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VMS30mk2は蘇るのか

 さて,VMS30mk2のお話です。

 VMS30mk2は,これまでにも散々書いてきてた通り,オルトフォンのMMカートリッジです。厳密にはMI型と呼ばれるもので,オルトフォンはこれを「VMS型」とわざわざ呼んでいます。

 MMという方式はシュアーに多くのパテントを押さえられていて,多くの会社が回避のために似たような方式のカートリッジを作ったという過去がある(日本国内ではこれらのパテントが成立しなかったので,国内メーカーは国内に限ってMMカートリッジを販売していました。でも輸出はできなかったのです。オーディオテクニカはこの特許の回避にVM型を考案し,大きな顔で輸出していました)のですが,VMS型についてもその1つと考えてもらって構いません。

 VMS30mk2はVMS型における,1980年代の最高級カートリッジで,当時のカタログを見てみると35000円の値段がついています。針が楕円針をしのぐファインラインだったことも高価格の理由だったと思いますが,実際スペックは最高級にふさわしいものを持っていました。

 さて,私は高校生になっており,古いステレオ一式を格安で手に入れ,その中に含まれていたベルトドライブのレコードプレイヤーを,ようやくまともに動くレコードプレイヤーとして,不満がありながらも辛抱して使っていました。

 何から何までちゃちなプレイヤーだったのですが,カートリッジとスピーカーをいい物に変えると劇的に改善されると信じていた私は,付属のくだらないカートリッジではなく,私でも買うことの出来るような高級カートリッジがないものかと,探していました。

 そんなおり見つけたのはVMS30mkです。なぜか1万円で売られていて,喜んで買いに行ったことは以前ここにも書きました。

 しかし,今にして思えば期待していたほどの効果があったとは思えず,トーンアームやイコライザアンプなどが役不足であったことが理由だったのだと思います。

 中古でレコードプレイヤーをDP-2500に変えたときに,カートリッジをシュアーのME97HEにして,以来VMS30mk2の出番がなかったのですが,先日から様々なカートリッジを買うようになって,VMS30mk2も復活させたいなと思うようなったため。交換針を買ったのが少々前の話です。

 VMS30mk2の交換針は,純正は手に入らなくなった久しく,ナガオカのものもほとんど見たことがありません。JICOの互換品には対応品がなく,まさに八方ふさがりな状態なのですが,あるサイトで「VMS30Emk2用のものが使えた」とあるのを見つけ,私もVMS30Emk2の交換針である「D30E/2」を注文したのです。

 ところがこれは失敗でした。ひずみみが大きく,以前の針の方がずっといい音がします。また,少々レベルが大きいようで,これは互換性がないのだろうと結論しました。5000円が無駄になった感じです。

 そこでリベンジ。オルトフォンの海外サイトを見てみると,交換針の対応表が出ています。これによると,VMS20Emk2用の交換針「D20E/2」が,VMS20シリーズ全機種とVMS30mk2に使えるとあります。これは期待できると,早速注文しました。

 試してみますと,ひずみは激減しました。少なくともD30E/2よりは全然よいです。レベルは大きめなのですが,これが正解だったと胸をなで下ろしていると,別の場所がビリビリと歪みます。

 おかしいなと元の針に交換すると,歪みは出ません。

 一難去ってまた一難,やはりD20E/2もダメだったようです。

 純正と互換品を比べてみると,針の先端の位置がす故知違っていて,オーバーハングも違う値になってしまいそうです。歪みの原因がこれではないかと思いましたが,ずらして針を差し込んでも状況は変わりませんので,これだけが原因ではなさそうです。

 レベルが大きいのがとにかくおかしいと,針を手前に引っ張り出し,コイルと磁石の位置を少しだけ遠ざけることを考えたのですが,失敗すると怖いですから,どうせ使い物にならないD30E/2で実験です。

 結果は上々。不思議なことに,1mmほど針を引っ張り出すと,レベルもちょうど良く,歪みも減ります。まだ純正品には追いつきませんが,あれほどひどかったD30E/2がここまで良くなるのですから,期待大です。

