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角形マウスの復刻

  • 2014/01/07 17:35
  • カテゴリー:散財

 MacがMacintoshと呼ばれていた15年前,そうですね,MacintoshSEやMacintoshIIが,プラチナホワイトの美しい筐体に身を包み,高嶺の花として我々の手の届かないところに鎮座していた頃のお話です。

 当時のMacintoshは,キーボード無しで使えることを主張するかのように,キーボードが別売り(かつ高価)でした。また,マウスがなければなにも出来ないことを主張するかのように,マウスは標準で付属していました。

 当時の多くのパソコンが,キーボードは標準で付属,マウスは別売りだったことを考えると,当時のAppleをひねくれ者と感じた人がいても,ちっとも不思議ではありません。

 しかし,Macintoshが先進的だったのは,キーボードもマウスも同じ端子に繋ぐようになっていた事です。その名もApple Desktop Bus,略してADBです。

 マウスやキーボードをUSBで繋ぐ現在,別にそんなことは珍しくもなんともありません。しかし,当時はキーボードとマウスはそれぞれ専用の端子に繋ぐ時代です。マウスに至っては端子さえ用意されておらず,マウスインターフェースを拡張スロットに差し込んで用意することも珍しくありませんでした。

 ADBはマウスやキーボードなどの入力機器をデイジーチェーンで接続出来るシリアルバスで,USBも開発時にお手本にしたと言われるほど良く出来た仕組みでした。

 ADBの自由度はプロダクトデザインにも生かされていました。キーボードには左右に1つずつコネクタが存在し,マウスはキーボードのコネクタに繋いでも動作しました。右利きの人は右側のコネクタに,左利きの人は左側のコネクタに繋ぐことで,どちらの利き腕の人にも対応することが出来ました。

 当時のAppleの志の高さを象徴する例の1つがこのADBですが,今回の話はADBではなく,当時のマウスのお話です。

 Appleのマウスはボタンが1つしかついていません。いわゆるワンボタンマウスです。マイクロソフトのOSが動くパソコンだと2つ,UNIXのワークステーションが3つだったのですが,なにせ人と接するインターフェースだけにユーザーのこだわりが強く,マウスについているボタンの数で論争が起きたことなど,今となっては懐かしい話です。

 MacintoshSEやAppleIIGSなどのADB搭載機種の登場と同時に用意されたマウスが,初代のADBマウスです。本体と同じfrogdesignによる角形のマウスは,エルゴノミクスが流行した当時においてはとても使いにくそうに見えて,デザインを優先し人間工学をないがしろにしたものと思われる節もありました。

 しかし,ADBのマウスに実質的に他の選択肢がなく,多くのMacintosh(とAppleIIGS)のユーザーが文句を言うこともなく使い続けていることは,その使い心地が見た目以上によいことを物語っていました。

 ADBマウスにはボールがやや大きく重たい前期型と,ボールが黒くて小さく,とても軽い後期型が存在しました。そして1990年代前半には,局面を多用した本体デザインへの切り替えにあわせて,丸みを帯びたADBマウスIIに切り替わります。

 以後はUSBに移行しますが,特に角形のADBマウスには熱狂的なファンもいて,ADBとUSBを変換するケーブルがしばらくの間店頭に並び,MacOSXの時代になっても使い続ける人がいたものです。

 そして2013年末。この角形のマウスが復刻するという話を耳にしました。2.4GHzのワイヤレス,ブルーLEDで1600dpiの光学式,左側にはプッシュにも対応したホイールが用意され,見た目は1ボタンなのに押す場所でONになるスイッチが違うという2ボタン仕様と,現代のマウスにふさわしいスペックになって甦るという話です。

 形や大きさは角形マウスとほぼ同じですが,本物の角形マウスが日焼けによる変色がひどかった反省からか,表面はポリカーボネートで覆われており,非常に光沢があります。

 むむ,角形マウスを長く使っていた私としては,駄目になりつつある愛用のマウスの後釜にしようと考えましたが,なんと限定100個というじゃないですか。6000円という,割に高価なマウスにもかかわらず,速攻で注文しました。

 当初12月中旬と言われていた納期は下旬になり,年末のクリスマスの後に私の手もとに届きました。

 この微妙な形がとても懐かしく,でも古くさく感じないのは,さすがだなと思います。電池を入れて早速動作の確認をしますが,問題はなさそうです。

 年が明けて実戦配備。使って見た感想を書いてみたいと思います。


・形と大きさ,重さ

 前述のように,大きさや形は本物のADBマウスとほとんど同じです。私の場合,マウスは親指と薬指で挟んで持つのですが,指のかかりもほぼ同じなので,とても馴染みます。

 ただ,重さが違うような気がします。本物はもっと軽かったと思いますので,触った瞬間の違和感は拭えません。


・使い心地

 本物のADBマウスの真骨頂は,そのボールの位置にありました。ちょうどマウスの山になった部分あたりにボールがあったのですが,親指と薬指で脇腹を挟んで持つと,ちょうど手首の回転でボールが綺麗に転がり,腕も指も疲れずに快適でした。

 ボールがテーブルに接する点が描く軌跡と分解能が一致しないと,あの使い心地は再現出来ないんだろうと思いますが,この角形マウスの光学センサの位置は本物のボールの位置からは大きくずれていて,かなり左上にあります。

