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1950年代から60年代の902回路を味わう

 6月と7月と続けて,誠文堂新光社から復刻になった「無線と實驗401回路集」と「無線と實驗501回路集」,私はオリジナルはみたことがなく,復刻を渇望していたわけでもないのですが,復刻されるにはそれ相応のニーズがあったということでしょうし,なにより熱い時代だった1950年代から60年代にかけての電子回路技術に触れる絶好の機会と,両方とも買いました。


・無線と實驗401回路集 復刻版

 まだ「無線と實驗」よ呼ばれていた頃に別冊として出ていた回路図集です。1950年代ということですので,デバイスなら真空管の回路が全盛,製品としてはテレビ(もちろん白黒)のキットが出始めたころではないかと思います。

 誠文堂新光社は,割とこの手の回路集をちょくちょく出していたようで,私も電子展望別冊の301回路集と333回路集は見たことがあります。

 私は,回路図を見るのが大好きなのですが,こうした古い回路図をまとめて見る機会が得られたことは非常に楽しくありがたいことですし,また当時は便利な実用書として誕生したはずのこの本が,復刊の段階でアーカイブとしての機能も期待されている事実が,非常に興味深いです。

 実際に登場する回路が今使えるのかと問われれば,ほとんどだめでしょう。そんな中で,ラジオ受信機の発展の歴史を回路図で追いかけるというページがあり,これは今も立派に通用すると思いました。

 ということで,この本を買ってなにか作ろうと思っても,何の役にも立たないでしょう。バーボン片手に楽しむのがおすすめです。


・無線と實驗501回路集 復刻版

 先の401回路集に遅れると約1ヶ月で復刻されたこの本は,401回路集に100回路追加したものではなく,全く新しい501回路を集めたものです。1960年代を中心とした回路が集められていますが,この本は実は1970年代初頭まで版を重ねて売られていました。ロングセラーには訳があり,これもやはりプロ向けの実用書だったということでしょう。

 401回路集とは違い,501回路集は1960年代ですから,真空管回路はもはや完成の域に達しており,半導体による回路が時代の先端を走り始めます。そして今でも時々目にするような回路に出くわすこともしばしばです。

 401回路集は娯楽であるのに,501回路は勉強になります。アナログ回路がある意味で頂点に達したと言える時代でもあるわけですから,ここから得られるヒントも多く,なるほど30年ほど前まで売られていたというのも分かる気がします。

 後半に出てくるテレビの回路図は,401回路集とは比べものにならないほど高度化し,いかにテレビが当時の先端産業であったのかを感じます。また,巻末にはRCAのカラーテレビの回路図が出ています。モノクロテレビとは比べものにならない複雑さ,巧みに組み合わされたアナログ回路の妙技を見ていると,これが当時のアメリカの実力だということと,当時の日本はこれをモノマネしていただけなのだ,ということを思い知ります。やがて日本に追い詰められたアメリカはテレビの製造から撤退しますが,その生まれはアメリカにあることを,我々は時々思い出す必要があると思います。

 こちらも,この本で何かを作るのは難しいでしょう。作り方を具体的に書いていないこともあるし,実はミスも結構あります。この本くらいになると酔っぱらって読むのは難しいので,寝る前にちょっとずつ読み進めるというのが,おすすめです。


 とまあ,こんな感じで,とても楽しく見せてもらいました。実用的に使えるかといえばどちらもNoでしょうし,資料的価値があるかと言われても,それほど大げさでもないように思います。

 ですが,誠文堂新光社はこの時代,電気電子関係の書籍を多く出しており,当時を知らない私も「おもしろい」と思える本があります。図書館などでたまに目にするとワクワクするのですが,そうした本が当時を知る人たちの懐古主義を直接のきっかけとして,もう一度世に出ることは,それらを初めて目にする私のような人たちにも新しい勉強のきっかけを与えるものかも知れず,歓迎されるべき事だと感じます。

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