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なにもしないのに腐っていく電池を許せるか

 ふとしたことから知ったのですが,私の使っているMacBookProとMacBookは,電池を抜いてACアダプタのみで使用するときは,CPUの処理能力が半分程度低下しているようです。

 以前から知られている事だったようですが,こないだ出た新しいMacBookやMacBookProでもこの仕様は引き継がれているようで,少しだけ話題になっているような感じです。

 恥ずかしながら私,この事実を知りませんでした。噂レベルの話だろうと思っていたら,なんとAppleのサポートページにもはっきりと「低下します」と書かれているんですね。

 理由は,ACアダプタのみでは電源の供給能力が不足し,突然落ちるからだそうで,それでクロックを落として消費電力を押さえているということです。裏を返すと,2.5GHzの最大パワーを得るにはACアダプタだけでは電源が足りず,不足分を電池から補っているということです。

 ACアダプタの容量不足を極めて後ろ向きな方法で回避したこの話,設計者に後ろめたさがあることを信じ,消費電力の下がった最新の機種では性能低下も少なくしてあるはずだと期待した私は,実際にベンチマークを取ってみたのです。

 すると,ACアダプタだけで動作させると,測ったように綺麗に半分になったスコアが出てきました。てことは,Core2Duoの1.25GHz相当ですか・・・

 私は今まで,電池を抜いて使っていましたが,なんかあんまり速くないなあ,iBookG4の1GHzのPowerPCG4と体感的にあんまり変わらないなあ,と思って使っていたのですが,それは実に正しいということになりました。なんたるバカさ加減!

 うーん,私も仕事柄こうした問題にぶち当たることはしばしばありますが,いくら何でもACアダプタが小さいせいでカタログスペックを満たさないことを胸張って言うだけの厚顔さは持ち合わせていませんし,常識的にACアダプタを大きなものに変更して対処すると思います。

 私に言わせれば,消費電力などというのは単純な足し算で,小学生でもできる計算です。確かに「普通の使い方で何時間駆動できるか」という平均電力を考察するのは数学的にも経験的にも難しいものがありますが,今回の問題は最大電力ですから,やはりワーストケースの足し算です。

 また,本体を駆動しつつ,余った電力は電池の充電に使うというのは当たり前の仕様であり,そういう点からもACアダプタは少々大きめのものを使っても不都合はありません。小さい方が今回のようなおかしな制約をお客さんに強要するので問題です。

 値段が上がる?確かにそうですね。ACアダプタは容量が大きくなると価格も高くなります。ただ,容量と価格が比例するわけでもなく,段階的に上がる性格のものですし,もっというと容量の大小よりも数が出ている品種であることが大きく影響します。

 しかし,MacBookProのACアダプタは85Wです。これで足りない事があるなんていうのは,どういうことかなあと思ってしまいます。今年の初め頃には,同じ85Wのアダプタが小型化しているので,以前の大きさなら100WクラスのACアダプタを用意できるのではないかと思ったりするのですが,そうなると随分値段も上がるんでしょうか。

 てことで,電池を入れて使ってみると,これまでのもっさり感がウソのよう。こちらの思考にしっかり付いてきてくれる軽快さにちょっとした感動があります。特にデジカメの画像の編集には圧倒的な差が出てきます。

 あーーーー,これまでのイライラはなんだったんだ!

 そもそもどうして電池を外すのよ,そんな奴おまえくらいやろ,と言われると思うので,一応専門家としての耳より情報を(言い訳と共に)お伝えしましょう。

 ノートPCの電池は一般的に1万円から2万円と高価です。そして電池で駆動することをしなくても,1年から2年もすると電池が劣化していることを皆さんも経験していると思いますが,これは浅い充放電を繰り返しているせいです。

 最近のノートPCは昔と違って,充電と放電の管理が賢くなっていますから,以前よりも劣化が進みにくくなっていますし,VAIOのように劣化を防ぐモードが別に用意されていたりしていますが,リチウムイオン2次電池というのは,電気エネルギーと化学エネルギーを相互に変換する一種のエネルギー変換システムですので,化学反応をさせないことが一番よいことに代わりはありません。

 よく考えて欲しいのは,そもそも電池をノートPCが必要としている理由はなんだ,ということです。そうですね,外に持ち出すから,あるいは電源のないところでも使いたいからです。

 では,持ち出さない人,電源のあるところで使う人は,電池の価値を享受できる人と言えるでしょうか。否,断じて否。

 まして,15インチや17インチのLCDを搭載した大きく重たい高速なノートPCを,電池で動かさなければならないような場所で使うことが「普通」なのかどうか。

 ただ机の上に置いて使っているノートPCの2万円相当分が,勝手に腐って消えてなくなるのです。

 もちろん,電池を散々使っている人は別ですよ。消耗品として2万円の投資が可能でしょう。でも,電池を使わない人も,ただ本体に取り付けているだけで電池が劣化していくというのは,やっぱもったいないです。

 UPSとして使える?なるほど,突然の停電でもマシンは落ちません。これはメリットの1つでしょう。しかし,UPSって2万円くらいで買えますよ。停電してから電源が切れて困るのは事実ですが,復旧するまで停電前と同じ作業がこなせないといけない,まるで医療現場や軍用マシンのような状況が,我々にあり得るのかどうかです。

 しかし,時には電源が確保出来ない場所で使いたい場合もあります。停電で作業が止まると困ることもあります。そういう特別なときこそ電池で動くノートPCの出番ですが,そういうときに限って,電池が劣化して使えなくなっていたりするのです。ろくに使いもせず,劣化した電池を2万円出して買い直しますか?

