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10MHzの基準クロック

  • 2011/09/14 17:34
  • カテゴリー:make:

ファイル 507-1.jpg

 もう20年近く前のことですが,その当時秋月電子のキットの定番,周波数カウンタキットのフラグシップであった,8桁周波数カウンタ2.4GHzプリスケーラ付き,を買って,さくっと作ったことがあります。

 当時の秋月電子で5000円を超えるキットというのは,結構手強いキットでした。その上貧乏学生にとって,この出費はちょっとしたチャレンジでした。

 キットの概要はICM7216BというインターシルのユニバーサルカウンタLSIが主役で,これにスタンレー製の高輝度7セグメントLEDが8桁で,その値段のほとんどを占めていたように思います。10MHzまではこのカウンタICで直接カウント,10MHzから2.4GHzまでは1024段のプリスケーラを通してカウントするという仕組みでした。

 10MHz以上の場合は表示を1024倍しないといけないことになり,これはかなり面倒という事から,このキットでは10MHzの源発振を1000/1024倍した9.765625MHzに切り替えるという工夫をしてありました。

 しかし,どちらも普通の水晶発振子を使っており,せっかくの8桁カウンタでも,その精度はせいぜい6桁から7桁ではなかったかと思います。

 当時から精度を上げるには源発振を高精度化するしかないと思っていましたが,安価に手に入るTCXOは12.8MHzでしたし,9.765625MHzに至っては手に入るかどうかすら怪しいものです。キットの説明書にあるように,そこそこ発熱するICM7216をオーブン代わりに水晶発振を安定させ,調整はテレビのカラーサブキャリアを使うという方法で完成させました。

 今にして思うと,当時の秋月のキットというのは難易度が高いとはいえ,素人の設備でもなんとか完成まで持って行けるように作ってあったんだなと思います。他のキットでも,最終的に手詰まりになることがなかったですからね。

 せっかく作った周波数カウンタでしたが,低周波の周波数はオシロスコープで測定するようになりました(2465Aは300MHzあたりまで観測出来ますから)し,その後私はGHz帯域の高周波など全く手がけなくなりましたから,結局ほとんど出番がないまま20年が経ちました。

 ところが先日手に入れたマルチメータの周波数カウンタ機能が案外便利だったのです。ただ残念な事にこの機能が1MHzくらいまでしか使えないため,少なくとも10MHzくらいまでは測定出来る環境が欲しいと,この周波数カウンタキットを使えるようにする方法を考えるようになりました。

 当時の鉄製のケースはもうボロボロですし,それはまあ作り直すこととして,問題は精度です。アナログテレビ放送が終了したこともあって高精度な周波数が手に入れにくくなっている昨今,どうにか10MHzの高精度発振器を手に入れたいなあと思っていた所,なかなかいい方法がありません。

 幸い,手持ちに20年ほど前に秋月で買った12.8MHzのTCXOがあまっていて,これを使って10MHzを使えるようにする方法を考えていたところ,google先生は偉大な先輩の製作例を探し出してくれました。

 12.8MHzを1/128し100kHzを作りこれを基準とし,10MHzのVCO出力は1/100して,100kHzがロックするようにPLLを作っている例でした。PDにはTC5081という80年代の定番を使っています。ぱっと見るととても簡単な回路です。

 しかし,面白い工夫があります。VCOの可変範囲が広いと,ロックした後でもジッタが多く,とても周波数カウンタの源発振には使えないそうで,水晶発振回路にバリキャップを付けて,狭い範囲で周波数が可変するようなVCOを採用しています。

 もともと,10MHz固定で周波数の可変をしないPLLですので,VCOの可変幅は大きい必要はなく,ジッタ軽減のために狭い範囲で可変するという方法は理にかなっています。そしてループフィルタのカットオフを10Hzと極端に下げ,位相余裕の十分な確保と,100KHzのカットを行っています。なるほど,こういう設計もあるのかとPLL初心者の私は感心したわけですが,その代わりロックアップにかかる時間は長くかかることになります。

 周波数を可変するシンセサイザではないのでロックアップが遅いことはそれほど問題にならず,またアマチュアが使うものですので,なにを重視するのか,という設計の目標の結果であると理解すると,なるほどと頷けます。

 部品点数も少なく,実用的な価値もあり,経験値も稼げますので,是非作ってみたくなりました。早速サトー電気に部品を注文です。

 TC5081はさすがに古いICで,もうとっくの昔にディスコンになっています。スタンダードCMOSと同じようなプロセスで作られているので,果たしてこの遅いPDが,どれほどの性能を持っているのか私にはわかりません。

 ふと思ったのは,PLLの定番である4046は使えないのか,と言う事です。VCOは使わないとして,PDくらいは使えそうでしたが,PLLの素人がいきなり応用をやってしまうと失敗するので,まずは実績ある回路できちんと作る事にします。

 これで正確な10MHzが得られるとよいのですが,なにせ20年前のTCXOを使いますので,温度特性は別にしても,絶対値が狂っているかも知れません。どっかで確認しないといけません。

 仮にこれが正確だったとして,次に問題となるのはプリスケーラを使った場合の源発振である9.765625MHzが問題です。これはもう,10MHzの源発振で9.765625MHzを調整するしかありません。


 さて,揃った部品を数えてみると,案外少ないなと印象です。小さく作りたいので出来るだけチップ部品を使って組み立てます。

 最初,バリキャップ周辺の配線が間違っていたのですが,修正をすると一応100kHzでPLLがかかってくれているようです。

 問題だなと思った事がいくつかあり,まず秋月で25年も前に買ったTCXOの12.8MHzが全く信用出来ないということ(仮に1ppm/年として,25ppmずれているわけですから,そこら辺の水晶発振器と同じくらいのズレになってるわけですよ)が最大の問題です。

 これは,高精度の測定器を使ってTCXOの調整をするしか方法がありません。

 次に,PLLの収束時間が結構長く,数秒かかるということです。もちろん,数秒たてば安定してくれますが,それもオシロスコープで見た限りの話です。8桁の周波数カウンタの基準クロックとしてふさわしい物かどうかは,ちょっと怪しいです。その分,ジッタは少ないのでしょうが。

 最後に,PLLのロックを示す端子の動作が期待はずれだったことです。PLLがロックしたらLEDが点灯するように,TC5081のPhaseOut端子を使ってみたのですが,ロックしたらHighになると言うより,ロックが外れてもLowにならず,いわばLowになる時間が長くなっているだけですので,LEDがちょっと薄暗くなるという感じです。

 これではロックしたかどうかなんて,わかりません。せめて,完全にロックが外れたときにLEDが消えて欲しいのですが,今ひとつです。

 ということで,さっと組み立てが終わっても,今ひとつ完成に持っていくことが出来なかった私は,今ひとつ達成感を感じることなく,休日を過ごしたのでした。

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