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シュアのフォノカートリッジ生産終了を受けてアナログ祭り~その1

  • 2018/05/07 12:37
  • カテゴリー:散財

 かの有名なギターメーカーであるギブソンの破綻が伝えられたことも残念ではありますが,この連休でオーディオマニアをしみじみさせたニュースは,なんと言ってもシュアのフォノカートリッジの生産終了でしょう。

 今どきレコード関連商品の生産終了など驚きもしませんが,それがMMカートリッジの雄であるシュアであり,また生産縮小ではなく完全な終了である事に,目を疑った人も多かったのではないでしょうか。

 かくいう私もびっくりした口で,すぐさま大手量販店にM44GとM97xEを手配しました。(無事に買えました)

 今回の驚きは,おそらくLPレコードの生産と販売数が増えていて,LPレコードのカッティングを復活させたレコード会社の話が出てくるなど,レコードの追い風が吹く中での生産終了であったこと,そしてDJ用の定番でさえも生産終了になるという事実に,すっきりしない物があります。

 シュアの主力商品はすでにヘッドホンやマイクに移行していますから,カートリッジなど痛くもかゆくもないビジネスであったはずです。世の中にはシュアよりも小さい会社でも,カートリッジの生産を続けている会社などいくらでもあります。

 需要が減った,材料費が上がったなどを理由にするなら,値上げすれば済む話だろう,現にオーディオテクニカもデノンもそうやってカートリッジの生産を続けているじゃないかと思うのも,無理はありません。

 加えてLPレコードは小さいながらも安定した需要があり,少しずつ拡大している状況です。CDの生産が減っている中で生産が増えている音楽メディアはLPレコードのみです。

 それに,DJの必需品である堅牢で太い音のM44シリーズが果たす役割を考えると,安易に「やめる」などと言えないんじゃなかろうか,と思うわけです。

 特に,CDに移行した80年代後半,いよいよカートリッジも全滅かと思われた中でも今日まで生産を維持できたのは,DJがこぞってシュアのMMカートリッジを使ったからであり,シュアにとっても我々にとっても,足を向けては寝られないはずです。

 
 ただ,このシュアの決断が,苦渋の選択であった事も読み取れます。

 シュアは生産終了のプレスリリースにおいて,品質の維持が困難になったことを理由に挙げています。

 まず,近年の状況として,品質を維持できず,コストや納期に問題が出てきたと言っています。これは,すでにMMカートリッジを生産するための金型や生産設備に寿命がきていて,更新をしないといけなくなっていることを意味しています。

 当然金型や設備の更新を検討する事になるのですが,そうした検討を慎重に行った結果生産終了を決断したとあります。つまりこれらの投資に見合うだけのリターンがないので,このまま更新しないで終息させますということです。

 いやいや,なんでシュアより小さい会社が出来る投資を,シュアができないのよ,と思うかも知れません。でも,これは作っているカートリッジの違いによるのです。

 今さらですがMMカートリッジはMoving Magnetの略で,カンチレバーに付いている小型の磁石を振動させ,本体のコイルで発電する仕組みです。針交換が出来ることが特徴ですが,なにせ磁石ごと外せるようになっているので,その取付精度は良くなければなりません。

 そうすると高精度の金型を使い,プラスチックで成型しないと現実的な価格で作る事が出来ません。もっとも,最近だとアルミ無垢材から1つ1つ削り出す方法もあるかも知れませんが,それだって何万円もかかるでしょう。

 高精度の金型は非常に高価で,作るのに何千万円もかかります。元を取るには大量に作るかないわけで,1000個作っただけでは1つ数万円もかかってしまうわけです。

 それに,いかに大きな会社とは言え,数千万円の投資を,20年かかって回収するという話はなかなか体力的に厳しいわけで,それならさっさとやめてしまった方が楽ちんです。

 じゃ,なんで小さい会社がそんな投資に耐えてカートリッジを作ってるのよ,と思うかも知れませんが,生産規模が小さくても成り立っているカートリッジは,ほぼMCカートリッジであることに注目して下さい。

 Moving Coilの略であるMCカートリッジは,カンチレバーについているのは磁石ではなく,コイルです。本体には磁石があり,コイルが振動することで発電する仕組みです。

 構造的に針交換が出来ないことはご存じの事と思いますが,ユーザーの手元でいわば「分解と組み立て」をしないカートリッジですので,工場から出るときにしっかりと作っておけば,それでいいことになります。

 ということは,金型を使って高精度な部品を作る必要はなく,極端に言えば1つ1つ手作りで調整しながら作る事も出来るわけです。

 つまりMCカートリッジは生産数が少なくても成り立ちますが,MMカートリッジは生産数が大きくなければならず,固定費が非常に大きいのです。

 こういう背景もあり,零細業者のMCカートリッジは手作りに近く,とても高価です。一方で,数千円で買えるシュアのM44Gなど,この値段でこの音が出ることに,改めて驚かされます。

 シュアのカートリッジには。MCカートリッジがありません。MMでも高級なものはすでになく,中級以下のものしか存在しません。つまり,すべて安価でなくてはならず,しかし高精度な金型が必要なので初期投資が大きく,長い期間,大量に生産することでしか成り立たない商品であることが,今回の生産中止の理由です。

 単価を上げるのは1つの解決策ですが,それだけでは問題は解決しないのです。

 シュアのMMには,他に代えることの出来ない強い個性があります。私もその個性が大好きであり,いろいろ試してみても,最後にはシュアに戻ってきています。オルトフォンがあるじゃないか,オーディオテクニカがあるじゃないかという意見もあるでしょうが,私は置き換え出来ないものだと思っています。

 まして,MCは音はもちろん,そもそも出力電圧が違うのでMMの置き換えには使えません。

 それが今後はなくなるというのですから残念ですし,CDは消えてもLPは残りそうなのにシュアのMMを体験出来ない若者が増えるのかと思うと,これも残念でなりません。

 同じような苦しい心の内であるのが,おそらくシュア自身でしょう。個人的にはM44Gだけでも残して欲しかったですし,それくらいなら出来るんじゃないかとも思っていますが,すでにシュアのカートリッジはメキシコ生産になっていて,もしかすると生産設備すべてが重荷になっているのかも知れません。

 そんなわけで,今年の夏には生産終了となるシュアのカートリッジは,すぐに入手が困難になることが予想されます。買い占めとか転売とかそういうケチな話ではないのですが,あれほど有名であるにもかかわらず馬鹿にして一度も聞いたことがないM44Gはぜひ聞いてみたいし,かつての中級クラスとはいえ現在のフラッグシップであるM97xEも,馬鹿にしないで使ってみたいと思い,両方とも購入しました。

 この結果,連休は軽いアナログ祭りになったのですが,不幸はここから始まります。

 続く・・・

 

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