 実に許し難い。

 そこで私は考えました。電池を外して,充電と放電が起こらないようにしておけば,2万円という高価な部品を劣化させず,意味のあるときだけその価値を償却できる,と。

 そもそも,冷蔵庫は何のためにあるか。室温では劣化してしまう食べ物を,できるだけ長く保存しておくためです。不必要なときには使わず,必要なときに使えるように「需給バランス」を調整するわけです。なぜ,2万円もする高価な部品にそれが許されないのか?

 ここまで辛抱して読んで下さった皆さんは,もうすっかり私の理論の虜でしょう。

 では,その「夢」をかなえる秘策を,安心を添えてお教えしましょう。


(1)電池は外して保存せよ

 2次電池に限らず,およそ電池というのは化学反応によって電気エネルギーを得ています。電子の流れが電流ですから,電流を引っ張り出せばそれだけ化学反応が進みます。化学反応によって劣化した電池の中の部材は当然復活しませんから,電流を取り出さないことが一番良いのです。


(2)冷暗所にて保存せよ

 電池は化学反応によって充電と放電を行います。理科の実験を思い出して下さい。明るい場所より暗い場所の方が,熱いよりも冷たい方が,反応は緩やかでしたね。今回は反応をさせたくないのですから,冷暗所です。もっというと,明るさや温度,湿度などの環境条件が一定している場所がよいです。


(3)50%程度の充電で保存せよ

 電池に充電が行われるということはどういう事かといえば,それはエネルギーを電池に突っ込むという事です。エネルギーを突っ込まれた電池は当然,高エネルギーの状態になります。高エネルギーになっているということは,それだけ内部の部材を変化させやすい状態になっているということです。できるだけ低いエネルギーで保存する,これが原則です。


(4)使ってなくても電池は減る

 何度も繰り返しますが,電池は化学反応で電気エネルギーを取り出します。化学反応が完全に止められればよいのですが,世の中完全はありません。勝手に化学反応が進んで,電池が少しずつ減ります。これを自己放電といいます。
 また,リチウムイオン2次電池については,充放電の管理にマイコンを内蔵しています。こいつがわずかずつとはいえ電流を消費しています。

 
(5)過放電は厳禁

 ところで,もし放電が進んで,これ以上反応できない程になったらどうなるでしょうか。そう,中の部材が元も戻らなくなるほど変化してしまうのです。そうすると,もう充電はできません。
 こういう,放電しすぎの状態を過放電と言います。乾電池でも液漏れをするのは,過放電のせいです。
 さあ,もうおわかりですね。自己放電のせいで保存していても勝手に電池は放電します。もしこの状態で放置して過放電になったら,もうおしまいです。
 だから,保存時に50%程充電しておくこと,自己放電が少なくなるように冷暗所で保存することが必要なのです。
 また,半年に一度くらいは電池の残り容量を確かめて下さい。


(6)劣化は使えば必ず進む

 充放電のサイクル寿命が300回とか500回とか言われていますが,実際そんな回数を使ったことがある人は少ないんではないでしょうか。そもそも寿命は,充電できる容量が半分になったときを「寿命が尽きた」と定義してあります。3時間持つマシンが1.5時間しか持たなくなって初めて「寿命」と言われるのですが,それで困るかどうかは人それぞれです。
 また,この回数というのは,充電と放電のサイクルの回数です。しかし,劣化は回数ではなく化学反応によって起こります。回数なんてのは目安にもならない目安だということです。


(7)極端な環境に置くな

 何度も何度も言いますが,電池は化学反応です。なかの部材や薬品の組成が変わってしまうと反応しなくなります。例えば冷凍する,暑い部屋に置いておくなどはもってのほかで,湿気が多いところ(水分が入り込むと反応して膨らんだり発熱したりします)や他の薬品(例えば防虫剤やシンナーなど)が空気中に漂っていそうな場所も厳禁です。


