エントリー

GPSDOで手に入れる高精度クロック[製作編]

  • 2016/08/10 16:17
  • カテゴリー:make:

20160816092655.JPG

 GPSDOの続き,今回は回路の検討から製作までです。 

 基本的な話はトラ技に書いてあるとしても,やっぱり実際に作って見て,動かしてみないと,どうもイメージが掴めません。

 周波数のズレというのは,欲しい周波数からどれだけずれているかというものと,経年変化で徐々にずれていくものは想像しやすいのですが,ある周波数を中心にしてゆらゆらと揺らいでいるものもあり,これらがちゃんと区別出来るようになるのは,それが実際の測定結果の違いであるとか,実際に怒る現象のどう反映されるのかが頭の中で繋がっていないとダメだと思います。

 周波数のズレ,経年変化,ゆらぎはそれぞれ別の物ですので,排他ではなく,すべて同時に独立して起きるものです。そして,それぞれが引き起こす現象も異なります。

 例えば,時計を動かす基準クロックの周波数を考えてみます。基準クロックを使って1秒を作り,これを数えて時計は動いています。

 この基準クロックの周波数ズレは,時計の狂いとして表面化し,しかもそれは一定の割合で蓄積していきます。一日1秒の遅れがある時計は,10日で10秒遅れるわけです。

 では経年変化はどうでしょう。これは言葉通り,時計の経年変化による狂いの変動をに現れます。一日1秒の送れがある時計が,10日で100秒遅れたり,逆に10秒進んだりします。

 最後の揺らぎですが,これがなかなか気付きにくいです。揺らぎですので,フラフラと周波数が変動するのですが,揺らぐ範囲が規定されていれば,ある瞬間は進んでいるけどある瞬間は遅れている,そして長い時間で平均すればある値に収束するというものです。

 きちんと合わせた時計が,12時間後に見ると10秒遅れていました。さらに12時間後に見ると,ぴったり狂っていませんでした。この場合,1時間ごとに時計を見るともっと細かく,ゆらいだ状況がわかる訳ですが,逆に24時間に一度しか時計を見ないなら,なんと正確な時計か!と腰を抜かすことになるわけです。

 これ,長い範囲で考えれば揺らぎはないことになるし,短い範囲で見れば揺らぎは大きく見えてきます。範囲をどんどん短くし,限りなくゼロにして・・・なんてことを言い出すと,どっかで聞き覚えのある微分の考え方になってきますし,人によってはサンプリング定理を思い出す人もいたりするかも知れません。

 なにせ,短時間では減ったり増えたりを小刻みにしていても,平均を取れば,そしてその平均もたくさん(長時間)取れば取るほど,ある値に収れんしていきます。

 一番わかりやすいのは,家庭に来ているAC100の周波数でしょう。西では60Hz,東では50Hzですが,これはいつもぴったり50Hzになっているわけではなく,ある瞬間は49.95Hzかもしれないし,50.02Hzかもしれないんですが,一日平均でちょうど50Hzになるように,調整をしています。

 一日の平均としては非常に高い精度を持っているそうで,こうした商用電源周波数を基準に持つ時計がちっとも狂わないという経験は,この種の時計が全盛期だった40年ほど前を知る方には,よく記憶がおありでしょう。

 長くなりましたが,こういう話も実際に作って見ればはっきり区別出来るようになります。うん,これはとりあえず作って見ましょう。


・回路検討

 マイコンやDSPを使わずに,アナログのPLLで構成された回路は一見するとややこしそうで,実は簡単です。でも簡単なようで,1つ1つの常数に深い深い意味があり,実装によって性能が左右するのも,またアナログの世界です。

 私は,設計者の意図を尊重し,まずは素直にモノマネすることにしました。ただし,回路も常数も「そうなっているから」ではなく,どうしてそうなっているかを考えた上で,モノマネさせて頂く事にします。


・部品集め

 この回路はアナログですが,アナログ回路というのは得てして部品の性能に依存して設計を行うものであり,部品が手に入らないとモノマネすら出来ないという難しさがあります。

 まずGPSモジュールですが,1PPSではなく10kHzが高精度で出てくるものであり,かつ高感度,高精度なものである必要があります。加えて安価でなければ手が出ません。記事にあるように,u-bloxのNEO-6Mを使ったGPSモジュールが,aitendoで安価に売られていましたので,これを買って使うことにしました。

 アンテナは屋外に出さないと厳しいのですが,本格的な物は高価ですし,そもそも設置が大変です。そこで,カーナビようのアンテナを中古で数百円で入試し,コネクタをSMAに交換して使うことにしました。一応トヨタ純正です。

 次のキーパーツは,OCXOです。これまで書いたように,OCXOは揺らぎ成分を担保する最重要部品であり,はっきり言えばGPSDOの揺らぎは,このOCXOの性能がそんまま出てくるといってもよいです。

 ですから,非常に高価なダブルオーブンのOCXOを使う物なのですが,私は偶然,以前購入した電圧制御可能なOCXOが,実力でなかなか揺らぎがないことを確かめたあったので,これを使うことにしました。

 購入先の話を聞くと,もともとメーカー製のGPSDOに使われていたOCXOを外したものらしく,それならGPSDOにぴったりじゃないかと,そういうお話です。でも素性がはっきりしなかったこともあり,4000円弱で手に入りました。GPSDOに使える電圧生業OCXOとしては半額以下だと思いますが,うまくいくかどうかは試して見ないとわかりません。

