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CM1で手に入れた至高の世界

  • 2007/04/23 15:52
  • カテゴリー:散財

ファイル 123-1.jpg

 ついこないだスタックスのイヤースピーカを買ったばかりなのに,今度はスピーカを買ってしまいました。

 言い訳すると,別に衝動買いをしたわけではありません。300Bのシングルアンプをいじる過程で,どうして音が良くならないのだろうと悩み,ひょっとしたらスピーカが原因ではないかと思ったことがスタートで,これはもういいスピーカを実際に手に入れて試してみるしかないと結論したところで,あるスピーカがとても欲しくなったのです。

 B&WのCM1。イギリスの名門B&Wが満を持して発売した小型のモニタースピーカです。2006年に登場するや国内外の賞を総なめにし,激戦区である2本セットで10万円という価格帯において,その価格を遙かに超える内容に,ライバル達がくずおれたと言われる,ベストセラーです。

 様々なレビューはもとより個人の購入者のインプレッションに至るまで,その感想はまさに絶賛であり,否定的な意見があってもそれはこのスピーカの目指す方向性が個人的な趣味に合わないという話に過ぎません。


 1年ほど前,ふとしたことからB&Wの800を聴く機会がありました。言うまでもなくB&Wのフラッグシップモデルなわけですが,この時私が驚いたのは非常に低レベルなお話で,ボーカルがしっかり真ん中で定位して,まるで目の前で歌っているようだと感じたことでした。

 私はことスピーカに関して言えば,こういう感動を味わったことがないヘタレで,リスニングポイントを変えればボーカルの位置も変わるとか,音程によって聞こえる場所が変わると言った,音質云々を難しい言葉で表現するまでもない,低次元な悩みを抱え続けていたのです。

 自分の世界の狭さにはうんざりするのですが,スピーカなんていうのはこんなものだと,そんな風に割り切っていました。そういう限界の中で,地に響く低音やら天に突き抜ける高音やら,と小難しい評価をしている物だと思っていたわけです。

 しかし,B&Wの800を聴いてから,2本のスピーカでもきちんと空間を展開できると知ります。そして,解像感や周波数帯域の広さなどは,こういう定位感がまず最初にあってから議論される物であることも知るわけです。

 これまで使っていた私のスピーカはJBLの4312Mです。名機4312をそのまま小さくしたレプリカですが,300Bシングルの検討を続けていく中で,その測定結果と実際に出てくる音の間にどうしても埋まらない差が出てきてしまって,ものすごくフラストレーションがたまっていました。

 300Bシングルのスペックは改良前の無帰還の状態でも21Hz~22.3kHz,改良を重ねて負帰還を2.8dBかけた最終の状態では12.3Hz~27kHz,ダンピングファクタは3.6ですから,何度改良をしても,音が出た瞬間にいつも感じる「あ,帯域が狭いな,だめだなこりゃ」という印象は,どうもアンプに起因するものとは思えません。

 しかし,4312Mはそれでも2本セットで6万円ほどもするスピーカで,かのJBLが世界中で販売しているロングセラーでもあります。だから4312M疑うよりも,自作のアンプを疑うのは,今の私のスキルなら無理からぬところです。

 それだけではなく,やはり音程によって聞こえる場所が変わったり,ボーカルの位置が安定しないことも気になっていて,これもアンプの位相特性が悪いせいだと決めてかかっていました。

 しかし,やはり納得がいかない。スピーカをいい物に変えて,どれくらい改善されるのかを確かめたいなあと思っていたのですが,4312Mがどれくらいの位置付けで,ここからステップアップするにはどんなスピーカを選べばいいのか,さっぱりわからないのです。

 ヒントになるのは,かつて感じたB&Wの音でした。

 当時の私は不勉強で,B&Wといえばノーチラス,ノーチラスといえば高い!という今年か頭になく,小型の物は余り目にしないということもあって自分にはもったいない物だと漠然と考えていました。

 ところが,ある時広告で600シリーズという小型のスピーカを見て,急にB&Wを身近に感じ感じるようになったのです。

 そこで早速B&Wのスピーカをいろいろ調べてみましたが,600シリーズはお手頃な価格で小さいのですが,評価は今ひとつ。かといって700シリーズや800シリーズはちょっと高価で手が出ません。予算は2本で12万円くらいまでなのです。

 ところが,CM1という2本セットで10万円程度のスピーカが見つかります。805Sと同時に開発され,その血統を受け継ぐ小型のモニタースピーカとして登場し,そして世界中で絶賛されていることは前述の通りです。

 これなら間違いなかろう。モニターというのはおかしな色づけをせず,素直な音を出すことが使命です。そして805Sの血統を受け継ぐとあれば,その再生能力に俄然期待は高まります。少なくともボーカルの定位感については間違いないでしょう。

 視聴をしようと思いましたが,体調を崩したりしてなかなか機会もなかったのですが,ぐずぐずしていてはいつまで経っても買えないだろうと,意を決してお店に電話をしてみました。

 結果,ごこも在庫切れで,次の入荷は6月初旬とのこと。意を決したのにこれはなかなか厳しい現実です。

 唯一,ヨドバシカメラには在庫があるということで,これを買うことにしました。色はメープルで,欲しかったローズナットやウェンジはなかったのですが,私は色は選ばない人で,その時々に手に入る色を何かの縁だと受け入れて使っています。

