの画面で鑑賞出来ます。

 確かに,粒子が見えるほどの解像度はありませんし,中判のデジカメが1億画素に達していることを考えると,2500万画素で取りこんだ今回のケースでは1/4程の情報量しかありません。まあ,ギリギリというところでしょうか。

 参考までに,35mmフィルムからA4サイズ,350dpiの画像を得ようと思ったら,ざっくり2800dpi程度の解像度で取り込む必要があります。これを考えると,ずっと大きな中判で2200dpiというのは,A3ノビくらいまでは十分に引き延ばせると考えて良いと思います。(えと,エプソンのWEBサイトを見ていると,2400dpiの場合,35mmでA4,6x7でA3ノビが目安とあります。)

 4800dpiのスキャナで56mmx56mmをスキャンすると,およそ10000x10000ピクセルの画像となり,ようやく1億画素になります。D850で35mmを取りこむとざっと5800dpiとなり,もう十分過ぎる解像度となりますが,そこまでの解像度で拡大しないで済むくらい元の画像が大きいことも,中判のメリットなわけです。

 まあ,本気で中判に挑むならこのくらいの情報を吸い出さないといけないかも知れませんし,冷静に考えると中判で撮った画像を35mmサイズに縮小して複写しているわけで,結果として35mmサイズに落とし込んでいるのと変わらないという,なんともまあ興ざめなことに気が付きます。

 それでも,中判というフォーマットに75mmのレンズで撮影されたことだけは35mmに縮小されても揺るがないわけで,D850の性能の高さと粒子サイズが大きくならないこと相まって,中判の美味しいところはきちんと取り込めていると思います。

 とはいえ,D850での取り込みが万能かというとそうではなく,まず赤外線を使ったゴミやキズを消すことが出来ません。CoolScanVEDを使う最大のメリットは,この赤外線によるゴミとキズを消す機能なわけで,これは本当に便利だと思うのですが,残念な事にモノクロでは有効になりません。

 また,自動的にコマ送りをやってくれません。35mmだと6コマを自動で送ってくれますが,ブローニーでは3コマですから,自動であってもあまりうれしくないし,全部で12コマですから大した手間ではありません。

 ということで,D850を買った時には考えてなかったような用途で有効に利用することが出来ました。オートコリメータはオールドレンズ,オールドカメラの修理にとても役立ちますし,中判のスキャナ代わりにD850を使うというのは性能も便利さも楽しさも十分な物を持っています。

 D850は高価なカメラですが,その性能ゆえに様々な被写体,様々な条件に対応出来る柔軟さを持っています。その上今回のような使い方も出来たりすると,本当に便利な道具だなあと思います。買って良かった。

 

ページ移動

ユーティリティ

2020年04月

- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

検索

エントリー検索フォーム
キーワード

ユーザー

新着画像

過去ログ

Feed