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MC20mkIIをならしてみる

 V15typeIII用の互換針が1つ余っていて(V15typeIVの動作確認用にとにかく安い使えそうな針を探したところ,動作確認後に不要になってしまった),せっかくの楕円針ですし,使わないとなあと思っていました。

 V15typeIIIの動作品を何度か手に入れようと思っていたのですが,V15typeIIIの価格が私の想像を遙かに超えるような高価格である事を知り,入手はあきらめてしまいました。

 ふと思いついたのは,楕円のダイヤモンドチップを他のカートリッジに移植しようという話です。この方法で一部の好事家はカンチレバーが折れたカートリッジや,針交換できないMCカートリッジを修理しては現役に復帰させていいるわけですが,私はこれまで自信がなくて,行って来ませんでした。

 そもそも,カンチレバーを折ってしまうと心の傷が大きくて,物理的に修理出来ても立ち直れないという私自身の狭量さに問題があります。これを癒やすには,お金をかけて針交換をし,「なかったこと」にするしかありません。

 この,お金で解決という,日本人が誠に嫌う札束で頬を叩くような行為に対する背徳感が,また自分のやらかしたことの大きさを増幅するわけで,若かりし頃の私は,そもそも折らなければいいんだと気が付いて,以来無事故無違反を続けています。

 そんなこともあり,カンチレバーの移植という技は全く磨いてこなかったばかりか,経験したこともないという状況ですが,もし針が折れて安く売られているカートリッジがあれば,このV15typeIIIの互換針で修理しても面白いんじゃないかと,そんな風に思ったわけです。

 早速某オークションを見てみると,結構あるものです。ただ,価格は全般的に高め。半年くらい前まではこの半分くらいの価格で落札できていたようですが,昨今のアナログブームで価格が上がっています。って私もその片棒を担いでいるわけですが・・・

 せっかく手間暇と新品の交換針を突っ込んで修理を行うわけですから,修理後に実は方chが断線してましたとか,もっと安く交換針が売ってましたとか,そもそも不人気で誰もありがたがりませんとか,オリジナル以外の音は認めないという原理主義者が跋扈しているとか,そういう話は避けたいところです。

 探していると,オルトフォンのMC20シリーズが目に付きました。チップを飛ばしたというMC20mkIIとMC20superがあり,どちらも動作品だったという個人からの出品のようです。

 MC20といえば,1970年代に登場したオルトフォンの柱の1つです。MCの原器とも言えるSPUを持つオルトフォンが,さすがに20年前の設計ではなあと,何度かSPUの次世代機を作るわけですが,中でもMC20は今もその後継機が登場する,代表的なモデルです。

 伝聞で恥ずかしいですが,SPUのナローレンジで重たい音に対し,ワイドレンジで軽快な音がMC20の狙いだったそうで,当時の軽針圧化(ハイコンプライアンス)の流れに沿うような設計を行ったのでしょう。

 本家MCカートリッジの構造を踏襲し,ダンパに工夫を凝らして出来上がった軽針圧SPUはまさにファンの期待に応えて,こうして40年も続くシリーズになっています。

 これも伝聞で恐縮ですが,MC20から廉価版のMC10,そして主にダンパを一新したMC30を登場させたあと,その技術を中核モデルのMC20に転用しMC20mkIIとなります。当時から不評だったプラスチック製の外筐をアルミの押し出し材に変更した(もちろん変更はそれだけではないでしょうが)MC20superになって,CDに席巻され絶滅寸前のアナログオーディオの1990年代をしぶとく支え続ける事になるわけです。

 MCカートリッジはDJには使えませんから,その需要はHi-Fiオーディオだけです。だから,とっくの昔に消えてなくなってもいいくらいなのですが,MCカートリッジが手作り可能なくらいに少量の生産にも対応出来る構造であること,針交換は原則的に現行機種の同等品へ交換となるので本体への需要が一定数あることもあって,今もこうして我々は,MCカートリッジの新品を手に入れる事が出来るのです。ありがたい。

 で,もう本質的にMCが引き出せる情報量にMMは絶対にかなわないと確信した私は,個性の差ではなく優劣としてこの2つを比較するようになっています。

 いや,反論もあると思いますが,MMに10万円かけてもSPU#1から出てくる情報量に勝てないなあと思うので,それなら潔くSPU#1を買えばいいと思うのです。MMを選ぶのは,あのブーミーな低音が欲しい時,ジュークボックスから出てくる音などの当時の雰囲気を味わいたいときになると思っていて,DJ向けの需要も減っている今,MMは確かに生き残ることが難しいだろうと思います。

