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これまで見えなかったものが見える感激

  • 2011/09/12 17:24
  • カテゴリー:make:

ファイル 506-1.jpg

 夏休みの工作に作った歪率計&低歪み低周波発振器ですが,先日のお休みで完成としました。

(1)ノイズ対策
 アナログ回路でノイズ対策は大なり小なり必要なものですが,今回は信号の切り替えにせっかくリレーを使っているのに,そのリレーがシールドされていないため,指でリレーを触ると出力の値がパラパラと変化します。

 気分の物かもしれませんが,リン青銅板でリレーを覆って,シールドしました。全てのリレーを対策しましたが,案外リレーの発熱があって,リン青銅板のケースがほんのり暖かいです。

 このケースをしっかりとGNDに落とし,さらに鉄製の板を被せました。基板の半分ほどを覆うほどの鉄板でしたが,これで手をかざしても出力値が変わるという状況はほとんどなくなりました。最初から金属ケース入りのリレーを使えば良かったのかもしれません。


(2)値がレンジで異なる
 この歪率計は10%,1%,0.1%の3レンジを持っていますが,特に1kHzでは1%と0.1%で示される値が大きくずれています。1%の方がかなり小さく出るので,私はこちらを勝手に信用していましたが,どうして値が異なるのか,異なった場合どちらの値を信じるべきなのかに決着を着けないとまずいわけです。

 ふと思ったのですが,例えば0.0005%の歪み率の場合,1%では0.5mV,0.1%では5mVを示すことになります。なら,入力をGNDに落として0Vとした時,それぞれのレンジで本当に0Vとなってくれるのでしょうか。

 やってみると,なんと1%レンジは0.24mVを示しています。これが残留ノイズと考えると,この残留ノイズに対して十分大きな高調波でないと,信用出来ないということになります。そりゃそうですね,0.0005%の歪みなら,1%レンジで0.5mV,0.1%レンジでは5mVの出力です。どちらにも残留ノイズが0.24mVあるとしたら,どちらを信用出来るかなど,明らかです。

 ちなみに,TrueRMSのデジタルマルチメータDL2050ではレンジで異なる値を示していても,アナログの電子電圧計だとレンジに関係なく,どちらもだいたい0.0006%位を示してくれています。ノイズが2つの電圧計の値にどれくらいの差を作るのかは,スペアナを使って見てみないとよく分からないのですが,とりあえず0.1%レンジが信用出来るというのは正しい様に思います。

 これで,歪み率が一桁悪い100Hzと10kHzで,1%レンジと0.1%レンジで値が揃うことの理由もはっきりします。よって,回路の問題ではなく,1%レンジで測定出来る範囲を大きく下回る値だったというのが,正解です。

 ただ,これもシールドを行う対策を行ったから,残留ノイズを0.24mVまで減らすことが出来ました。


(3)低周波発振器の最終的な歪み率

 上記を踏まえ,低歪み低周波発振器の最終スペックを確定させました。

。発振周波数・・・100Hz,1kHz,10kHzの切り替え式
・周波数偏差・・・±0.2%以内
・出力電圧・・・約8.0Vrms
・歪み率・・・0.0005%(1kHz)
       0.0022%(10kHz)
       0.0031%(100Hz)

 1kHzの低歪みが光ってます。これはかなり満足な値です。10kHzや100Hzも決して悪い数字ではないと思いますが,これくらいなら普通に作れば達成出来てしまう数字ですし,1kHzとの差が大きいことも,ちょっと残念です。

 それと,私が使うという限定の回路ですので,特に100HzでのAGCの収束時間が10秒以上かかります。下手をすると30秒ほどかかることもあって,振幅が安定しないうちに測定を始めることがないように,気をつけなければなりません。

 ちなみに,VP-7201Aは1kHzで0.001%程度,10kHzと100Hzは同じくらいの値でした。メーカー品に勝利したと思うなかれ,VP-7201Aはこれを10Hzから500kHzの連続可変でやっているのですから,たいしたものです。

 そうそう,まともな検討をして訳ではないのであくまで参考に,ですが,スペック上はNJM4580Dよりも低歪みなLM4562に交換してみたところ,NJM4580Dよりもずっと悪い数字(倍近く悪い)が出てきました。

 それでも十分低歪みといえばそうですが,スペックを誇らしげに歌う最新世代OP-AMPで,それなりに高価なものだけに,この結果には拍子抜けすると共に,NJM4580DというJRCの実力の高さを思い知りました。

 まあ,発振器の歪み率は負荷のドライブ能力なんかにも影響があるので,NJM4580DとLM4652の単純比較は出来ませんが,安くて高性能でタフなNJM4580Dのバランスの良さには,感心しました。


(4)歪率計のクセ

 ここまで分かったところで,実際に歪率を測定してみることにしました。

 まず,気をつけないといけないことがあります。それは,発振器の出力レベル調整によって,発振器の歪み率が大きく変わってくるのです。単純なボリュームを使っているのですが,ここでそんなに大きく歪むとは考えられず,おそらくインピーダンスが変わることで,ノイズを拾うのではないかと思っています。ノイズは高調波ではありませんが,フィルタをすり抜けますので見た目の歪率を悪化させます。

 同じ事が,歪率計の入力レベル調整のボリュームでも起きているようです。

 フィルタをスルーさせた電圧を1Vrmsに調整してから,フィルタを通した高調波の値を測定すれば,その電圧の値がすぐ歪み率として直読出来るのですが,この1Vrmsにするためのボリュームを絞ると,歪率の値が随分悪化します。原因が同じかどうかわかりませんが,1Vrmsにするのは直読するという目的のためであり,あとで計算するという手間をかければ,別に何ボルトでもいいわけです。

