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新しい第一歩とKindleDX

  • 2010/07/12 18:41
  • カテゴリー:散財

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 久々にワクワクするガジェットを買いました。Amazon Kindle DXです。

 ご存じのように,KindleはアメリカのAmazon.comが販売する電子書籍端末です。薄く,軽く,持ち運びに便利で,高反射率,高コントラストの電子ペーパー「eInkディスプレイ」を搭載し,本を読むという行為に最適化された,単機能端末です。

 我々日本人はこうしたハードウェアそのものに目が行きがちですが,Kindleの本質は,携帯電話を内蔵し,24時間いつでもどこでも繋がっていることと,そして繋がっていることに費用が一切かからないことです。もちろん,この通信機能を使って本を購入すれば,それにはお金を支払わねばなりませんが,費用の発生は購入したときだけ,とにかく繋がっているだけでお金がかかるという心理的負担が一切ないのです。

 考えてみてください。送料がかかる,電車賃がかかる,という話になったとき,その本を気軽に買おうという気がするでしょうか。

 もちろん,本当に欲しい本なら送料がかかろうと電車賃がかかろうと,プレミアが付いていようと買うとは思います。しかし,雑誌やどこにでもある本を,そうして買おうとするでしょうか。

 逆の視点で考えてみると,入手の難しい部数の少ない書籍であっても,予約もせず,大きな本屋に行くこともなく,もちろん送料もかからず,24時間どこでも買えてすぐに手元にやってきたなら,その本をもっと気軽に,それこそ雑誌気分で読んでみようと思うのではないでしょうか。

 私の思う,Kindleの本質はここにあります。我々は本を読みたいのであって,本を買いたいわけではありません。もっとも,本屋さんはブラブラするだけで楽しい場所ですが,通販サイトであるamazonにはその楽しさはありません。だから,目的である「読書」に極力早く簡単に達することができれば,それが一番だといえるわけです。

 かつて,内外の電機メーカー数社から,似たような書籍端末が出ていました。しかし,本体だけで本を買うことは当然出来ず,PCとの接続が前提でした。ひどいものになるとレンタルだけで購入することすら出来ないという,本好きを愚弄するような事を平気でやってのけて,当然ながら見事に大失敗をこいた例すらありました。

 電子ペーパーと言われる新しいデバイスは,LCDのように1/60秒でリフレッシュされるようなディスプレイではありません。LCDがブラウン管の後継なら,電子ペーパーはプリンタと紙の後継です。

 しかし,書き換え可能な紙をプリンタで何度も何度もその場で印刷するような経験を我々はしたことがありません。加えて,低速デバイスの代表であるプリンタを,組み込みシステム上どうやって扱うのがふさわしいのか,そこが思案のしどころです。

 当時はパネルだけが存在する状態で,これを制御するLSIもなければ,動かすソフトも,動かし方の大枠を決める概念すらありません。

 決まったパターンを専用の装置を使って表示することは出来ても,組み込み用のマイコンで任意の画像を描く方法が存在せず,それをどうやって作り上げればいいかさえ誰も答えを持っていませんでした。

 いかにすぐれたデバイスでも,他と組み合わせて完成品にしなければ,広くお客様に使って頂くことはできません。そして完成品があまりに複雑であると,今度はお客様に提供する側の負担が大きく,結果として良い製品を作ることが出来なくなります。

 何もお手本がないところで物事をスタートさせるときには,こうして買って頂く方と,作る人たちの顔を思い描きながら,どちらもハッピーになるように,考えて作る事が求められると,私は思っています。

 見た目はLCDのようなディスプレイパネル,でもその本質は紙,もし理解を誤ってしまうと,この新しいディスプレイはお客様を失望させ,受け入れられる事無しに,姿を消すことになるでしょう。

 私の父は出版社の営業にいました。母は本屋さんで店員をしています。本は大好きで,本屋も大好きです。そして私は技術者になり,自分の力を大好きな本と本屋さんのために使うことが出来るはずと,そう考えていました。

 しかし,よくある「失敗」として処理され,私は本からも本屋からも必要のない人間だと宣言されるに至ります。

 Kindleの画面を見ると,なぜか暗雲の垂れ込めたような,今にも雨の降り出しそうな,複雑な気持ちになってしまいます。これはもう避けようのないことですね。

 閑話休題。

 そのKindleは,本を読む,本を買うということに特化した単機能端末であることは既に書きました。この点で何でも出来るマシン,例えばiPadなどとは全く性格を異にします。