 価格は99800円にポイント10%でした。まだまだ安いお店もあったのですが,在庫も持っていませんし,ポイントを考えると十分安いと思います。

 持って帰れないので配送料を払い,届けてもらったのが先日の土曜日。

 せっかくだからと置き場所も真面目に考え,ちょっとした模様替えをしてからセッティングをします。

 ドキドキしながら300Bシングルで音出しです。

 最初の印象は,低音が出すぎなんじゃないのか,でした。どーんとベースが鳴りますし,バスドラムもバスンバスンと出てきます。高音についても耳障りなほど出ており,なんとまあ賑やかなスピーカなことだと思いました。

 でもこれは4312Mと比べて聴いてみて,4312Mの狭帯域に慣らされたせいだと分かります。特別強調されている音ではないので,すぐに馴染んできます。

 そして注目のボーカルの位置ですが,これはもう期待以上。自分が左右に動いてもボーカルの位置は変わりません。座り込めば頭上で歌っている感じがします。ボーカルだけではありません。楽器の位置がきちんと定位し,前後の位置関係もはっきりとします。そうそう,まさにこの感覚が欲しかったのです。

 スピーカの外側からも音がきこえたりするのはちょっと感激で,ステレオ再生の本来の意味は,2つのスピーカで音場を再現することにあったのだと改めて思い出した次第です。

 さて,アンプを変えてみましょう。

 300Bシングルは中音域の太さが印象的で,ボーカルの質感がたっぷりです。その代わり帯域の狭さを感じ,同時に解像度の低さも気になります。

 5998プッシュプルは30分のウォーミングアップの間にどんどん音が変わる面倒なアンプですが,最終的には300Bにはなかった帯域の広さが印象的です。低rpの三極管に割には低音はタイトで,とても元気な音が出ています。

 20年前に作った2SK134/2SJ49のMOS-FETアンプでも試してみましたが,これが実は一番バランスが取れており,好印象でした。ボーカルの真の太さとワイドレンジ,そして解像感を適度に併せ持っていて,おそらくこれが一番普通の音なんだろうなあと感じました。CM1にはやはり半導体アンプの方が相性が合うのかも知れません。

 一緒に隣で聴いていた友人も同じような感想を持っていたようなのですが,これって実は測定結果や回路形式による傾向と一致するのが面白いですね。

 半導体アンプは多量の負帰還をかけ,低歪みを実現し解像度を上げ,しかも帯域はDCから100kHzまでまっすぐに伸びています。一方で300Bシングルは3dB以下という浅い負帰還で特性を欲張らず,中域のエネルギー感が生きる無帰還に近い状態で動作させることで,その太さが実現しているようです。その代わり繊細さはありません。

 5998のプッシュプルは10dB程度の負帰還をかけているアンプですが,裸特性の良さもあってかこのくらいの負帰還でも50kHzを再生できるほど広帯域ですし,とても元気があります。

 私の結論は,やはり300B。低音と高音はそれほど私にとっては大事な物ではなく,どちらかというと中域の質感があるのが好みです。解像度のなさはやや残念ではありますが,そういうのはイヤースピーカで聞けるわけですので,ここは300Bという真空管の個性を楽しむことにしましょう。

 しかし,アンプを変えてその違いがこれほど分かるという事は,4312Mではありませんでした。CM1の懐の大きさは,こういうところでもわかります。

 最後にイヤースピーカでも聴いてみましたが,これはもう別世界ですね。音場感が薄い代わりに,本当に細かい粒まですかっと見える解像感が強烈です。

 そんなわけで,CM1を鳴らしながら,とうとうここまできたか,と感慨深い物を感じていました。決して高価なシステムではありませんが,自分が欲しいと思っていたものが手に入った幸運は,お金では買えない満足感をもたらすものです。

 高さ30cmという小柄なエンクロージャと,わずか13cmの小さなウーファーからはとても想像も出来ない音が出ているCM1は,単純な帯域の広さだけではなく,そのぴしっとくる定位感から練りに練られたスピーカであることをうかがわせます。10万円でこれほどのスピーカが手に入る世の中になったことが信じられない気分です。

 他にもいろいろいいスピーカもあるのだと思いますが,価格以上の価値を持つ優れたスピーカを探し当てるのはなかなか難しい物で,好みの問題はさておいてもこのCM1というスピーカは,まず最初に検討してみる必要のあるスピーカであると,胸を張っていいたいと思います。

 300Bシングルについても,これくらいアンプのカラーを味わえるようになったわけですから,負帰還量を切り替えるスイッチを取り付けてみようと思っています。無帰還,3dB,6dBと3つくらいに切り替えて,そのキャラクタの違いを楽しむのもよいのではないかと楽しみです。

 で,4312Mですが・・・サブのスピーカに格下げとなり,MOS-FETのアンプに繋がっているのですが,音を出した瞬間に感じるあのがっかり感はCM1に慣れた耳にはより厳しく,まるでラジオや電話からきこえる音のようにさえ感じます。ここまで悪いと,他に使い道も思いつきませんし,どういう風に使うべきかと悩むところです。

 

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