 センサの位置は,ちょうど指のあたりにきています。だから,指先の動きがそのままマウスの動きになってくるので,より理想的であることは否めません。ただ,それが本物のフィーリングを再現出来たのかについては,疑問が残ります。

 例えば,本物のボールがあった位置を中心に今回のマウスを回転させてみて下さい。本物だとマウスカーソルは動かないはずですが,今回のマウスは動いてしまいます。マウスを大きく動かす人に取っては大した差にならないかも知れませんが,それこそ手首や指先でマウスを数センチの動きで操っていた人にとって,それは大きな感触の変化だと理解頂けるでしょう。


・ボタンとホイール

 本物にはなかったものとして,2つのボタンとホイールが追加されています。

 本物は1ボタンですが,ボタンを押す位置で2つのボタンを押し分けられるようになっています。いいアイデアだと思う一方で,どこを押しても同じボタンだったという自由度がなくなり,押す場所が制限されるようになりました。

 私は,本物は人差し指と中指の2本でボタンを押していました。これができないんですね。これだけでもうまるで別物のような感じがしますが,現実的にボタンは2つないと不便ですので,これは辛抱するしかありません。

 ホイールについては,もともとなかったものですから,この場所に取り付けたのは苦肉の策と考えるべきでしょう。

 その場所は右利きの人が親指で操作することを前提にしていますが,せっかく左利きの人でも同じような使い心地を実現する優れたデザインなのに,それを継承できなかった事は非常に残念なことです。

 あと,私に限って言えば,この場所では手首に近すぎて,回しにくくて仕方がありません。繰り返しますが,親指と薬指で挟んで持つと,ホイールに親指をかけるときに持ち替える必要があるんですね。

 かといって,親指を常時ホイールに添えると,今度は人差し指がボタンに届かず,結局持ち替えが必要になってしまいます。

 個人的な要望だけ言えば,もうあと15mmだけ,前にあったら持ち替えをしなくて済みそうな感じです。でもそれは,人それぞれですよね。本物のADBマウスは利き腕がどちらでも大丈夫ですし,手の大きさが違っても問題ないように配慮されていたので,いわばユニバーサルデザインの走りと言えます。

 それが,ホイールを付けることで簡単に崩れてしまうわけですから,プロダクトデザインとはかくも難しいものなのかと,あらためて思った次第です。


・感触

 表面が変色を防ぐ目的で,ポリカーボネートでカバーされています。光沢のある表面の奥に沈むホワイトというのは,2世代目のiBookのような清潔感があって私は好きです。

 ただ,カバーされているのは上側だけで,下側半分は塗装のままです。触った感じでそれは悪いことではないのですが,見た目に違和感があって,ちょっと残念だと思います。

 肝心の感触ですが,表面の光沢は手に触れないのであまり意識しません。しかしボタンの部分の光沢は指のかかりが悪く,また指先の汚れが目立ってしまい,あまり歓迎できません。

 下側の塗装はしっとりした良い塗装で,触った感じはとても良好です。これをすべてに施しても良かったかと思いますが,それをやると塗装が剥げてしまうので,良くないんでしょうね。


・全体の話

 全体に見て,とても良く出来ています。これは間違いないです。かつて本物があって,その復刻であるとか,そういう話を別にして,マウスとして考えた時に6000円の価値は十分にあると思います。

 質感も剛性もあり,重厚で軽い感じの音がしません。部品は良質なものを使っているようですし,USBのドングルも小さく,十分な感度を備えているので,マウスとして不満に思う所はありません。

 あら探しになりますが,塗装のムラや成型のバリもないし,本当に良く出来ています。

 ちょっと惜しいのは,省電力モードの話です。正確な時間は測定出来ていませんが,しばらく使わないと勝手にスリープになってしまいます。スリープに入ってマウスカーソルが動かない事に最初に遭遇したとき,マシンが落ちたと慌てました。

 スリープに入った時には,ボタンを押すなりホイールを回すなりしてスリープから復帰させないといけないのですが,こういう作法を私は身につけたことがなかっただけに,止まったマウスカーソルを動かす時にはとりあえずクリックという習慣が身につくまでは,ちょっと苦労しそうです。

 あと,Bluetoothにするという手もあったかも知れませんが,私は小型のドングルで信頼性のあるワイヤレスであるなら,専用のドングルを使ったものの方が良いように思います。PCからみて,それがUSBマウスであると認識してくれた方が,私は安全かなと思っています。

 使い勝手の話は,まあそのうち慣れるでしょう。オーダーメイドでない限り,体が合わせるという話は洋服でもマウスでも同じかなと思います。

 それともう1つ,今のところ限定100個のままで,予約も出来ない様子です。マウスは消耗品で,いずれ壊れて買い換えることになります。本物のADBマウスのような頑丈なものならあまり心配しませんが,新しい角形マウスはボタンも2つ,ホイールもあるので,壊れやすいことは間違いないでしょう。

 このマウスならきっと手に馴染み,壊れた時には同じ物が欲しくなると思いますが,それが困難という現実は,マウスがとても高価なものだった頃を別の理由とはいうものの,思い起こさせます。

 大事に使おうと思います。

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