エントリー

X-07修理の顛末

  • 2007/10/07 20:48
  • カテゴリー:make:

ファイル 156-1.jpg

 1980年代前半,8ビットのパソコンがブームになり,家庭やオフィスに入り込んでいきました。実際の所何の役にも立つこともなく,ただパソコンが動いているのが面白い,触っているのが幸せだ,というだけの話でした。

 ただ,自動で物事が処理されるというコンピュータの根本的な特徴を理解し,またそれを楽しいと思える体験をした人々が,その後のネットワーク社会を支えているんではないかと思います。

 で,今は撤退したメーカーが当時個性的なマシンを作っていました。今回の主役,X-07もそんな1台です。

 1983年,キヤノンから発売されたこのコンピュータは,すべてのLSIをCMOSで構成し,単3電池だけで動かすことが出来たハンドヘルドマシンです。その性能は当時のデスクトップマシンなどに比べても遜色なく,もっと評価されてもよいマシンではないかと思います。

 私は当時雑誌で見たことがある程度で,実物を見たことも触ったこともありませんが,一度は触ってみたいものだと思っていました。

 先日,オークションで壊れているものが安く出ていたので落札。動作品だと8000円とか1万円とかするんですね,これ。そんな価値があるとも思えませんが,それでももう25年近く前のものですから,別の価値が出てきているのかも知れません。

 届いたものは,さすがにあまり程度がよくありません。キーボードも黄ばみがひどいです。問題は電池の液漏れです。これが故障の原因であることは明白でしょう。

 電池を入れてみますと,画面にゴミが出まくっていて,起動画面も出てきません。ただし,キーを押せばクリックがなりますので,完全に死んだわけではなさそうです。

 X-07は面白いメモリ構成のマシンです。Z80など80系のマシンは,リセット後0000H番地から実行されるので普通はROMを0番地から配置し,RAMはROMの後に置きます。

 しかし,なぜかX-07ではRAMを0000H番地から配置し,ROMをB000H番地から配置しているのです。これでは起動しないはずなのですが,面白いのはここから。

 X-07では,0番地から3バイトはC3Hが読み出せるようになっています。C3C3C3Hは,C3C3H番地にジャンプという命令ですので,ROMのありC3C3Hに飛んでいきます。試しにC3C3Hをダンプすると,DI命令で割り込みを止めて,スタックポインタの初期化をおこなっています。間違いないですね。

 起動してから0000Hを読み出してもC3Hにはなりません。起動してからはRAMが読み書きできるようになっているんでしょうね。

 さて,修理です。

(1)クロックとリセットと電源
 リセットとクロックはCPUにとっての神の手,と例えた人がいますが,まずこの2つをきちんと確認しないといけません。確認すると,メインCPUであるNSC800のクロックもサブCPUのクロックも問題なし。リセットも問題ありません。
 電源電圧も問題なし。回路図に書かれているとおりです。

(2)フレキの不良
 派手な液漏れのせいであちこちが腐食しており,コネクタ類もかなりひどいことになっています。導通のチェックを行うと奇跡的にすべてok。念のため錆びている部分を少しだけ磨いておきます。症状は変化なし。

(3)RAMの不良
 RAMはHM6117LFPが4つで合計8kByteです。チップの不良はあまりないでしょうが,基板の不良が心配です。導通を調べていくと,データバスが他のRAMにつながっていない場合があります。こりゃいかんとさらに調べると,D0とD1,といった具合に,別のピンにつながっているようでした。そうです,SRAMはROMと違って,別のピンにつなげても動作するのです。しかし,こういうのはトラブルの原因になるんだけどなあ。ブートの仕組みといい,かなりマニアが設計したマシンのようです。
 で,私はRAMの増設も頭に入れて,256kbitのSRAM1つに載せ替えました。このうち前半の8kByteだけをとりあえず使うことにします。試してみますが,症状は変化なし。

