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MSG2170のレストア

  • 2015/08/28 13:42
  • カテゴリー:散財

 先日,KT-1100Dと言うFMチューナーをレストアした話を書いた際に,FMステレオエンコーダの調子が良くないということを書きました。

 VP-7635Aというエンコーダですが,どうもパイロット信号の位相を完全に調整出来ないのです。位相を調整しきれないという事は,FMチューナーのセパレーションを最適な位置に持ってこれないという事を意味していて,もはや測定器として疑問符がついている状態です。

 もっとも,測定値は疑わしいとはいえ,この状態でも最善の場所に調整をすることでそこそこのレベルに追い込む事が出来ますから,これで我慢するというのも,1つの手でした。

 しかし,やっぱりダメですね。気になってしまいます。

 どうせ手に入れるなら,高性能なものをということで,セパレーションに70dB以上というスペックを誇る,目黒のMSG2170という機種を,ずっと探していました。

 この機種,2000年代中頃まで販売されていたもので,そんなに古くさい測定器ではないのですが,もともと「見えるラジオ」と呼ばれたFM多重放送が受信可能なラジオの設計や調整に使う測定器で,正しくはDARCエンコーダというのですが,オプションでステレオエンコーダが搭載可能で,このエンコーダの性能が飛び抜けているのです。

 ですが,すでに見えるラジオはサービスも終了しており,FM多重放送を受信出来るラジオの設計や製造も,もう行われていません。各社がこぞって発売を開始した時期に,どうもこの機種は大量導入されたようで,今ちょうど中古市場にたくさん出てきています。

 ところで後継機であるMSG2173や2174は,コストダウンのためか,ユーザーがそこまで必要ないと考えたのか,スペックが落とされており,手に入れやすい高性能なエンコーダとしては,MSG2170は貴重な存在です。

 これを何度かオークションで手に入れようとしたのですが,高価だったりして逃してきました。しかし先日,ようやく手に入れる事ができました。

 正直言って,程度が今ひとつで,値段も高めでした。私は必要ないからいいですが,付属している見えるラジオのデータ作成用ソフトもついておらず,実は少し後悔しています。

 ぶつけた傷も大きいものがありますし,背面の足も少し曲がっています。BNCコネクタはことごとく錆びており,困ったのはデータエントリー用のロータリーエンコーダの調子が悪く,ミスカウントが多発していることです。

 ということで,肝心な生成された信号の質の確認はまだまだ出来ず,分解が必要なレストアから始めることになりました。

(1)バックアップ用電池の交換

 MSG2170に定番トラブルは,設定内容を覚えてくれないというものです。これは単純にSRAMのバックアップ電池が切れているのが理由で,まずはこれを交換しておく事にします。

 幸い私のものは電池が切れている様子はないのですが,予防的な措置として,タブで直接基板にハンダ付けされているコイン型リチウム電池を取り外し,CR2032用の電池ケースに交換し,今後電池が切れても簡単に交換出来るようにして置きます。

 MSG2170のバックアップ電池は,実は2つ装備されています。CPUの乗った基板は2階建てになっていて,それぞれに電池がありますので,両方とも交換します。私の場合,メイン基板側は3.0Vほど,漢字ROMののったサブ基板の電池が2.9V程になっていました。ICの刻印から,2002年頃に作られたもののようで,10年ちょっとならまだ大丈夫というのも道理です。

 この作業はとても簡単で,さくさくと終わりました。起動も問題なし,ちゃんとバックアップも行われています。メモリのクリアを行って,初期化をしたところで作業完了です。


(2)ロータリーエンコーダの不調

 このMSG2170のツマミって,なんとまあアルミの削り出しなんですね。すごい重量感ですし,ひんやりとした感触は非常に趣味的な魅力にあふれていますが,測定器らしくなく,このツマミだけ浮いているように思ってしまいます。

 それはともかく,これが動かないと操作に支障も出ますから,直したいところです。

 ロータリーエンコーダは,よく知られているように,絶対値を出力するアブソリュート型と,90度位相のずれた2つの出力からパルスが出るインクリメンタル型の2つがあります。

 インクリメンタル型の場合,精度や耐久性がそれ程要求されず,民生機器の操作パネルに取り付けられる様なものには,コストが重視されて機械式が主流です。

 どんな機器にもマイコンが入っていること,もちろん安くなったことで,わかりやすくて操作しやすいロータリーエンコーダは,電子レンジにしろ洗濯機にしろオーディオにしろ,本当に多くの機器に導入されています。

 ただ,この機械式のロータリーエンコーダは,良く壊れるんです。なんでこんなに壊れるのかなと思うくらい,壊れます。多くの場合騙し騙し使えるし,キーで代用できたりするので気にされない事も多いと思いますが,カウントしない,一気に3つ4つ進む,増やしているのに減っている,とか,まあイライラすることこの上なしです。

 それで交換を考えたのですが,手元に秋月で手に入れた,200円の古いロータリーエンコーダがありますので,これに変えて見る事にします。まあ,仮にロータリーエンコーダの不良が原因でなくても,回転の感触が悪いので,これは交換しておきたいところです。

 古いものを基板から外しますが,2階建てになっている操作基板の,奥側の基板に取り付けられたロータリーエンコーダは,長いシャフトが手前の基板の穴を通してパネルに出てきます。こんな長いシャフトのロータリーエンコーダは,ちょっと手に入りません。

