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SMC Takumar 28mm / F3.5

ファイル 257-1.jpg

 先日,近所の中古カメラ屋に行くと,「Sタクマー28mm/F3.5」と書かれた値札が目に入りました。

 驚いたのは,その程度の良さ。確かに30年以上前のレンズですので使用感はありますが,塗装の剥げもヤケもなく,傷もへこみも見あたりません。さらに,あの角形のメタルフードも付属しています。このフードが新品同様なのです。

 お値段は5800円。うむー,悩む値段です。

 私はすでにSMCタクマーの28mm/F3.5を持っています。相当程度の悪いカビ玉をジャンクで購入し,レンズをばらして磨いて,絞り羽根も分解して粘りを取り,ヘリコイドグリスを入れ替えて,さらに鏡筒は全塗装して使っていました。手間も苦労も厭ずにいられるだけの写りをこのレンズは持っており,意地になって探し手に入れた凹んだ角形フードと一緒に,M42レンズの定番として使っていました。

 別に不満もなく使っていましたが,目の前にある28mm/F3.5の程度の良さにはよだれが出そうです。

 しかし,値札には「Sタクマー」とあります。「SMCタクマー」ではないのです。

 28mm/F3.5に「Sタクマー」があったかどうかは忘れましたが,本当にSuperタクマーだとしたら,ちょっとこれは遠慮したいところです。ES2で開放測光が出来ないばかりか,マルチコーティングされていないレンズでは,おそらくあの28mm/F3.5の写りにはならないだろうと思うからです。

 まあ無駄遣いはしないでおこうかと思ったのですが,一応店員さんに見せてもらって,もし期待はしていないがもしもSMCタクマーなら買おうと考えました。

 はたして,それはSMCタクマーでした。

 しかも,想像以上の程度の良さ。私のレンズはやや黄色がかっているのですが,このレンズは吸い込まれそうな青緑の光りを反射しています。大事に保存されていたんでしょうね。ヘリコイドも適度な堅さですし,絞り羽根も素早く動いてくれます。

 大きな傷もホコリも,もちろんカビもその時は見つからなかったので,迷わず買うことにしました。

 うきうきして自宅に戻り,細かいところを眺めてみたのですが,後玉に白い点が1つあります。最初に見たとき見つからなかったのでゴミだろうと考え,コンコンと叩いたりしたのですが全然動きません。結構大きな点なので放っておくのも気になり,後玉の裏側のようでしたから,さっと分解して取り除くことにしました。

 ところがこれが失敗の始まりだったのです。

 金属の枠をゆるめ,レンズを鏡筒から外すのですが,あまりにぴったり入っており,レンズサッカー吸い付けてもなかなか外すことが出来ません。

 仕方がないので,レンズの縁を少しずつとがったものでこじり,わずかずつ外していきます。いよいよ外れた時にレンズサッカーに吸い付け,裏返して綿棒で拭ってみます。

 ・・・とれない。ホコリではなかったようです。傷?拭っても取れないのだから傷でしょうが,それにしてもどうして裏側にこんな大きな傷が付いているんでしょう。

 事件はその時起きました。サッカーからポロっと外れて,机の上にレンズが転がったのです。

 大慌てでレンズを拾い上げましたが,私は落ちた時の衝撃で縁が欠けてしまったことを知ることになります。もう真っ青です。

 いやいや,多少の欠けなら,レンズを押さえる金属枠で隠れるし,それにフィルム面に届く光がこんな外側ギリギリの所を通るはずがないので,実用上問題ないよ,と平静を装って組み立てることにしました。

 残念な事に,組み立ててみると欠けた部分がかなり大きく,入射角によってはキラキラと輝くこともあります。確かに直接フィルムに届く光線はこの欠けを通らないかも知れませんが,別の角度からやってくる光線が派手に反射し,ゴーストやフレアが出る可能性は大いにあるでしょう。

 この時すでに夜中の3時過ぎ。かなり疲れながら,点光源(LED読書灯)を用意して,乱反射によるゴーストが起きていないか捜します。

 そうすると,ある条件で画面の上から下まで,ど真ん中に一本線がすぱーっと出ることがありました。レンズを回すとその線の傾きも変わります。

 特殊な条件ならいいかと思っていたら,普通に撮影する条件でも,やっぱり出ています。これはもうレンズとしては使い物になりません。

 やってしまいました・・・

 新品なら買い直せばよいでしょう。しかしこれは中古。それも遙か昔に生産を終えたものです。それほど貴重なものではないかも知れませんが,こういうクラシカルなものを集めている人間は,自分だけのことを考えるのではなく,文化財を代表して保護しているという気概を持たねばなりません。(おおげさですが)

 私はカメラファン失格だ・・・そんな風にうなだれながら,なんとか手を考えました。

 1つは,乱反射を防げばいいので,欠けたところを黒い塗料で塗ってしまうことです。これは随分状況を改善したのですが,それでも実レベルにはほど遠い縦線が出てきます。

 やむを得ません。私が元々持っていた28mm/F3.5から移植しましょう。

 そもそもこの新しいレンズの後玉には,大きな白い傷がありました。もう1つのレンズから外した後玉はなかなか綺麗です。

 レンズには研磨の段階でバラツキがあるため,他のレンズをとうまく組み合わせてそのバラツキを相殺するように組み立てます。よって後玉だけ交換しても性能は確実に下がってしまうと思います。

 そうはいっても,使い物にならないのは話になりません。なんとしても寝る前に作業を終わらせようと頑張った結果,交換作業が終わったのが朝の5時。

 翌日に試写をする予定で眠りにつきました。

 翌朝,頭を冷やして考えてみたのですが,久々にレンズの分解を行った私は,大事な教えを忘れていたことに気が付きました。

 分解せずに済むなら,可能な限り分解しないこと。

 軽い気持ちで分解したら,それが取り返しのつかない結果を招いてしまいました。また初心者に後戻り,情けない限りです。

 試写の結果は,現像がまだですが,私の好きな28mmF3.5らしい写真が撮れていることを,祈っていたいと思います。

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