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SMC takumar 28mm/F3.5のレストア完了

ファイル 65-1.jpg

 レストアしていたSMCtakumar28mm/F3.5ですが,完成しました。

 写真ではわかりにくいと思いますが,塗装も綺麗に仕上がって,ぱっと見るとかなりの美品です。というわけで,前回の続きです。

(1)塗装

 シンナープール(実際にはもっと強力なツールクリーナー)につけ込んだ4つの部品ですが,自分で後から塗装したものだけが落ちていました。元の塗装はアルマイト処理をしてあるそうなので,そりゃシンナーくらいで落ちるはずがありません。

 下地処理をどうするか悩んだのですが,本来ならメタルシールプライマーを使うべき所を,塗膜が厚くなることを心配して,「ミッチャクロン」という塗料を薄く吹き付けることにしました。

 といってもこれはスプレーなので,そのまま吹き付けるわけにはいきません。エアブラシのカップに吹き込み,塗料がたまったところで吹きつけを行います。

 ミッチャクロンは,一部の人には好評のようなのですが,私個人はその効果を実感したことはありません。多少剥がれにくくなるかなーと言う程度の話です。

 次にセミグロスブラックを吹き付けます。ここまではなんの問題はありません。ここまでで終わると塗膜も弱いし,刻印にスミ入れを行ったときに,はみ出したエナメル塗料を拭き取る際に,エナメルシンナーにブラックがわずかに溶け出して,せっかくスミ入れした文字を汚してしまいます。

 そこで,丁寧にクリアを何回にも分けて塗るのですが,ここで失敗。その時は気が付かなかったのですが,つや消しクリアの分量が多かったようで,まるでプラスチック鏡筒のようなつや消しに仕上がってしまいました。

 まあいいかとスミ入れを済ませ(これはうまくいきました),最終組み立てを始めます。


(2)組み立て

 塗装を傷つけないように組み立てを慎重に行ったのですが,前回目処が立ったはずのヘリコイドの組み立てが,どうもうまくいきません。ピントリングまで取り付けてみると,ヘリコイドの回転範囲がやはり狭いままです。これでは無限遠を出すことも出来ません。距離の指標も全然でたらめで,ここでかなり焦りました。

 答えは,ヘリコイドのガイドにはめ込んで鏡筒に固定する金具(これによってヘリコイド全体がくるくる回らないようになる)を固定する方法にミソがありました。この金具をベスで固定するとき,ヘリコイドの位置が中央付近でないと,ガイドに飛び出ている突起か何かに邪魔されてしまい,そこから動かなくなってしまうようです。

 外側のヘリコイドの位置がまずいせいでピントリングが飛び出しすぎてしまったり,試行錯誤の調整がありましたが,こちらもなんか目処が立ちました。

 ところが,やっぱり気になるんですね,つや消し塗装が。他のtakumarと並べてみるとその差は明らかで,つやの程度の差がこれほど印象に差を作るとは思っていませんでした。

 中途半端な妥協をすると後悔すると思った私は,クリアだけ再塗装することにしました。


(3)再塗装

 私が模型を行うときに標準的に使っている「特製半光沢クリア」に,もう少しつやを与える調合を行いました。スミ入れの上から吹き付けることになるので,文字の保護にも役に立ちます。

 3回から4回ほど繰り返して吹き付けたのですが,仕上がりは狙い通り。手前みそですが,なかなかうまく出来た部類に入るのではないかと思います。ただ,結局模型用のラッカーですので,塗膜は弱く,簡単に剥がれてしまうでしょう。


(4)再組み立て

 再塗装の翌日,ささっと組み立てを済ませました。今度は全く問題はありません。

 ところで,分解の理由になっていたトラブルですが,絞りの粘りは絞り込みのピンの油の付着が原因でしたし,絞りリングが途中で回らなくなるのは,実は絞りリングの変形が問題でした。

 目に見えるほどの歪みなら組み立てもままならないわけで,手でぐいっと引っ張って少しずつ修正をしました。ちょっと渋いのは相変わらずですが,実用レベルでしょう。


(5)調整

 調整,と一言で書きましたが,今回の最大の難関はこのプロセスです。そう,ヘリコイド分解の後にやってくる,無限遠出しです。

 無限遠と見なして良い距離の物体にピントが合うようにしておかないといけないのは言うまでもありませんが,これがなかなか難しいのです。特に広角レンズのように,無限遠の物体が小さく写ってしまう上に,被写界深度が深いケースでは,ピントが合っているのかどうかを判断するのがとても難しいです。(ましてこのレンズはF3.5,しかもボディはES2ですからファインダーはもう真っ暗です・・・)

 本当なら,オートコリメータという装置を使って調整を行う無限遠出しですが,今回はこのオートコリメータの原理を手元の機材で再現して見る事にしました。

 コリメータとは,焦点に置かれた点光源を平行光にするレンズのことです。無限遠というのは言うなれば平行光の入射のことですので,コリメータレンズを通った光にピントが合えば,そのレンズは無限遠が出ているということになります。

 いやー,理屈はなんとなく簡単そうなのですが,これを実際に簡単にやってしまった方がいらっしゃって,詳細がその方のホームページに掲載されていました。ありがたいことです。

