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300Bシングルのハム退治

  • 2007/03/12 16:32
  • カテゴリー:make:

 ここのところずっと検討していたのが,300Bのシングルアンプの改良と測定でした。

 あるホームページで,身近にあるもので歪率を測定するという方法が紹介されていたのを偶然見つけたことがきっかけです。

 24bit/96kHzのUSBオーディオインターフェースをPCに接続し,フリーのスペクトラムアナライザのソフトウェアを使って歪率を測定しようというものです。

 この場合でも歪率の低い正弦波発振器が必須になるわけですが,それもPCのサウンドカードを使って代用しようという試みも紹介されていましたが,私の場合はそれなりにちゃんとした低周波発振器がありますので,これを用いれば済むことです。

 電子電圧計は,手持ちがあるにはありますが,今ひとつ精度に不安があるので,ハンディスコープのSTA55Gを使います。これはかつてソニーテクトロニクスから出ていたもので,大きめのデジタルテスターの形をしていますが,ボタン1つで帯域5MHzのオシロスコープになってくれます。

 まあ,画面が小さいこと,値が直読できないこともあり,オシロスコープとしては全く役には立たないのですが,高機能デジタルテスタとしては優秀で,交流電圧計はどんな波形でも実効値で測定が出来ます。trueRMSという機能ですね。

 早速試してみたのですが,結果は今ひとつ。測定の度に大きく値が変わる,100Hzの値が悪すぎる,10kHzの値もなんだかさっぱり信用できない,と散々な結果でした。

 測定に時間ばかりかかって,得られる結果がこれでは悔しいので原因の究明です。

 まず100Hzの値が悪いことですが,これはどうもハムが悪さをしているようです。

 測定してみると,8Ω負荷,入力ショートで2.5mV以上も出ています。入力を入れるとさらに増えて,実際スピーカをつなぐと昼間でも「ブーン」という音がかなり耳障りなほどです。

 これが測定値を悪化させていることは明かです。

 私はハム退治がとても苦手です。これほど理論値を大事にしているのに,ハム退治については出たとこ勝負になっています。とはいえ,これほどハムが出ていることを放置するのは確かに気になります。

 そこでちょっと本腰を入れて頑張ってみました。対策だけではなく,配線ミスも見つかりました・・・

(1)300Bのフィラメントを3端子レギュレータで安定化
 これは前回の再組み立てで行ったことですが,実はあまり効果がありませんでした。

(2)電源のリプルを確認
 電源のリプルを確認します。300Bのフィラメントの直流は2mV程度,450VのB電源も20mV程度で,これだけ小さければ残留リプルが主たる要因とは考えにくいです。

(3)初段管のヒーターを直流点火
 初段管の6J7は傍熱管なので直流点火までは必要ないと思っていましたが,試しにやってみると聴感上大きな改善が認められたので採用することにしました。

(4)初段管のシールドの配線ミス
 初段管の6J7には,シールドが内部に用意されていますが,なんとこれが配線されず,浮いていました。手をかざすとハムが激増するのはそのせいでした。お恥ずかしい。

(5)グリッドキャップのシールド
 初段管のグリッドキャップはタイト製で,シールドはされていません。シャシー内部へはシールド線で引っ張り込んでいますが,グリッドキャップの部分はシールドがなされていません。電源トランスに近いLchで特にひどいハムはこれが原因で,銅箔テープを使って対策すると激減しました。えらいもんです。

(6)入力ピンジャックのアース
 入力ピンジャックのアースは,シールド線のアースは接続せず,わざわざ別のアース線で1点アースにつないでいましたが,結果としてアース線が長くなり,他のアース線とループを作っていたことか,もしくは電位差が発生したことがハムの原因となっていました。そこでこのアース線を外し,シールド線のアースを接続したところ,これもかなりハムを減らすことが出来ました。

(7)入力ケーブルのループ
 ピンジャックからボリュームまでの配線はどうしても長くなりますが,LとRの2つが輪っかを作ると,ここからハムがのってきます。そこで2つを密着させて誘導が起こらないようにします。

(8)ハムバランサの追加
 今までハムバランスがなかったわけではないのですが,15Ωの固定抵抗2本で代用していました。300Bを直流点火しているので高価な半固定抵抗を使うほどもないだろうと勝手に考えたのですが,LとRでハムの大きさが違う原因はこれではないかと疑ってみると,やはりその通りでした。1つ800円もする巻線型の半固定抵抗を買ってきてハムが最も小さくなるように調整をすると,これも効果てきめん。

(9)アースラインの見直し
 アースに関しては,人それぞれいう事が違います。ループを作らない,電位差を作らないというセオリーがあるにせよ,その具体的な手段にはまとまったものがありません。私の場合伝統的に1点アースを行っていましたが,まずそれを疑ってみます。結果として,初段管は近くで写シャシーに落とすというニアバイアースを,出力管はそのまま1点アースを踏襲し,電源回路はリプル電流が流れないようにこれもニアバイアースで処理しました。試行錯誤の結果なわけですが,これもそこそこ効き目がありました。

