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逆ポーランド電卓はWP34Sを常用することに決定

  • 2013/01/28 15:11
  • カテゴリー:散財

 HP20bという逆ポーランド記法の電卓を3500円で買ったのが2010年11月。すでに2年以上の時間が経過しているのですが,まともな活用法もないまま,引き出しにしまい込まれておりました。逆ポーランド記法であるということは最大の特徴ですが,もともと金融用の電卓なので,科学技術用の計算には向かず,使い道がないという状況だったのです。

 以前書きましたが,このHP20bはHPという大手メーカーの電卓なのに,回路図もファームウェアも公開されていて,ATMELのARM7コアのSoCを使ったプラットフォームとしては破格の存在でした。しかしこれに挑む勇者は数少なく,大して盛り上がらないうちに下火になってしまったように思います。

 ですが,1つだけ特筆すべき物があります。WP34sというプロジェクトです。

 これは,HP20bとその上位機種であるHP30bのファームを,科学技術計算向けのオリジナルなものに書き換えてしまおうという大したプロジェクトなわけですが,その結果得られる電卓というのがまた素晴らしく,HP42s相当の基本科学技術計算,HP16Cばりの2,8,10,16の基数変換,数学関数や統計関数,単位変換の追加が行われており,普段使いではHP35sを越える使い心地です。特に電気設計者には手厚い配慮がある感じがします。

 しかも,オプションの32kHzのクリスタルを取り付ければRTCが常に時刻を刻みます。これを生かしたストップウォッチも実装されています。

 WP34sを知ったのが昨年の今頃で,書き換えをしようかといろいろ画策していましたが,バタバタして結局取り組む機会を逸していました。しかし,当時まだまだ不安定だったVersion3が安定してきたという事もあり,1月12日からの連休に意を決して挑戦することにしました。

 細かい事を書くのは面倒なので省略しますが,新しいファームを書き込むのが大変でした。元々のファームはERASEしてしまったので,もう電卓として機能しませんし,書き込みツールであるMySambaでは本体に接続してくれないので,新しいファームを書くことも,古いファームに戻すことも出来ない状態に陥り,一時は完全にゴミになるところでした。

 あれこれ試行錯誤を行って,ATMELが配布するSAM-BAを使って書き込みが出来たときには,久々にガッツポーズでしたよ,ホント大変でした。

 書き込みを済ませ,動き出したWP34sの使い心地は素晴らしく,気が付いたら逆ポーランド記法を難なく使いこなしている私がいました。特にdBへの変換が一発で出来たりするのが,とても便利です。

 バグもちらちらあって,計算結果に誤りがあったりするそうですが,複素数や行列の特定の条件で発生するそうですので,当面は問題ないでしょう。

 速度も比較的速く,今のところ「アレが出来ればいいのになあ」という残念な印象を持つ事はありませんでした。いやはや,良く出来ています。

 そうなってくると欲しいのはオーバーレイです。

 HP20bに比べてWP34sのキーアサインは大幅に変わっているので,そのままでは使いにくくて仕方がありません。そこで本体やキーに張り付けるオーバーレイが用意されています。

 プリンタで印刷して張り付けるのも手ですが,良い品質の完成品が6ドルで販売されているのでこれを使う人も多いようです。

 私の場合,まずは印刷したものを張り付けてみました。配布されている画像ファイルを600dpiで印刷するとぴったりなサイズになるようで,これをステッカー用の印刷用紙に印刷します。

 キーの部分はくりぬいて張り付けるのですが,これがまた大変な作業でした。

 散々手間をかけた割には,見た目も悪く,大失敗。ないよりマシ,と言う程度の仕上がりに私もがっかりです。

 不細工でもとりあえず張り付けたオーバーレイによってちょっと触ってみたところ,想像以上の良さでした。これはビビビときますね。

 このままでは惜しい。実に惜しい。

 観念してオーバーレイを買うという手もありますし,作り直そうという気もします。どうしたものか・・・と悩んだのですが,どう考えても有償で配布されているオーバーレイには勝てないと悟り,予備も含めて2枚注文しました。

