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GRのローパスレスは本当に正しい選択だったのか

 GRが手もとに来てしばらくたちました。レスポンスの良さ,画像の素晴らしさ,なによりレンズの素性の良さが,すっと手に馴染むサイズに詰め込まれているGRは,使っていて楽しいカメラです。一眼レフのストイックな感じとは違う,肩の力を抜いて向き合える面白さがあります。

 出てくる画像は,さすがにD800レベルとは言いませんが,K10Dのそれを簡単に越えるものであり,もはや一眼レフを選ぶ必要性さえ霞んでしまったと思うほどです。

 ですので,本気で紙に焼いて楽しむ事を前提とした,RAWからLightroom4で現像して印刷というワークフローに乗せたいと思っていますが,GRはまだLightroomで正式対応になっていません。

 先日公開されたAdobeCameraRaw8.1RC(ACR8.1RC)からGRのプロファイルを抜き出してLightroom4で使ってみましたが,撮って出しのJPEGとはちょっと色味に違いがあるとはいえ,埋め込みのプロファイルよりはずっと自然で好ましい結果になっています。正式対応までは,これでいこうと思います。

 あとはノイズです。ビックリした事が2つあり,1つはISO3200での使い物にならないほどのノイズの多さ,もう1つはノイズリダクションがかかっているはずの撮って出しのJPEGに無視できない程のノイズが乗っていることと,処理の不自然さです。

 特にJPEGのノイズはかなり残念で,暗部のノイズは縮小してもわかるレベルですし,等倍で確認すればノイズリダクションの不自然さもよく分かります。もはやこれだけでも撮って出しのJPEGは使い物にならないと思うくらいです。

 一方のRAWは,当然ノイズまみれです。しかしLightroom4のノイズリダクションを使えば,かなり自然にノイズを目立たなく出来ます。Lightroomはノイズ除去に定評がありますが,残ったノイズがかつての高感度フィルムのような自然な残りかたをするので,ノイズリダクションを必要最小限にすることができます。

 さて,GRをLightroomで処理する流れを確認している最中,撮影した遠景の柵に,ピンクと紫の偽色がバンバン出ていることに気が付きました。

 それまで,GRがローパスレスであることをほとんど意識しないでいたのですが,さすがにこれを見せられると,無視するわけにはいきません。

 これがRAWからLightroom4で現像して,JPEGにしたあと切り出したものです。切り出しのあと300%の拡大を行っています。偽色が派手に出ています。ローパスフィルタがないことで発生したモアレです。

ファイル 640-1.jpg

 次に撮って出しのJEPGから同じ部分を等倍で切り出したものです。RAWに比べるともやっとしていて,モアレは低減している分,解像度は低下しています。

ファイル 640-2.jpg

 そしてRAWをLightroom4で現像,モアレ低減を行ったあとJPEGにしたものです。解像度を保ったままモアレをほぼ消し去っています。

ファイル 640-3.jpg

 ローパスレスの影響は,周期的に繰り返される模様によって顕著になると思い込んでいた私は,こんな間隔の広い柵でも,偽色に気を遣って撮影しないといけなくなることに,ちょっと気が重くなりました。

 1600万画素くらいでローパスレスにする必要などない,が私の持論です。サンプリング周波数の半分のところから折り返して発生する折り返しノイズが混じってしまうと,もうどんなフィルタをつかっても完全には除去できません。だから,サンプリング周波数の半分より上の情報は,ローパスフィルタでカットしないといけません。

 ローパスレスのデジカメで発生するモアレや偽色は,要するにこの折り返しノイズですから,これを除去する方法はありません。目立たなくする方法はありますが,それはオリジナルの情報にも大きな影響を与えてしまいます。

 センサの画素ピッチが大きく,レンズの解像度が高い場合,折り返しノイズが発生するような高周波成分がセンサに届いてしまいます。だから,折り返しノイズが発生しないようにするには,ローパスフィルタで高域をカットするか,あるいはセンサの画素ピッチをもっと小さくしてサンプリング周波数をもっと高いところに持って行くしか,ありません。

 そもそも,センサの解像度が高くないのに,ローパスレスにしたところで,センサが吐き出す情報量そのものが向上するはずがありません。確かに,ローパスフィルタの特性は急峻ではないため,通過されるべき帯域の情報までカットされることがあり,それが解像感として知覚されることは否定しません。

 しかし,そうした解像感に何の意味があるかなと,私は思います。その解像感よりは,一度混じってしまうと,理論的に除去できない折り返しノイズを混入前に取り除く方が,はるかにメリットがあると思います。

 案外見落としがちなのは,ローパスフィルタにもいろいろあるということです。安物よりは高価なものの方が切れ味も良く,他の帯域の情報に影響を与えません。特性の良くないローパスフィルタは切れ味も悪いし,通過させた情報にも影響を与えるわけですから,それくらいならローパスレスにした方が良い場合もあるでしょう。

 オーディオで例えるなら,画像の拡大というは,高い周波数の音を低い周波数に変換して再生するようなもの,わかりやすく言えばテープをゆっくり回してスロー再生することです。スロー再生をして「高域が出ていない」と文句を言う人がいますか?あるいは,スロー再生のために高域成分を入れておこうと思う人がいますか?