 幸い,1.6Hz/1Vくらいの周波数変化率でもありますので,今回の記事で使われているものとほぼ一致しています。回路変更も必要ありません。

 難しい部品はこのくらいです。500uAのラジケーターなんてのはどこでも買えますし,使っているICも一般的で安価な汎用品です。

 出力波形を正弦波にし,しかも接続機器と絶縁するための回路の規模が結構大きく,部品もトランスやFETに入手が難しいものがあり,いろいろ検討してみましたが,私の用途ですと矩形波でも絶縁していなくてもあまり関係なさそうだったので,そのまな出力することにしました。

 電源は,本当はトランスで作ったリニアレギュレータがベスト何でしょうが,ずっと通電して機器ですのでちょっとした効率がきいてきます。そこで15VのスイッチングACアダプタを使い,基板ごとにローカルで用意したLDOを通して,電源の質を維持するようにしています。


・オリジナルな要素

 GPSモジュールが衛星をきちんと補足し,常に精度が維持されていれば,出力もPLLでじっくり時間をかけて,高精度で出てくるでしょう。しかし,衛星を補足し損ねた,あるいは停電があった等で精度が出ていない10kHzがGPSモジュールから出力されることは十分に考えられます。

 しかし,そうした精度が落ちた事実はGPSモジュールからのログを見ないと分からず,しかも24時間以上の時間をかけて,ゆっくりゆっくり揺らぎを除去していくのですから,現在出ている10MHzのクロックの精度がどの状態にあるのか,分からないことになります。

 さすがにそれは不安ですし,いい勉強なりますので,GPS時計を作った経験を生かし,GPSモジュールのステータスモニタをAVRtiny2313で作ります。LCDはグラフィックタイプのAQM1248Aを使って,小さな画面にたくさんの情報を出せるようにしましょう。

 NMEAセンテンスをデコードし,現在の日時と衛星の補足数,測距モード(無効,2D/3D,DGPS),そして衛星を補足し損ねてモードが無効となった回数を数えたカウンタを表示します。

 また,初回起動時には,画面右上に*を表示ししました,これは停電の検出です。停電をすれば,復帰しても衛星の再補足後から24時間以上経過しないと,所定の精度が得られません。

 ですので,この*が表示されていれば,停電が起きたことがわかります。

 そして,このマークを消し,かつ衛星を補足し損ねた回数のカウンタをリセットするボタンを1つ用意します。起動後,衛星を補足してからこのボタンをおしてやれば,画面に*が出ていれば停電を,カウンタの数が0以外になっていれば衛星を補足し損ねたと,分かります。そこから24時間経てば,悪くとも精度が出ていると考えていいわけです。

 あと,場合によっては出力の周波数に1MHzが欲しい時があるかも知れません。そこでデューティが50%になるように,HC390の配線を変更しました。10進カウンタとしてどうさせるのではなく,5進カウンタにバイナリカウンタをカスケードして,バイナリカウンタで50%デューティにするという回路です。

 ここから1MHzを引っ張り出すことができます。

 もう1つ,実は私が持っているAG1022というファンクションジェネレータは,供給する外部クロックとして20MHzが指定されています。10MHzではダメなんですね。

 そこで,Si5351Aを使って,20MHzに逓倍する回路を追加しました。実は,通電直後に電源とGNDがショートし,それがSi5351Aの破損によって起こるという大問題が発生し,SI5351Aを2つも壊してしまったのですが,原因が分からず,3回目の交換で正常動作するようになってしまったので,謎のままです。

 こういうのって本当に気持ちが悪いのですが,動いてしまったので確かめようがありませんし,ICの交換も大変,しかも安いとは言え1つ150円しますので,もう結果オーライにします。ああ,こういうあきらめ方って。何年ぶりだろう。

・PLLの考察

 GPSからの10kHzには、数mHz以下の揺らぎが入ってきます。これをローパスフィルタで除去(つまり積分器で平均化)することで,PLLが揺らぎに追従しないようにするのが,GPSDOのミソです。

 では,その揺らぎはどこで防ぐかというと,前述のようにOCXOというもともと揺らぎの少ない部品の力で確保します。

 なら,このローパスフィルタのカットオフはどうなっているのでしょう。LTSpiceでシミュレーションしてみると,10mHzで-3dBでした。また,リークの対策として,100mHz以上の周波数をさらにカットするフィルタも入っています。


・製作

 私はどんな回路でも,自分で一度書き直します。自分の流儀に出来るので,製作中にさっと見るときの読解力に差が出ますし,一度書き直すことで回路の隅々まで理解するチャンスが得られます。

 今回もそうしました。また,ケースは小さい物にしましたので,基板もギリギリの高密度実装です。大きめの基板にはOCXOと4046,そしてOP-AMPをのせました。もう1枚の小さい基板にはGPSモジュールと分周器をのせました。

20160816153545.JPG

20160816153546.JPG


 LCDとマイコンはフロントパネルに取り付けるので別基板にしました。
20160816153547.JPG
 製作そのものはあんがすんなり出来ました。バラックで動かしてみると,あっさり動いてしまいました。1E-9くらい出ていると思われる別のOCXOをリファレンスに入れた53131Aで測定してみれば,その安定度はよく分かります。

 ケースに穴を開け,ギリギリのレイアウトで押し込みます。フロントパネルはいつものようにステッカー自作キットを使いプリンタで印刷して用意します。今回は手に入ったラジケータがVUメータでしたしので,このままでは格好が悪く,シンプルなセンターメータの目盛板も印刷することにしました。なかなか綺麗に仕上がりました。



 長くなりました。結果は後日。

ページ移動

ユーティリティ

2020年04月

- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

検索

エントリー検索フォーム
キーワード

ユーザー

新着画像

過去ログ

Feed