(4)ROMの不良
 ここまでくると,かなり雲行きが怪しくなります。ROMはマスクROMですから壊れていると交換できません。本当にROMが壊れているならあきらめるしかありません。(そんなケースはまれだろうって?いやいや,私のMatrix1000は電源投入後10分ほどすると暴走してしまいましたが,原因はマスクROMが10分ほどで読めなくなったからでした。あわててEPROMにコピーして今は問題なしです。)
 某サイトからX-07のエミュレータを手に入れたのですが,そこにはROMイメージが付属していました。(私は実機を持っているので限りなく黒に近いグレーと思ってください・・・)このイメージをROMライタで焼いてみることにします。
 X-07は,B000HからBFFFHまでを32kbitの,C000HからFFFFHまでを128kbitのマスクROMで合計24kByteを搭載しています。この両方のイメージを256kbitのEPROMに焼きます。
 交換して,アドレスデコーダを作り込んで動かしてみますが,ますます状況が悪くなり,画面になにもでなくなりました。冷静に考えると,B000H番地のデータをEPROMの0番地に書き込んでいるので,CPUがB000H番地をアクセスにいっても,アドレスがずれてしまうのですね。
 本来はオフセットをつけて焼くべき所を,いやーうっかりしていました。お恥ずかしい。
 そこで,オフセットをつけて焼き直しをしようと思いましたが,どういうわけか書き込みエラーが出てしまい,書き込めません。殺菌灯でROMを消そうと思いますが,なぜか殺菌灯も見あたりません。万事休す。
 しかしあきらめません。アドレスをオフセットする回路を3ゲートで作り,これを組み込みます。
 ところが,問題は解決せず。最初の状態になっただけです。念のためアドレスデコーダのICも交換しましたが変化はありません。しかし,最初の状態になったということは,ROMが壊れていた可能性は極めて低いということになります。

(5)サブCPU
 とはいえ,ROMが壊れていないとなると,残るはもうサブCPUだけです。サブCPUはLCDの制御,キーボードの監視,RTCなどの機能を受け持っています。これが壊れている場合に考えられる症状と今起きていることは近いので,サブCPUの故障という可能性はかなり高いと思われます。
 しかし,サブCPUこそ交換する方法がありません。もし本当に壊れているなら絶望的です。
 回路図を見ながら,サブCPUと外付けの16kbitのSRAMとの配線を確認します。するとどうもD7とD8がつながっていないようです。このデータバスはLCDドライバICにもつながっているので,影響はかなり大きなものとなりそうです。
 SRAMを基板から剥がすと,SRAMで隠れていたパターンが切れているのがわかりました。こわいですね,電池の電解液によって,溶けてなくなってしまっているのです。
 実は,ROMの確認をする過程で,ROMのチップセレクトの配線が切れていました。これも電解液による腐食でした。
 ここを配線し直したところ,画面のゴミは消えました。しかし,相変わらず起動画面に至りません。

(6)そして・・・
 サブCPUのデータバスをオシロスコープで見ていくと,Lowに下がりきっていない信号がありました。こういうのは大抵データバスの制御が羽なく行っていないのが原因です。SRAMのチップセレクトを確認すると,ずっとHighになっています。これはおかしい。確認すると,チップセレクトを作るICの足がブリッジして,ずっとHighのままです。
 このブリッジを外してみると,データバスは正常になりましたが,それでもまだ起動画面は出てきません。

(7)やはりフレキ
 先程とは違って,直接ハンダ付けされているフレキがあるのですが,これをよく見ると,いくつかきれてしまっています。とりあえず導線で配線しなおしてみます。
 すると,うれしいことに起動画面が出てきました。


 いやー,うれしいものですね。この程度のマシンなら修理可能だろうと思っていましたが,1週間もかかってしまいました。

 高校生の時,故障したMZ-80kを修理した時には,飛び上がって喜んだものですが,こういう感動はいつ味わってもよいものです。

 暫定的な配線をすべて綺麗にやり直し,メインRAMを拡張する改造を行い,あらかじめ洗ってあった筐体を用意して,組み立てていきます。

 強力なBASICが使えるX-07が動作するようになり,付属してたTableカードというアプリケーションカードも動作することを確認しました。

 今回はなかなか厳しい修理でしたが,その分感激も大きいです。幸いにしてICの破損は1つもなく,液漏れした電池の電解液があちこちのパターンを切断していたことが原因でした。

 今回は3カ所の切断だけで済んでいますが,電池の電解液がこれほど強力なものとは思っても見ませんでした。基板がその信頼性を維持できないことを見せつけられたわけで,電池の恐ろしさを実感しました。

 80年代といえば,CMOSのSRAMがバックアップ出来るようになり,電池が100μA程度で消費されることが増えた時代です。しかし,電池にとってこの100μAというのはかなり厳しい使用条件で,この電流をずっと流し続けると,過放電になり簡単に液漏れするようになります。

 もっと少なくか,もっと多く流せば液漏れの可能性は減りますが,それが製品の設計に反映されるのは90年代も半ばになってからです。だから,この時代の製品を使っている方は,電池は面倒でもこまめに抜いた方がよいです。その被害は甚大です。

 というわけで,とりあえずX-07が手に入りました。ポケコンとは桁違いのパワーを持つマシンですし,使い道は考えれば出てきそうです。

 しかし今回は,何より修理が出来た,ということに価値があると思います。信号を追いかけ,1つ1つ原因を潰していけば,必ず修理は可能です。今回はそのことを改めて実感したいい機会でした。

ページ移動

ユーティリティ

2020年05月

- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -

検索

エントリー検索フォーム
キーワード

ユーザー

新着画像

新着エントリー

過去ログ

Feed