(8)分解するな

 当たり前の事ですが,分解は絶対ダメです。なんといっても危険です。指の1つや2つ飛んでいっても知りませんよ。
 元素の周期表を見て下さい。H->He->Liと,リチウムは世の中で3番目に軽い物質で,金属では最も軽いものです。これを化学反応に使う電池がリチウムイオン2次電池なわけですから,重量密度(単位重量当たりの容量)が理論的に最強になることは中学生でも分かる理屈です。
 そういう,超高エネルギーな物体を,ペンチで挟んで分解するなど,まるで爆弾を踏んづけるようなものです。恐ろしくてたまりませんね。
 そんな危険なものが家庭に入り込んでいることを,我々は実はもっと憂慮すべきなのかも知れないです。


(9)セルの交換をするな

 そんな恐ろしいリチウムイオン2次電池は,きめ細やかな充放電管理と,万が一の場合の2重3重の安全機構を併用して,初めて実用化されました。いわば原子炉みたいなもんです。
 その仕組みは,一緒に組み合わされるセルに最適化されています。だからもし,セルを全然違うものに交換してしまったら,安全な充放電をしないばかりか,万が一の安全機構も働かず,爆発することもあり得ます。あんな高エネルギーなものが爆発するんですから,自分だけでは済まないかも知れませんよ。
 え,形が同じなら似たようなもんだろう?いやいや,なんて恐ろしいことを。
 形はあくまで形。中身の組成が違うと,特性がごろっと変わります。
 以前よりも容量の大きいセルへの交換なら安全だろう?いえいえ,むしろ危険です。理由は次に。


(10)電池の容量が増えているのはなぜだ

 数年前に比べ,セル当たりの容量は随分大きくなりました。でも,この容量ってなんだって,感じたことはありませんか。
 容量というのは,Ah(アンペア・アワー)という単位で書かれます。1Ahなら,1Aの電流を1時間流し続けることができますよ,という事なのですが,実はまだこれでは定義として不足しています。
 電池は,これ以上電圧が下がると破壊する,という下限の電圧が決まっています。先程の過放電というのは,この下限を下回った電圧で放電が起こる場合をいいます。
 電池は(しつこいですが)化学反応ですので,急に電圧が出てこなくなったりしません。内部抵抗が増加して,徐々に電圧が下がります。
 で,容量の定義です。1Ahなら,満充電から1Aの電流を引っ張り,下限の電圧に達するのが1時間後です,という意味になります。
 では,容量を増やすにはどうすればいいか。確かに中に蓄えるエネルギーを増やすことも大事なのですが,同じエネルギーでも下限電圧を引き下げれば,それだけ容量が増えますね。
 こうして,最近の電池は,下限電圧を以前のものに比べて低くしてあります。以前のものなら過放電になってしまうような電圧まで,使う事が出来るようになっているのです。
 しかし,いいことばかりではありません。多くの場合,そういう特性の電池を作ると,電圧の下がるカーブが急になる傾向があります。
 以前の電池が3.2Vを下限とし,最新の電池が2.9Vを下限としたとします。最新の電池は2.9Vまで使えば以前のものより高容量なのですが,かつての下限である3.2Vには早く到達するというわけです。
 さあ,これでもう分かったと思いますが,3.2Vを下限としていた充放電管理システムに,2.9V下限の電池を組み合わせたら,電池を使い切ることができないばかりか,使い切っていない電池を使い切ったと認識して充電をします。やばいですね。
 充電は通常,初期の定電流充電と,後半の定電圧充電の2段階で行われます。もし定電圧充電が必要な領域で低電流充電のが行われるようなことがあると,極めて危険です。


(11)丁寧に扱え

 これだけ高いエネルギーを小さな容積に押し込んでいるリチウムイオン2次電池ですから,ショートなんかおこると大変なことになります。万が一にも爆発しないように対策を取ってありますが,それでも爆発や発火が起こった事件はまだ記憶に新しいところです。
 一概には言えませんが,電池の内部の構造は結構複雑で精度が高く,衝撃が加わったりなにか力がかかったりして変形すると,そこがショートに繋がることがあります。踏んづけるはもちろんのこと,落とす,叩くなどももってのほかです。
 また,傷が付いたりすると,液が漏れたり水分が入り込んだりして,火を噴いたり破裂したりします。特にラミネート構造のリチウムポリマー電池などは,セルで扱うことがないようにしたいところです。


 てなわけで,私はこういうことを実践して,3年近くiBookG4の電池を新品同様の性能で維持しましたし,購入して6年半以上経過したVAIO U1の電池もまだまだばっちり使えています。

 D2Hの電池もほとんど新品同様ですし,電池の劣化が進むことが許せない,メリットのない2万円もの投資に辛抱ならない諸兄に,電池を外して使う事をオススメしたいところです。

 ところが,一番最初に書いたように,MacBookとMacBookProは,電池がないと処理能力が半分になります。

 半分の処理能力でも困ってないなら,消費電力も発熱も下がるので電池を外しておいてもよいのですが,最大パワーを得るために2年に一度2万円の投資を許せるということであれば,電池を付けっぱなしにするというのはありなのかも知れません。

 私?結局,予備の電池を買いましたよ。8000円ちょっとで純正品が買えたので,これで最大パワーを堪能します・・・

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