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KAOSSILATORは新しい発明なのか

  • 2008/03/17 19:33
  • カテゴリー:散財

 KAOSSILATOR,買いました。

 かおしれーた?顔がどうしたって?,と言われてしまったくらいマイナーなものではありますが,なにやら楽器に縁遠かった人たちをも巻き込んでちょっとしたブームになっているようです。

 コルグは世界でも知られたシンセサイザーの老舗ですが,御三家の他社と違い,なかなか遊び心が豊かな会社のようです。80年代中頃の名機M1を頂点とする「優等生」なコルグ以前には,MS-10やPS-3100,MONOPOLYやPOLY-SIXといったやんちゃなコルグがあったわけですが,今世紀に入ってからは再びやんちゃなコルグが戻ってきたかのような印象があり,そこがまたコルグという会社の好き嫌いを分けているように思います。

 私はダンスミュージックやDJを自らのフィールドとしている人ではないので,この種のイクイップメンツにはとんと疎いのですが,どうもKAOSS-PADが先にあるようなんですね。これはサンプラーとかエフェクターをタッチパッドで操作するというもので,複雑な装置を操作する,訓練の必要な楽器演奏をマスターする,という敷居の高さを解決し,同時に直感的な操作と偶然性に期待をするという,一石二鳥なものらしいです。

 これはこれで1つのジャンルとなっているようですが,このユーザーインターフェースをシンセサイザーに応用したのがKAOSSILATOR,なんでしょうね。(ひょっとしたらタッチパッドを搭載した普通のシンセサイザーがすでに存在していて,それを切り出したものなのかも知れませんが,正直なところ私にはわかりません)

 それはともかく,ニッチな商品であることには違いがないのですが,このKAOSSILATOR,昨年末に登場して以来品薄で,なかなか手に入らないようなのです。

 まず,非常に面白いこと。そしてその面白さがあちこちのblogに取り上げられ,さらにはITmediaやImpressのサイトに取り上げられて,どんどん人気が出て行った感じです。

 極めつけが日経エレクトロニクスのユーザーインターフェースの特集でどどーんと紹介されたこと。普段電子楽器やDJに興味のないエンジニアやその上司の皆さんにまで知れ渡るに至り,とりあえず「なんだかわからんがすごいらしい」と評判になっているようです。

 価格は2万円と,この種の楽器としては安いのか高いのかわからん微妙なところです。シンセサイザーといえばもっと高価な物と思われがちですが,実際の所5,6万円でも十分ステージプレイに耐えられるものがあるわけですし,その大きさや鍵盤のコストを考えると,KAOSSILATORの2万円は,私としては高いなあという印象です。

 とはいえ,この手の物は買って試すしかありません。面白そうに思えても,コルグの製品には近寄りがたい物が常にあり,こんなことでもないとなかなか購入にまで至らないものなので,探してみることにしました。

 しかし,やっぱりないんですね,どこも在庫が。1月に予約しても3月になるとか,そんな状態だったのでほとんど忘れていたんですが,先日の木曜日,偶然アキバのヨドバシのガラスケースに収まっているのを発見して,衝動買いしてしまいました。

 「帰りの電車で乗り過ごした」などと評判なKAOSSILATORですので,中毒性があるのだろうと覚悟を決めて,帰宅してから電源を入れてみます。

 そして30分後に出来たのが,これです。

ファイル 183-1.mp3

 まったく初めて触る人間が30分でここまで出来るわけですから,確かに面白いといえば面白いです。もっとうまく作ることが出来る人はいくらでもいるでしょう。

 それで,このお休みにいろいろ触ってみた感想ですが,結論だけ言えば,これはそれほどおもしろいもんでもない,という感じです。

・あまりにチャチ
 ダンスミュージックやDJの人々はこれがいいというのかも知れませんが,私は2万円もする製品でこんなにチャチで質感のないものが日本の店頭に並ぶとは思っても見ませんでした。
 電池ブタに隙間があるとか,RCAピンジャックが曲がって付いているとか,工業製品としてすでに破綻しているとしか思えません。9800円がいいところ,NintendoDSなんかと比較すると,5800円でもいいかなと思うほどです。

・割り切りすぎ
 コルグの人もいろいろいってますが,はっきりいって割り切りすぎです。2小節しか録音できないレコーダー,3桁の7セグメントLEDが表示のすべて,紙っぺら1枚の説明書,そして激しいノイズと薄い音。ユーザーインターフェースが売りの商品なのに,演奏以外のユーザーインターフェースが絶望的にわかりにくく,音にこだわったといいつつオーディオ機器の水準すら満たしていない作りの甘さには,非常にがっかりしました。

・電池がすぐになくなる
 単3電池4本で5時間という電池寿命を長いと見るか短いと見るかは人それぞれですが,底面がほんのり暖かいというのは,この手の機器には許されないんではないかと思います。しっかり低消費電力設計をやらんかい。

・曲を保存できない
 作った曲を保存できません。電源を切るとあっさり消えてしまいます。2小節のレコーダーですので,作ってるときはグルグル頭の中を回ってるわけですよ,曲が。でも,しばらくすると忘れてしまい,何だっけなあと気になって聞き返したくなるものです。しかし電源を切った後ではそうも行かず,「失ってわかる」ある種のフラストレーションに悶々とするのです。SDカードスロットを付ける,不揮発メモリに残しておく,くらいのことは出来たんではないかと思います。