 使い方の工夫として,出来るだけツマミの位置は半分を割らないように工夫をするということが大事です。大きな電圧を測定するときは出来るだけ内蔵の-20dBアッテネータを使用するのがよいようです。

 最後に,これはクセでもなんでもないのですが,この発振器と歪率計はGND基準で動くものですので,BTLのパワーアンプを接続すると,アンプの出力がショートしてしまいます。私はこれに気が付かず,うっかりHT82V739のアンプの歪み率を測定しようとして,出力が出てこないことにしばらく悩んでいました。1W位の小型アンプで良かったです。


(5)実測例1・真空管アンプ

 と言うことで,パワーアンプの実測例です。

 まず最初は,10年ほど前に自分でゼロから設計し,途中でNFBの帰還率を調整した,6V6シングルアンプの歪率です。きめの細かい,しなやかな音がするので気に入っていますし,6V6という小型出力管がなぜ今でも愛されるのか,よく分かったアンプでした。また,スクリーングリッドの電圧の設定と安定化が5極管の使い方のキモであると知ったのも,このアンプでした。

 出力が1W+1W程度の割には猛烈な発熱をするアンプで,私以外の人は怖がって使いませんが,本音を言うと私も怖いです・・・

 そのアンプの歪み率です。負荷は8Ωです。

・0.1W
0.232%(1kHz)
0.486%(100Hz)
0.224%(10kHz)

・0.5W
0.594%(1kHz)
1.49%(100Hz)
0.51%(10kHz)

・1W
1.03%(1kHz)
3.24%(100Hz)
0.71%(10kHz)

・1.5W
4.9%(1kHz)

 1.5Wの測定はちょっと怖いのと,1kHzで5%にもなっているので,100Hzと10kHzでの測定はしませんでした。これを見ると,1Wと1.5Wの間,おそらく1.2Wあたりで3%になっていると思われます。大体設計通りですね。

 そして,常用域である0.5Wくらいで,0.5%前後という値は,とても真空管アンプらしい値で,なるほどなあと思います。今回はリサージュを出しませんでしたので,偶数歪みか奇数歪みか確認していないのですが,まあこのくらいならいいんじゃないでしょうか。100Hzでの悪化が気になるところです。


(6)実測例2・MOS-FETパワーアンプ

 奥澤清吉先生の「はじめてつくるFETアンプ」に掲載されていた,40W+40Wのプリメインアンプを高校生の時に作った事は何度か書きましたが,あれから25年,一度も歪み率を測定したことがなかったのです。

 というか,ダミーロードを繋いで,最大出力も試したことがありません。

 今回,そんなことを考えながら,測定の準備をしていました。時間がなく,1KHzだけの測定になってしまったのが残念ですが,なにせアンプのセッティングを場所から長いケーブルを這わせて測定しましたので,なかなか手際が悪く時間がかかったのです。

 負荷は8Ω,Rchだけ測定しましたので,電源の負担は軽いはずです。これを2chで同時に行ったら,もっと値は悪化することでしょう。

・MOS-FET(1kHz)
0.1W 0.016%
0.5W 0.023%
1.0W 0.024%
3.0W 0.022%
5.0W 0.027%
10W 0.17%
20W 0.255%
30W 0.324%
40W 7.8%

 うむ,初めて値を取りましたが,悪くない数字ですね。5Wまでの値が0.03%以下ですので,常用域は変化が少ない,安定した性能を維持しているようです。

 一方で30Wまで0.3%程度と,これもかなり粘っています。30Wっていうとかなりでかい音ですよ。それで0.3%ですから,ちょっと安心しました。

 そして40Wになると,7.8%と急激に悪化します。さすがハードディストーションの半導体アンプだなと思いますが,これを見ると3%の歪み率は大体35W位になるような感じですから,まあ設計通りということになるでしょうか。

 本当は100Hzで低域のパワー感,10kHzで高域の純度の目安が分かるものなのですが,機会があればまた測定したいところです。


 ということで,歪率計が手に入ると,これまでどうやっても見えなかった領域の素性が見えるようになりました。うれしいですね,自作の測定器がこんな風に私の新しい目や耳になってくれるなんて。

 電圧や電流の測定は基本ですし,波形の確認も必須です。しかし,直線性が大事なリニアアンプにおいて,歪み率というのはとても大切な値です。しかしその値を測定するには,ノウハウも必要だし,高価な機材も必要です。私のように自作をすれば安くは出来ますが,膨大な手間がかかる上に,必ずしも実用レベルの物が完成するとは限りません。

 聴感上の良し悪しに感覚的に頼ることも否定しませんし,人間の耳はかなりの違いを聞き分けられるものですが,他との比較や経年変化などを評価する場合,やっぱり数値化できないとだめです。

 なかなか大変な工作でしたが,一応アンプの歪み率を測定出来るところまで来たことで,これにて終了です。

 今後のこの歪率計でしたいこと,ですが,まずは300Bシングルアンプと5998のプッシュプルアンプの歪み率を測定しておきたいです。

 そして,自作D-Aコンバータのポストフィルタに使っている,私が設計したディスクリートのOP-AMPの歪み率を見ておきたいと思います。これ,実は市販のモノリシックOP-AMPに気に入ったものが見当たらず,ディスクリートで設計した方がいい物を作れるとふんで,バラのトランジスタを使って設計したものです。聴感上,歪み率はかなり優秀と思っていましたが,測定しないうちに自慢するわけにもいきません。

 今回の工作は,従来のノウハウの積み重ね以上に,根気が要求されるものでした。部品点数の多さ,実装の工夫,基板配置や配線の引き回し,そして部品選びと,アナログの醍醐味を味わった,大作だったと思います。

 部品集めを始めてから3年以上が経過し,もう完成しないのではないかと内心思っていましたが,これだけの成果が出て,本当に良かったと思います。

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