 まず,基準となる一眼レフを用意します。ここに200mm以上の望遠レンズを取り付け,無限遠を出しておきます。昔のマニュアルフォーカスのレンズなら∞のマークの方向に目一杯回しておけば無限遠になっていますが,最近のオートフォーカスのレンズでは行きすぎてしまうようで,わざわざ無限遠にピントを合わせることから始めないといけません。

 私の場合,一応300mm程離れたところに,28-200mmのズームレンズのピントを合わせてお気,無限遠としました。

 これを先日なおしたばかりのFEに取り付けます。本当はここも信頼できるF3なんかにすべきなのでしょうが,まあいいでしょう。

 このカメラを三脚に取り付けます。

 次に,無限遠を出したいレンズを,別のボディに取り付けます。私の場合はES2に取り付けました。

 そして,裏ブタを開け,フィルムの通る位置に0.4mmのプラ板を貼り付けます。プラ板は紙ヤスリでマット面を作っておき,中央に鉛筆で×印を着けておきます。

 ざらざらの面をシャッター側にして貼り付けるのが大事です。

 次に,もう1つの三脚にES2を据え付けるのですが,私は三脚を1つしか持っていないので,残念ながらES2は机の上に置きます。そしてバルブにしてシャッターを開放,裏側から蛍光灯スタンドで明かりを入れます。

 ES2に向かい合わせて,無限遠を出したFEを置きます。光軸がまっすぐに合えば,FEのファインダー越しに,プラ板に書いた×印が中央に見えるようになります。この時,カメラ同士の距離は関係がありません。

 FEのファインダーを見ながら,×印が最もくっきり見えるように,ES2側のレンズのヘリコイドを回します。鉛筆で×印を書いておくと,鉛筆のザラザラ感が実に良くピントの山を目立たせてくれるので重宝します。

 ぴったりピントが合ったところが,無限遠です。この位置でピントリングを固定して調整終了です。

 作業は割と簡単にできたのですが,気になるのは28-200mmのズームがAF用で,本当に無限遠が出ているかどうか,結局私の目視の精度に依存してしまったことです。

 そこで,10年ほど前に買った,マニュアルフォーカスの100-300mmのレンズを取り出しました。10年ほど前とはいえ,ほとんど使うこともなく,しかも一度修理に出しているので,無限遠はおそらく出ているでしょう。

 早速このレンズを目一杯回して上記と同じチェックをしてみると,驚いたことにぴたっと無限遠が出てくれています。200mmの望遠で300mmの距離は無限遠と言えるという事だと,勝手に納得しました。

 以後はこの100-300mmを使って調整することにしましょう。

 すっかり気をよくした私は,以前目分量で調整したSMCtakumar135mm/F3.5も,この方法で調整することを思いつきました。

 確認してみると,やっぱり全然無限遠が出ていません。

 その前に,レンズに随分とカビのようなものが・・・購入時には分解して掃除したはずなので,やはり発生してしまったということでしょうか。

 あわてて分解して掃除します。まだ初期だったので,問題なく復活です。

 そして無限遠を出していきます。ピントリングをヘリコイドに固定するビスがフィルター枠の固定のための突起に隠れてしまうので,なかなか思った位置に固定できずに苦しんだのですが,なんとか追い込んで終了。いやー,気持ちがよいです。

 他のレンズも試してみましたが,あとは大丈夫でした。


(6)最終組み立てとまとめ

 あとはもう簡単です。フィルター枠をビスで固定し,常用のフィルターをはめ込みます。これで完成です。トップの写真は,ここまでの作業が終わって撮影したものです。

 グリスの入れ替えは好みの問題もあるでしょうが,私個人はちょっと柔らかすぎたかなと思っています。広角は絞り込んでパンフォーカスにすることも多いので,勝手に回ってしまわないよう,堅めがよかったのですが・・・

 それ以上に,ちょっとヘリコイドにガタがあることに気が付きました。バックラッシュがわずかにあるようです。実用上は問題はないのですが,かなり残念な感じです。おそらく,ダブルヘリコイドの,外側のヘリコイドの位置がまずかったのでしょう。

 というわけで,一応私の期待通りの結果に終わってくれて,ほっとしています。今回は無限遠出しをコリメータ法で行うというノウハウを手に入れたのが大きいです。まだテスト撮影は行っていませんが,まあぱっと見る限り大丈夫でしょう。

 お気に入りのレンズだけに,うまくいってよかったです。


(7)そして物語は続く・・・

 このレンズが組み上がった直後,北の国にお住まいのある方から壊れたカメラが届きました。ミノルタXEにMC-Rokkor50mm/F1.7。

 症状は巻き上げレバーを回しても,スプロケットが回らず,フィルムの巻き上げが行われないというものです。シャッターのチャージは行われていて,露出計も生きていますし,シャッターもちゃんと落ちます。(巻き上げの感触は噂通りの絶品でした)

 MC-Rokkor50mm/F1.7は後玉にカビが派手に出ており,どっちにしてもこのままでは使えません。

 修理するチャンスをご厚意で頂いたのですが,軽く調べてみるとXEにはこの手の持病があるらしく,比較的簡単に直るのではないかと決め込んでいたのですが・・・

 まて次号!

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