・設定も消える
 不揮発メモリやSRAMが安い昨今,せめて設定くらいは残しておいて欲しかったです。

・MIDIが壊滅
 実際,MIDIで他と繋がる仕組みにかかるお金は大したことないのですが,ここも割り切ったんでしょうね。個人的には,音源としては使い物にならないのでMIDI-INはいりませんが,インターフェースとしてのタッチパッドが他の音源を操作できたら面白いと思うので,MIDI-OUTだけあればいいと思いました。

・アルペジエータが絶望的
 普通アルペジエータといえば,分散和音を作る装置を言いますわね。和音を押さえればそれが時間的にずれて発音されることを期待するわけですが,このアルペジエータはゲートアルペジエータと言うだけあって,和音ではなく単一の音が時間的に細切れにされて発音されるだけです。まあ,正直これでは使う気にはなりません。

・シーケンサと違うがな
 誰もシーケンサとはいってないのですが,テンポを変更しても,録音済みのトラックには反映されません。これにはつくづくがっかりしました。

・パッドの精度がさっぱり
 後述しますが,KAOSSILATORはタッチパッドという無限音階の入力インターフェースにスケールを実装し,指でなぞればそのスケールで音を出してくれるというありがたい機能が最大の売りです。しかしそのパッドの精度が今ひとつで,慣れもあるんでしょうがなかなか思い通りにはなってくれません。

・やりたいことができない
 例えば,こんな感じの曲を作ろう,という感じで頭の中でなってる曲があるとします。しかしKAOSSILATORに入っている素材は必ずしもそれを再現できる材料にはなりません。

・コードが蚊帳の外
 これがもう致命的。リズムとスケールが機械任せに出来るメリットがここまでシンセサイザーを面白くしたのに,コードに関しては全くケアされていないのです。まあ,ここにコードを扱えるようにしてしまうと途端に難易度が上がってしまうこともわかりますし,それがDJやダンスミュージックに必要とされていないこともなんとなくわかりますが,ここでコードチェンジをしたい,とか,こういうコードを使っていこうとか考え及ぶ人にとって,猛烈なフラストレーションがたまります。


 とまあ書き並べましたが,おそらくこれだけ人気の出た機種ですので,続編があるでしょう。KAOSSILATOR2では特にコードとアルペジエータに関して強化されることを期待したいです。この際素材が云々は,ダンスミュージックのツールと割り切っているので贅沢は言いません。

 なにせ,KAOSSILATORの優れたところは,タッチパッドを入力デバイスにするために,スケールを割り当てて無段階に音が変化しないようにしてあることです。これは確かに新しい楽器の出現といっていいかもしれません。

 本来無段階に変化する弦楽器にフレットを取り付けてスケールを割り当てることで,ギターは和音の演奏が楽になったり初心者でも取っつきやすくなったりしたわけです。鍵盤楽器などは最初から無段階に音を変化させることが出来ませんから,最初から何らかのスケールに沿って音が区切られています。

 ただ,この楽器のスケールは最大公約数的なものであり,1オクターブに存在する12の音からいくつかを選んで演奏する必要があるわけです。演奏に使うスケールを体と頭で覚えることでとりあえず外さないソロを取ることが可能になりますが,なかなかそれが難しいものです。

 KAOSSILATORのすごいところは,誰でもなぞれるタッチパッドに覚えることが難しい多彩なスケールを割り当て,とりあえずぐりぐりパッドをいじるだけで,外さないソロが演奏できてしまうことにあります。

 さらに横方向に音の高低と,縦方向にエフェクトや音色の変化を割り当ててあるので,指先1つで複雑な操作を(自由にというにはほど遠いが)したのと同じに出来るのです。同じ事をキーボードでやったりギターでやるのは,ちょっと大変だと思います。

 そして,これは音楽作成ツールではなく,ループを作る装置です。だから最大2小節しか録音できません。この2小節に半完成となっている素材を貼り付けて作り上げるのが,KAOSSILATORの醍醐味なんでしょうね。

 2小節しか録音できないことは,思わぬ利点を生みます。まず完成に持っていくのに時間がかからない。工夫をしようにも自ずと限界があるので,さっと遊べる気軽さがあります。

 しかも,どれも派手でキャッチーな音ばかり。パッドをいじって変化するバリエーションまで考えると,無数とも言える音が備わっていて,それらを一通り試す気も起きないほどです。

 こういうところから考えると,楽器の演奏が出来ない人でも,スケールの概念を理解できておらず,理解できていてもそれを楽器で演奏出来ない人でも,また複雑な機器の操作やPCの扱いを面倒と感じる人でも,さらにいうとダンスミュージックに関する抵抗を感じるような人でも,気軽に楽器演奏が楽しめるという絶対的な敷居の低さが,KAOSSILATORの最大の発明でしょう。

 そこにさらに偶然性を重ねて出来上がる物を第三者的に楽しむのもよし,万人にお勧めできるものではないと思いますが,まずは持っている人に使わせてもらって,自分のセンスにフィットするかどうかを試してみたらいかがかと思います。

 しかし,私もこれを使いこなせているとは到底思えません。きっと達人がいるんだろうなあ,この2小節をPCに取り込んで,DAWで加工しながら1曲のボリュームに仕上げるような人もいるんだろうなあと,そんな風に思ったりします。

 私は,もし機会があればですが,アンサンブルでソロをこいつで取れればなあと,そんな風に思います。

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