 続けてD20E/2で同じ事を試みますが,不幸はここでおきました。ピンセットで針をアルミのパイプをつまむと,場所が悪かったのか,くちゃっとつぶれてしまいました。

 90度ずらしてつまんで復活刺せましたが,細かい作業ですので,針を保護するガードを外して,作業性を上げようとしたところ,手元が狂ってガードがくるっと回ってしまいました。

 が0度は引っ張り出してあった針を直撃し,あわれ,アルミパイプは真ん中から真っ二つに折れてしまいました。

 こうなると,もう諦めるしかありません・・・

 短くなったパイプに磁石を接着剤で接着したり,D30E/2の針にD20E/2の磁石を移植するなどいろいろ試してみましたが,どれもダメでした。

 そこで,純正の針をばらして,アルミパイプを切り出し,これでおれたパイプをつなぐという方法を考えたのですが,これも結局失敗。結果的に,純正1つと互換品2つの合計3つの針が全滅し,VMS30mk2は全く音を出すことが出来なくなってしまいました。

 さすがにこれはまずい。

 純正の針をとにかく元に戻そうと頑張ることにしました。切り出したパイプは短めだったので,磁石を差し込む時に接着剤を使えばなんとか固定できそうです。

 ダンパは黒く変色し,堅くなっているのがわかったので,D20E/2のダンパに交換です。VMS型にはサスペンションワイヤというリン青銅の細い針金が針のズレを防いでいますが,これは面倒なので使いません。

 なんとか組み立てて,ドキドキしながら音を出します。

 ?

 抜群にいいのです。伸びる高音,しっかりした低域,バランスの取れた中音域,もちろんひずみ波ほとんど感じません。抜群です。

 とりあえずなんとかなったということで,その日はもう遅かったので寝てしまい,翌日MJテクニカルディスクで性能を確認です。きっと悪いに違いありません。

 翌日テストしてみると,これがなかなか良いのです。高域は少なくとも16kHzはクリアしていますし,もともとVMS30mk2では良かったチャネルセパレーションについても,25dB以上確保できているようです。

 ダンパの柔らかさでも左右される共振周波数は8Hz程度で,うちでは普通の値ですし,レベル差もほとんどなく,なかなかよい成績であることがわかりました。

 ここで考えてみると,針が摩耗するのに約1000時間。LPレコードで1000枚以上に相当しますが,私が当時持っていたレコードは10枚程度。これをそれぞれ100回聞いてようやく針が摩耗するんです。

 どちらかというと,スタイラスクリーナーが流れ込んだり,経年変化でダンパのゴムが劣化していることが問題であることは以前から分かっていて,これを交換したことが今回の結果に繋がっているようです。

 何分素人のやったことですから,レコードを痛めてしまうかも知れません。だけど,少なくともこれだけいい音が出ているのだから,レコードに致命的な影響を与えるとはちょっと思えません。

 1万円を無駄にして,手元に残ったのはゴミとなりました。交換したダンパを提供してくれたことは褒めるべきですが,結局スタイラスチップはほとんど使われる事なく,捨てられてしまいました。もったいないことです。

 結果的に,VMS30mk2は蘇りました。かつて私が「いまいち」と思ったこのカートリッジも,今聞くと実に上品で,洗練された音がします。これを常用するのはちょっともったいないのでサブに置いておきますが,カートリッジを購入した金額の交換針を捨ててしまったことがちょっと悔しいところです。

 心配なのは,次に本当に針が悪くなって交換するときはどうしよう,ということなのですが,さすがにそれは当然先でしょう。その時には,もう諦めるしかないと思います。

 VMS30m2と先日の320Uを聞き比べると,似て非なる物という印象です。レンジの広さと解像度はVMS30mk2,しっかりした安定感は320Uの勝ちです。どちらも上品な音であることは同じなのですが,これだけ個性が見えると,面白いものです。

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