(10)ついでに
 ついでに,初段管と出力管のカソード抵抗に並列に入るコンデンサを,ちょっと高級なものに交換しておきました。


 と,こんな感じです。

 とにかく,自分のやってきたことを否定して疑ってみることから始めたのですが,思いこみや生半可な知識で勝手な省略をやってしまうと,やっぱり痛い目に遭います。

 特にハムバランサですが,直流点火しているのにどうしてハムが出るのか,またどうして半固定抵抗でキャンセルできるのか,理屈ではさっぱりわかりません。直熱管のフィラメントはカソードを兼ねているから,少しのハムでも影響が大きいのかも知れません。

 もう1つ,初段管のシールドですが,銅箔テープでこれほど押さえ込めるとは驚きでした。グリッドキャップにシールドがあるようなものは見たことも聞いたこともないので,こういうことで困っている人は少ないのだろうと思いますが,効き目が絶大だったということは,やはり私の部品配置がまずかったのでしょう。

 ここまでやってハムのレベルは8Ωで2.0mV。2mVの壁を破れなかったのは残念ですが,入力をショートしなくてもこの値を維持できていることと,50Hzの高調波である100Hzが激減しているため,実使用でのハムはかなり小さくなりました。私のスピーカは能率が低いので,2mVでも3mの離れて聴けば,ほとんど気にならないレベルになるでしょう。

 私の技術力ではここまでが限界。部屋も散らかり放題,睡眠時間も不足するので,もうこれ以上の追い込みはしません。初段管を取り外してもハムの大きさは変わりませんので,出力管で出ているハムでしょう。アースの取り方もいろいろ試してみましたし,ちょっと手詰まり状態です。

 やはり大事なことは基本に忠実なこと。ループをなくす,電位差をなくす,トランスからの誘導をなくす,でした。以前,MOS-FETのパワーアンプを作ったときもハムが出て困ったのですが,これも配線の取り回しをやり直して,電源トランスを避けるようにするだけでぴたっとおさまりました。

 いかに直熱管とはいえ,ハムが盛大に出ているアンプはみっともないです。あれだけのハムが出ていたかつての300Bシングルは,とても人前に出せるようなものではなかったわけですが,これでようやく「普通」になったかな,という所でしょうか。

 同じように,適当な配線で「こんなものかな」で済ませていたアンプが2つ残っています。これもいずれ検討をしないといけないですね。

 そうそう,歪率でしたね。ハムが減ったことで100Hzの歪率はそこそこ測定できるでしょう。あとは10kHzですが,これはどうもハンディスコープの周波数特性が10kHzまで伸びていないことが原因のようでした。

 だって,オシロスコープモードなら5MHzの帯域ですよ。なんでそれがデジタルテスタモードだと数百Hz止まりなわけです?

 仕方がないので,きちんとした電子電圧計を引っ張り出してみました。

 測定結果が,これです。

ファイル 111-1.jpg

 8Ω,1W時の値は,1KHzで0.475%,100Hzで1.166%,10kHzで1.497%です。1kHzの値はなかなかよいのですが,それ以外の値はさっぱり・・・この値が信用できるかどうかも疑わしいのですが,無帰還のアンプは真空管や部品の善し悪しが大きく現れるので,意外にこんなものなのかも知れません。

 ちなみに,1KHzで3%になる出力は約8.5W。これはまあこんなものではないでしょうか。

 測定が終わってから,ようやく音出しです。ハムが聞こえなくなったことは本当に快適で,うれしい結果です。これが当たり前なんだと思うと,あまりに今まで手を抜きすぎていたなあと,深く反省しました。

 音そのものは以前よりもなんとなくおとなしくなったような「気がする」のですが,それでも聞き慣れたソースはぱーっと目の前が広がるような音を出してくれますし,あまり気にするようなことではないように思いました。コンデンサを買えたことが影響しているのかも知れませんね。

 負帰還の有無については賛否両論あって,技術的に明るい方ほど負帰還については肯定的なようです。私自身は,負帰還の量によって音が変わることは事実であって,あとはもう好みの問題かなと思っていますし,どんな素材を使っても同じ品質の音を保てる負帰還の素晴らしさは認めつつも,素材の味をそのまま堪能できる無帰還も,気に入った音が出てくればそれでいいのではないかと,そんな風に思っています。

 スピーカが不釣り合いなのですが,このアンプでハイブリッドのSACDを,CDのレイヤーから切り替えてならした瞬間に,思わず「おっ」と声を上げてしまいました。

 アンプのスペックもSACDには物足りないわけですが,CDとSACDの差が一瞬で分かるという事は,このアンプとSACDの組み合わせもまんざらではない,という風に考えたいと思います。

 結局,趣味の世界ですからね。好きなのは,音楽そのもの。

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