 動画も音楽もゲームも満足に扱えませんが,文字を読むにはこれ以上のものはないと思われるほど視認性に優れたeInkディスプレイを持っています。私が選んだDXは,実に824x1200ピクセルという高精細なもので,その解像度は150dpiです。かつて日本の標準プリンタだったNECのPC-PR201などは160dpi,エプソンのVPシリーズで180dpiでしたし,プリンタと違って16階調のグレイスケールですので,うまくデータを作れば300dpi程度の視認性は持っているでしょう。

 カラーではなく,自発光でもありません。まさにモノクロの印刷がなされた紙です。書き換えには時間がかかり,しかも表示完了から時間が経過すると少しずつコントラストが落ちてしまい,白がグレーに寄ってきます。

 ちょうど,紙の悪い週刊誌や新聞という感じでしょう。しかし,紙と同じとは言いませんが,明らかにコンピュータとは異なる,間違いなく本を読むという体験を味わうことが出来ます。

 ここに,全世界で無料で接続可能なワイヤレス接続機能が付いていて,世界中どこからでも本を買うことが出来ることも前述の通りです。

 Kindleには初代のKindleの系統である小型版のKindle2と,大型化したKindle DXの2つがあり,それぞれにアメリカ国内版と国際版の2種類があります。初期のKindleは専用フォーマットのみが扱えたのですが,最近はPDFやMobipocketも扱う事が出来るようになりました。

 残念なことに,国際版でも購入はアメリカのamazon.comからでないとダメなのですが,手続きは簡単ですし,受け取ることも問題はありません。大した時代になったものです。

 7月7日,そのKindleDXにグラファイトと呼ばれる最新のモデルが加わりました。改良されたのは電子ペーパーの性能向上です。

 お値段は送料と関税をいれて約400ドル。円高ですので,35000円ほどで買える計算です。

 ずっとこの手の書籍端末を買おう買おうと思っていましたが,なかなか日本語に対応してくれず,国内販売も行われません。富士通から出てはいますが,あれもWindowsCEだったりして,今ひとつな感じです。

 iPadはやっぱり電子書籍端末ではないと私は思いますし,国内でも始まるであろう電子書籍ビジネスを待つのも,ちょっとどうかなと思っていました。

 それに私は,いわゆる「自炊」を初めて,もう3年になります。300GBを越える大量のPDFが,蔵書として揃っています。古いトラ技から新書・文庫,果てはコミックのたぐいまで,本を捨てられない本好きの私は,本を切り刻んでスキャンし捨てるという苦渋の選択によって,ようやく新しい本を買うことが可能な状態にあります。

 入力と蓄積は出来ています。あとは出力です。

 ここで紙に近いディスプレイを持つ電子書籍端末を揃えれば,このワークフローは完成します。

 そして,7月7日の新しいKindleDXの登場は,紙に変わる新しい出力先を提供するものとして,私の目に映りました。

 白より黒い方が好きでしたし,電子ペーパーはコントラストが命と思っている私は,もうくよくよしていても仕方がないと,思い切って買うことにしたのです。

 本体の大きさはおおよそB5のノートくらいです。厚みもノートくらいです。重さは結構あるのですが,薄くできているためハードカバーの文芸書を持ち歩くよりはずっと楽でしょう。

 なにもいいことがなかったという複雑な気持ちも手伝って,なかなか踏ん切りの付かなかった私は,amazon.comでぽちった後,大変に晴れやかな気持ちになりました。

 それでも持ち続けていたかすかな期待との完全なる決別,過去を踏み越えて進むことの気持ちよさ,そしてくだらないバイアスに惑わされることなく,手元に届く新しいガジェットを純粋に待ち焦がれる気持ち,数日そうした気分を味わいながら,7月6日に発送,翌日には日本に向けて飛び立ち,7月8日に成田に到着,当日中に配達されるも不在で受け取り損ね,そして7月10日に再配達という手順で,それは私の手元にやってきたのです。

ファイル 385-2.jpg

 ・・・長くなったので,続きは明日。

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