 我々は普段,スロー再生で音楽を愉しみませんから,CDなどのデジタルオーディオでは必ず存在するローパスフィルタによる,高域の落ち方にあまり神経質にはなりません。

 デジカメの画像の場合,安易に画像の拡大ができたりするので,本来気にならない高域の落ち方が,気になる周波数帯域に出てくるので問題にされますが,やっぱり普段の写真の楽しみ方で考えると,そんなに細かい部分は見えないものです。

 ただし,オーディオにも写真にも共通することは,拡大しないと違いが分からないわけでは決してなく,「なんとなく透明感があるなあ」という感覚的なところで,その微妙な違いに気が付くことがあるとは思います。これは個人差もあるでしょうね。

 でも,それは高級なローパスフィルタに優れた記録装置,再生装置を使って実現されるべきものであり,安易にローパスフィルタを外してしまうことは,誤ったアプローチだと思います。5万円のCDプレイヤーのローパスフィルタを外してカットしても,決して100万円のCDプレイヤーにはならないのです。

 話が随分逸れてしまいました。GRの話に戻しましょう。

 GRで唯一気に入らないのが,このローパスレスです。1600万画素くらいでローパスレスにされてしまうと,特殊な条件でなくてもバンバン折り返しノイズが発生します。

 最近ローパスレスが主流になりつつあり,またその独特の解像感には人気が集まっていますが,こういう弊害があることをきちんと理解していない人も多いように思います。

 上の例のように,普通に撮影してこれだけ簡単に偽色が出るのですから,レンズの性能に対してセンサの性能が低い,つまりサンプリング周波数が低すぎるという事です。ズルをしたら駄目なのです。解像度が欲しければ,センサの解像度を上げるしか方法はないのです。

 GRくらいの性能のレンズなら,1600万画素ではローパスフィルタは必要です。2400万画素くらいならいらないかも知れませんが,撮影者の工夫では発生を抑えられない,つまり撮影者が折り返しノイズを発生させるような高周波成分が入ってこないように工夫するには,APS-Cで1600万画素のセンサでは難しすぎるのです。

 RAWで撮影すれば,現像ソフトでモアレを消すことが出来るという人もいますが,消しているのではありません。目立たないように加工しているだけです。何度も言うように,一度混入した折り返しノイズは絶対に除去できません。

 折り返しノイズが混入した帯域をばっさりオリジナルごとカットし,その部分にあった情報を演算ででっちあげることで再現しているのかもしれませんし,そこは各社のノウハウなんだと思いますが,いずれにせよオリジナルを保って欲しい情報への影響は絶対に避けられません。つまり,モアレを消す代わりに,本来存在するべき大事な情報まで失われているのです。

 先程,Lightroom4でお見せしたモアレ低減は,確かに効果絶大だったのですが,実は他の領域への影響が結構あります。この部分は全体に彩度が低いので影響が目立ちませんが,他の場所でかけると,本来ならグレーの部分に別の部分の色が出てきたり,彩度が変わったりして,実用にならないレベルになります。だからこそ,Lightroom4では効果の出る範囲を指定しなくてはいけないんでしょうね。

 D800が使いやすいのは,ローパスフィルタがあるからだと思います。D800Eにしないで良かったなあとつくづく思うのは,重要ではない高域情報のために,重要な帯域に取り返しの付かない傷をつけることが正しい方法で回避されているからです。GRも同じようなポリシーで作って欲しかったと心底思います。

 どうやら,名機K-5の後継であるK-5IIとK-5IIsにおいてでも,K-5IIsのモアレの出方は結構派手なようで,その解像感と引き替えに,簡単に出てしまうモアレに,手を焼いている人が多いような感じです。

 かといってK-5IIが売れているかといえばそうではなく,売れているのはK-5IIsのようです。しかし,K-5程度の画素数でローパスレスにした理由が私にはわかりません。

 メーカーは,売れるものを作るのが仕事です。ローパスレスが売れるなら,多少の弊害には目を瞑って,ローパスレスを作って売ります。結果はユーザーの自己責任です。

 極端な例ですが,ある自動車の最高時速が150km/h,別のメーカーが180km/hで,後者の車の方がよく売れ,その理由が最高速度にあったとしましょう。するとライバルメーカーは次に190km/hに,別のメーカーは200km/hにと,最高速度競争が始まるでしょう。

 そしてその結果,自動車の危険性が高まり,事故の件数も事故の程度も大きくなっていったとしても,それは運転者の責任になります。

 でも一寸待って下さい。日本では,最高速度が150km/hでも200km/hでも,その違いを直接体験することは,出来ないはずです。不必要なスペックに踊らされた無知な消費者が,最終的に損害を被るということに気付いて欲しいです。我々は賢くあらねばなりません。

 自動車の例では,最高速度の規制と,エンジンの馬力の規制を,自動車メーカーが自主規制として制定しました。速度や馬力以外の性能も向上し,安全性も格段に上がった今では自主規制はないようですが,速度や馬力の向上に安全性がついて行けなかった時代には,そういう自主規制でユーザーが守られたこともあったのです。これもまたメーカーの責任です。

 同じ100km/hで走行するのに,最高速度が200km/hの自動車と,120km/hの自動車を比べれば,明らかに200km/hの方が余裕があって,快適で安全でしょう。でもそれは200km/hの最高速度のおかげではなく,それにふさわしい車体やブレーキを持っているからです。

 同様に,高解像度は,安易に外したローパスフィルタで得られるのではなく,レンズ,センサ,ボディの精度,画像処理エンジンなど,総合的な性能で得られるものです。

 GRの失敗は,安易なローパスレスに走ったことだと,思えてなりません。

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