 そこで,手前側の基板に開いた穴に,エンコーダを直接ネジ止めし,配線は別に行う方法で取り付けて見ました。シャフトの長さは問題く,ちょうどよい長さになり,ツマミも綺麗に取り付けできます。

 配線も済ませて動かしてみますが,どうもおかしな動きです。配線を間違えたのかも知れないと適当に入れ替えてみたら,それらしい動きをします。(よく調べてみると,最初についていたアルプス製のロータリーエンコーダは真ん中がコモンでしたが,秋月のものは右端がコモンでした)

 それらしい動きをしているように思ったのですが,よく見てみると,1クリックで2カウントします。クリックの途中で1つカウントしますので,そこで無理に止めれば良いのですが,それはあまりに使い勝手が悪すぎます。

 うーん,なんかおかしい。

 ロータリーエンコーダなんて,クリックのありなしと,1回転でいくつパルスが出るかくらいの違いしかなくて,とりあえず動くと思っていたのに,そういうものでもなさそうです。

 これは,もしかすると回路の故障かも知れないと思い始めましたが,このままでは使い物にならないので,元のロータリーエンコーダに戻します。とはいえ,ただ戻すだけでは芸がないので,ロータリーエンコーダを分解し,内部を清掃してから戻すことにします。

 ロータリーエンコーダを分解して内部を軽く掃除して組み立て直すのですが,固定している金属製の爪が壊れてしまったので,引っかかりが小さく,ちょっと不安があります。でも,もうこれで進めるしかありません。

 仮組をしてみると,以前よりもミスカウントが減っています。やっぱりロータリーエンコーダの不良だったんだなあと納得して,正式な交換作業をスタートさせます。

 交換した秋月のロータリーエンコーダを取り外し,元のロータリーエンコーダを基板にハンダ付けして組み立て直すときに,悲劇が起きました。基板の表と裏を間違えてしまい,このままでは組み立てられません。もう一度ロータリーエンコーダを外して,裏表を逆にして取り付けねばなりません。

 かなり眠くなっていた私は,作業が乱暴になっていたんでしょうね。なかなか基板から外すことが出来ずに,ロータリーエンコーダを壊してしまいました。さらに,基板のパターンも剥がしてしまうという,大失態です。

 落ち込んでも仕方がありません。壊れたロータリーエンコーダをもう一度修理しますが,金属の爪が完全になくなっているので,もう固定できません。それを承知で基板に取り付けます。

 ようやく組み立てが終わって動作をさせてみますが,かなりミスカウントが減っているとは言え,やっぱり動作がおかしく,このままではちょっと使えない感じです。

 もう力尽きて寝ることにしますが,その前に,オリジナルと秋月のものとの,クリック数の違いを確かめてみると,オリジナルは30,秋月のものは24です。

 秋月のサイトを見ていると,今売っているものはすべて24クリックです。一方,大阪の共立電子を見てみると,30クリックというのがあるのですが,ここにパルス数は15と,ちょっと気になる事が書いてありました。

 クリック数と,パルス数は,同じとは限らないんですね。これは大発見です。

 さらに調べてみると,秋月のものは1回転あたり24パルスで24クリックであるという記述を見つけました。

 気になって,アルプスのサイトにある,製品情報を見ていると,1回転あたり15パルスで30クリックの製品は確かに存在し,それはA相とB相それぞれの確定部分,厳密に言えばA相とB相が同じレベルになっているところがクリック安定点になっています。

 一方1回転あたり24パルスで24クリックの製品を見てみると,B相の立ち上がりおよび立ち下がりのところでクリックが出るようになっていて,クリック安定点でB相の状態が規定できないと注意書きまでしてあるのです。

 これで説明がつきました。

 オリジナルは,1回転で15パルスが出るロータリーエンコーダですが,クリックはその倍の30クリックが出るもので,このセットは1クリックごとに,つまりA相かB相のいずれかが変化したところ,つまり0.5パルスで,1カウントされるように作られています,

 ところが,交換した1回転あたり24パルスで24クリックのロータリーエンコーダでは,1回転で出るパルスは24もあるのに,クリックは24しかありません。つまり,1つのクリックで2つのA相とB相の変化点が存在し,その度にカウントされるので,1クリックで2つカウントされてしまうのです。

 そうなると,もう15パルス30クリックのものを買うしかありませんが,30カウントではちょっと分解能が荒くて,グルグルツマミを回さないといけないのも面倒くさく,24クリックのロータリーエンコーダの快適さを知ってしまうと,元に戻すのも惜しいです。

 そこで,クリックのないロータリーエンコーダを使えばいいんじゃないのかと思い至り,そういうものを探したら,あったあった秋月にありました。

 実は,手元にある秋月のロータリーエンコーダを分解し,内部のバネを取り外す改造を行うと,クリック無しになることが分かっています。しかし,分解というのも信頼性を下げますし,もともとこのロータリーエンコーダは,時計のキットについていたものですから,出来れば元に戻しておきたいところでもあります。

 そこで,早速秋月に部品を注文です。余計なものも一杯買ってしまった(カーボン抵抗全種類詰め合わせ5700円を買ったのが失敗だったかも)ので,高くついてしまったのは内緒ですが,これに交換してみましょう。

 部品が届くのは週末です。うまく交換が出来て,操作フィーリングが向上することを期待したいと思います。

 そうそう,発生信号が高品質である事も確かめないといけないです。

 

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