 さあ,ここまで来るともう止まりません。

 家と会社で便利に使いたいと思った瞬間,もう1台欲しいと思ったわけですが,先日HP20bとHP30bは国内の在庫が払拭していることを確認済みで,こうなるとアメリカのamazon.comあたりから買うしかありません。

 28ドル程度ですので,送料までいれて日本円で5000円までなら即買い,と決めてHP30bを探してみると,あろうことか日本のamazonの在庫が復活,価格は計ったように4900円でした。

 そして,これを眺めてしばし,腕を組んで考え込みます。

 HP30bはキーの感触も良いそうだし,高級感が高いそうです。これが主力機になることは目に見えていますが,そうなった場合に,壊れたらどうしよう・・・代わりはないし・・・ええい,もう1台追加だ。

 ということで,2台買いました。なんということか・・・

 それでもですね,2台で9800円です。

 WP34sは抵抗の並列(コンデンサの直列でもいいんですが)の値を求める計算をメニューに押し込むようなことはせず,貴重なキーにアサインしてあるくらい,電気屋さんとって便利になっています。

 余談ですが,dBの計算や抵抗の並列の値などは,別にちょこっとプログラムを組めば済む事で,試しにHP-15C LEでプログラムを組んでキー一発で呼び出せるようにラベルを割り当てたら,とても快適な使い心地になりました。よく使う機能がぱっと呼び出せるかどうかは,とても大事な事だとわかります。

 聞くところによれば今のキーアサインには反対意見もあるそうですが,かたくなに専用キーに割り当てられている状況をみるに,どうもWP34sの開発者は電気屋さんなんじゃないかと思います。

 こんな電卓,どこにも売ってません。ゆえに壊れたりなくしたりしたときにダメージは大きいと予想され,「あああのときもう一台買っておけば良かった」などと後悔するくらいなら,「2台も買うことなかったなあ」と後悔するほうがよっぽどよいように思えてきました。と,自らの行為を正当化しておきましょう。

 オーバーレイを3枚買わなかったことを今さら悔やむわけですが,まあ1台は予備機ですし,いざというときに部品の移植が出来ればそれでいいので,オーバーレイは2枚でもなんとかなります。

 さらに,せっかくですから最新のファームを用意しましょう。先日のHP20bでは正式公開版のV3.1build3311を書き込みました。昨年11月の公開です。

 開発中のバージョンを見ていると,すでにV3.2になっているようで,1月23日現在の最新版はV3.2build3360ですので,これをダウンロード,手に入れたHP30bに書き込みを行います。

 一度WP34Sを書き込むと,以後はデバッグモードに入ることによって,少しは簡単に書き込みができるようになりました。Dを押しながら電源を入れ,ONキーを押しながらSを押し,もう一度Sを押すと,Samba Bootモードに入ります。ここでMySambaを使えば,わずか24秒で書き換え完了です。

  32kHzのクリスタルと18pFのコンデンサの取り付けも終わって動作の確認を一通り行った後で,オーバーレイを張り付けていきます。

 2台のHP30bと1台のHP20bの書き換えが終了,ほぼ同時に届いた2枚のオーバーレイはそのまま2台のHP30bに貼り付け,HP20bについてはもう一度プリンタで印刷して,綺麗に張り付けてみました。

 さすが専用のオーバーレイだけに,綺麗に張り付けられました。まるで市販品のような仕上がりです。

 自分で印刷した物は,全開と打って変わって綺麗に張り付けられたのですが,シールが分厚いらしくて曲がったところから剥がれてきます。これは残念です。もう少し薄いシールを探して貼り替える必要があるかもしれません。

