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HC-20の修理その1

 ついでに,EPSONのHC-20が壊れてしまった件についても書いておきましょう。

 HC-20を久々に引っ張り出したら,液晶が写真のようにガビガビになっていました。

ファイル 422-1.jpg

 LCDモジュール基板を外して撮影したものですが,表面の偏光板に斜め方向のひび割れが発生し,中央部が帯状に黒ずんでいます。これは明らかに偏光板の劣化です。交換すれば綺麗になるでしょう。

 HC-20のLCDモジュールを分解すると,LCD本体のガラス板の上に,偏光フィルムが貼り付けてあります。これを剥がして交換するわけですが,接着剤の劣化も激しく,なかなか綺麗に剥がれません。なんとかアルコールで拭き取り綺麗になりました。続いて裏側の偏光板も確認したところ,こちらの劣化はそれ程進んでおらず,このまま使う事が出来そうです。

 見た目には偏光板を交換するだけで綺麗になりましたが,テストをするのに電源を入れてみると,ピーという起動音はするのですが,そこから先,動作しません。

 壊れています。

 あわてて基板を見てみると,電解コンデンサの周りが変色し,粉を吹いています。どうも電解コンデンサが液漏れを起こしているようです。それも搭載されている電解コンデンサ全てが,粉を吹いています。全滅です。

 ひどいものは基板を腐食して,青いサビを浮かせています。事態はかなり深刻なようです。

 HC-20にはカスタムICなどはなく,強いて言えばマスクROMとサブCPUがHC-20専用部品であり,これ以外は全て汎用品です。回路図も手元にありますので,修理をしようと思えば可能です。

 しかし,私は80系の人。HC-20に搭載されているCPUはHD6301という,由緒正しき68系のCPUです。これでシステムを組んだ経験がない私にとっては,基礎から勉強し直しながらになります。

 とはいえ,マイコンシステムですので,電源,クロック,リセットの3つの神の手だけは,電解コンデンサを交換してから,先に確認をしておくことにします。

 まずリセット。リセットボタンを押すとリセット信号がちゃんと動いていますので,とりあえずこれはOK。次にクロック。HC-20はCPUに直接水晶発振子を接続し,クロックを得ています。メインCPUとサブCPUそれぞれにクロックがありますが,両方ともきちんと2.4MHzで発振しているので,これもOK。RTC用の32kHzは後日見ます。

 最後に電源です。HC-20の電源系統を調べて見ると,ちょっと首をかしげたくなるような部分が出てきました。

 HC-20にはNi-Cd電池が4本直列のパックが内蔵されています。定格では4.8Vの出力ですが,最大で6.0V,最低で4.0Vくらいまでの変動があります。

 ここで普通は安定化を行って,当時のマイコンシステムの標準である5.0Vを作るのですが,なんと安定化が入っていませんでした。しかも充電回路はACアダプタから抵抗1本が直列に入っているだけです。長時間充電すると電池が劣化すると説明書に書かれていましたが,その理由がやっと分かりました。恐ろしいことです。

 で,まずバッテリー直接の電源がVBです。これは前述の通り4.0Vから6.0Vまでの変動をします。電圧監視回路があるので,4.5Vを下回るとCPUに割り込みがかかります。

 次にVL。これは電源スイッチによって制御される電源です。電源スイッチからの信号であるVL_ONでVBに繋がったトランジスタをONして供給します。電源が供給されたら,後の制御はサブCPUにゆだねられます。電源スイッチの状態はメインCPUも知る事が出来ますし,変化すれば割り込みもかかりますが,VLを切断するのはサブCPUの仕事です。

 ところがこのVL,単にトランジスタでON/OFFするだけで安定化していません。回路図には5Vとありますが,実は電池電圧によって変動します。

 続いてVC。これはバックアップが行われる電源です。HC-20にはC-MOSのSRAMが16kByte内蔵されていますが,これを電源OFFの時にもバックアップする仕組みがあります。VBから生成され,VLがONの時は4.5Vが,OFFの時には3.0Vが,SRAMとその周辺のロジックICに供給されます。なんでこんなことをするかと言えば,C-MOSのSRAMのバックアップは3Vから行われるようになっており,5Vでは消費電流が増えてしまうので,わざわざ下げるのです。

 次にVLD。これはLCD駆動用の電源で,VLから作られます。VLによって動作するロジックICを使って発振させた波形を倍電圧整流して7Vを作っています。

 最後に+8Vと-8Vです。これはRS-232Cのドライバに供給されるもので,TL497を使ってVBから作られます。制御はRS-232Cを使う時にHighとなる信号があって,これで行われますが,とりあえずこれがおかしくなっても起動しないという現象は現れないでしょう。