 HP30bとHP20bを交互に使ってわかったのですが,違うのはキーの感触だけじゃないんですね。HP30bの液晶のコントラストはHP20bよりも高く,見やすいです。また液晶にカバー(風防と言います)が付いていますので,傷や破損にも強いです。

 キーのタッチは,HP30bの方が良いというのが一般論ですが,HP20bもそんなに悪いわけではないと思います。HP30bの方がチャタリングもあるし,押した感触はあっても入力されていないなどのトラブルがあって,どうも信用出来ないという印象もあります。

 そうこうしているうちに,カチッという感触がなくなってしまったキーが見つかりました。また,強く押すベキっと音がして,キーが壊れてしまいました。

 こうなるともう分解しかありません。戻せなくなる可能性もありますが,このまま置いておいても仕方がありませんので,分解します。

 HPの電卓はキーの下側が支点となり,上側だけが押し込まれるような特異な構造をしています。これが独特の押し心地を作っているのですが,HP30bのキーはこれを簡略化した構造で,すべてのキーが下側で枠にぶら下がったような構造になっています。

 このつながった部分がしなって,独特の反発力を作っているようなのですが,基板上にあるメタルドーム(ペコ板といいます)を押すために,キーの裏側から直径1mm程のピンが出ており,これがゴムのシートを介して,ペコ板を押し込むようになっています。

 今回の故障は,このピンが折れてしまっていたことでした。完全に折れてしまったのであれば復活は難しいのですが,曲がっているようでしたので,これを慎重に引き起こします。

 どうも,キーを強く押したことで曲がってしまったようなのですが,こういうのって日本のメーカーの品質基準だと,ちょっと出荷できないんじゃないかと思うくらい,やわな感じがします。2009年に発売になった電卓ですので,本来だったら改良されてしかるべきだと思うのですが,そうならないところに,おおらかさを感じます。

 予備機を買っておいて正解でした。

 一方で,HP20bはゴムのメンブレンの上にキートップが被さるような,よくある普通の構造です。押し心地は確かに良くないかもしれませんし,ストロークも大きく使いにくいのですが,丈夫そうと言うのは大きなメリットだと思います。

 この手の物って,機能とか値段とか(もしくは完全なる趣味性の高さとか),そういう文脈で語られることも多いのですが,結局最後には「もっと使っていたい」と思わせる吸引力が勝負です。

 それはボタンの感触かも知れませんし,ぱっと見た目の格好良さかも知れません。最終的には「好みの問題」で片付けられる要素でもあるわけですが,とはいえヒット商品というのはそれが大多数の人々に支持された結果であるのですから,軽く考えるわけにはいかない,重要な部分じゃないかと思います。

 そしてWP34sには,それがあると私は思います。

 キーや形状などのハードウェアデザインはHP20bやHP30bそのものですから,ソフトウェア(と強いて言えばオーバーレイ)がその使い心地を決めていますよね。HP20bもHP30bも,決してハードウェアとしては良く出来たものではなにもかかわらず,この心地よさですので,個人的にはよい勉強になりました。組み込みソフト屋さんには,もっと頑張ってもらわないといけません。

 ところで,HP20bをWP34Sにすることに始まり,HP30bを買って改造,HP15CLEも引っ張り出して使って見たり,HP35sを使ってみたりと,ここしばらくHPの電卓を触ってきましたが,それぞれに個性があるもので,全然使い心地が違います。入力方法が同じと言うだけで,もう別物だといっていいでしょう。

 確かにWP34Sは使いやすい多機能な電卓ですが,実はHP15CLEが一番使いやすいなと感じたりしています。ぱっと見るとキーも少ないし,7セグメントのLCDですので不便そうに思うのですが,良く出来ているので,ストレスなく入力出来ますし,表示も十分に寝られていて,これで困ることはありません。未だに愛用者が多いというのも,なるほど頷けます。

 HP15CLEはもったいないので常用しません。WP34Sをガンガン使う事にしましょう。

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