 こんな感じで,電圧を測定してきます。VBは外部の安定化電源から与えますので5.0Vです。電圧監視回路の動作も確認しましたが,確かに4.5Vで信号が変化しています。問題なさそうですね。

 VLは電源スイッチがOFFの時は0V,電源スイッチがONになると5Vになります。これも一応正常です。

 次にVCです。電源OFFで3.5V。ちょっと高いです。電源ONにすると3.8V程度。あれ,5V付近まで上がってきません。これではSRAMが動作していない可能性があります。

 VLDは8Vくらいあります。+8Vと-8Vは未確認ですが,あとで見ましょう。

 というわけで,VCがおかしいので,これを修理すれば動くかも知れません。

 Q7という番号のトランジスタ,2SA1048というごく普通のPNPトランジスタによってVBがVCのラインに繋がります。Q7のベースにはVLを制御するVL_ONという信号が繋がっているので,VLが5Vになる時,Q7もONしてVCも5Vになるわけです。OFFのときには,別のトランジスタとツェナーダイオードによって作られた3VがVCの電圧になります。

 まず疑うのは,Q7の破損です。経験上,PNPトランジスタってのは,結構壊れるんですね。ところがこれは正常のようです。次にVL_ONがトランジスタのベースに入っているかどうかを確認すると,これが入っていません。

 ベース抵抗のR40の直後まではVLが来ていますので,ここからトランジスタへの配線が切れているのでしょう。線材で繋ぐと,VLにあわせて正しい電圧がVCに出るようになりました。

 これで直ったかと思われたのですが,相変わらず画面は真っ白。ピーという起動音も相変わらずで,見た目にはなんの進歩もありません。

 ただ,ここで考えないといけないのは,何故Q7のベースが切れていたのか,です。パターンが切れていたと言うことですから,その原因はもしや電解コンデンサの漏液かも知れません。だとするとかなり深刻で,そこらじゅうのパターンが切断されている可能性があります。いやぁぁぁぁぁぁぁ。

 そんなわけで,とりあえず電源まで確認したところで,心が折れて寝ました。

 ここから先は,どうやら本格的にロジックを見ていかないといけませんが,それにしてもこの広大な海のどこから手を付けるか,絞り込まなければ埒があきません。

 まず,起動音がピーと必ずなっています。スピーカーはサブCPUに繋がっていますので,リセット解除後にサブCPUが動作していることは間違いありません。ですので,故障はメインCPUの周辺にありそうです。

 LCDはうっすら黒くなって電源が入ったことを教えてくれています。LCDの表示はメインCPUの管轄ですので,メインCPUが動作していません。キーボードも受け付けませんので,これもメインCPUが動いていない証拠となります。

 では,メインCPUのバスはどうなっているでしょうか。Eクロックは約600Hzを出力していますので,一応動いてはいるようです。データバスもアドレスバスもバタバタと動いていますから,CPUはなにかをしようと,もがいています。

 ということは,メモリ関係ということになりそうです。HC-20は8個のSRAMと,3個のマスクROMがバスにぶら下がっています。しかもデータバスとアドレスバスの下位はマルチプレクスされているので,Dラッチである373をアドレスストローブ信号(AS)で動かして,データとアドレスの分離をしています。

 これだけ接続箇所があると,1つくらい切れていてもおかしくありません。これはもう丹念に1本ずつ接続を調べていくのが定石です。とにかくCPUはがむしゃらにもがいているのですから,これに応えてあげるのが先決です。

 なお,VCが正しい電圧を出すようになったことで,1つだけ見た目に改善したことがありました。これまで,電源スイッチをOFFにしてリセットボタンを押しても,VLが下がらず,動作し続けてしまうことが多かったのですが,VCが直ってからは確実に電源が切れるようになりました。

 VCの制御は確かにVL_ONで行われていますが,VC自身の電圧でも行われています。他の要因,例えば電源スイッチの状態やサブCPUからの制御信号,電圧検出器の出力などとはORになっているので,VCが完全に5Vになりきらないと,他がどれほど頑張ってVLを切ろうとしても,切れないようになっています。

 VCの電圧が正しくなったことで,VLは確実にOFFされるようになったのですが,このことは故障の内容と修理の結果による現象を,当たり前ですが正しく表現してくれています。少しは励みになったかな,という感じですね。

 さて,これからもコツコツと頑張っていきましょう。なにせ,HC-20には,エミュレータが存在せず,実機だけが動く存在なのですから。

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