 閑話休題。

 紆余曲折がありましたが,結局MC20mkIIを,少し前なら完動品くらいの価格で手に入れました。チップが外れて飛んでしまっていますが,それまではきちんと動作していたものだということです。だからカンチレバーもほぼそのまま残っています。

 まあ,これに47000円足せば針交換対応として最新のMC Q20が手に入るのですから,MC Q20の新品を買うより合計で1万円ほど安くなるとは思います。ただ,MC Q20もなかなか微妙な評判のようで,ライバルたちも交換用の種としてではなく,修理用して復活させMC20mkIIの音を楽しもうと考えていたのではないでしょうか。

 9000円ほどで手に入れた不動品のMC20mkIIは,心配していた断線もなく,チップがない以外は正常です。30年以上も前のものですので汚れもサビも浮いていますが,それは綺麗に磨けば済む事です。(この後済まないことが起こるわけですが)

 ところで,届くのを待っている間に私はふと,V15typeIIIの互換針を潰してしまうのはもったいないかもしれないと思うようになりました。極論すると欲しいのはチップだけです。

 なら,V15typeIIIのようなメジャーな高級カートリッジではなく,国産の名もないカートリッジの互換針でいいんじゃないかと,そう思い至ったのです。ただ,名もないカートリッジのしかも互換針が出回っている時代ではすでになく,しかも最低楕円針で,V15の互換針の価格(約3000円)よりも安くないといけません。

 そんなのあるわけないなあと思っていたら,ありました。0.3mil x 0.7milの楕円針が付いた国産カートリッジ用互換針が2000円です。ムク針ではありませんが,私はそこにはあまりこだわらないので,早速手に入れます。

 届いてみると,どうも複数機種に使い回せるよう,共通化したカンチレバーの外側に少し太いアルミのスリーブを差し込み,反対側にマグネットを差し込むという構造になっているようです。サスペンションワイヤもなく,ゴムのダンパに差し込んであるだけの簡単な構造も,この値段の理由でしょう。

 さて,役者が揃ったところで作業開始です。まず,修理前に本体を磨きます。メタリック塗装ですので,指紋がくっきりついて艶もなくなっています。コンパウンドで磨きますが,あまいr磨きすぎると下地の銅めっきが出てきますので,注意して磨きます。

 写真ではくすんだ銀色だったものが,綺麗なシャンパンゴールドになってきました。

 不幸はこの時起こります。磨いている間に,手元が狂って残っていたカンチレバーに激突,「あっ」と思ったあとには,無残にも90度に曲がって横を向いたカンチレバーがありました。

 やってしまった・・・

 この時,どうやって修理をするか,まだ決めかねていました。カンチレバーをできるだけ残した方が,オリジナルの音に近づくはずです。カンチレバーがほと丸々残っているのですから,出来ればチップだけ移植したい所です。

 しかし,今回のチップは楕円です。向きを正確に出さないといけませんから,チップだけの移植はあきらめます。そうするとカンチレバーのどこまで残すか,大いに悩むわけです。

 厳密に言えば,共振の節の部分で繋ぐとか,そういうことも考えないといけないのでしょうが,そんなことより確実にまっすぐ繋いで,強度を持たせる事が優先です。

 でも,それぞれのカンチレバーの太さも内部構造もわからないなかで,最適解など出るはずもなく,運次第でうまくいくという現実に,なかなか踏ん切りが付かずにいました。

 実のところ,カンチレバーを派手に曲げてしまった瞬間,まずいと思うよりも,これで方針が決まったと言う安堵感の方が強くありました。だから,曲がったカンチレバーを反対側に曲げて折ってしまうことにも,何の躊躇もありません。

 しかし,あくまで方針が定まったというだけの話で,次の問題が私の前に横たわります。

 カンチレバーが,あまりに根元で折れてしまったのです。

 カートリッジの表面から飛び出ている部分がほぼすべてなくなってしまった状態で,折れた部分のすぐ先には,もうコイルが巻いてあります。

 幸い,移植する予定のカンチレバーは十分に長いことがわかり,移植出来なくなってしまうことは避けられたのですが,ほとんどゆとりはありません。

 それに,接合する場所は本体の中に潜り込んでしまうわけで,これで作業をするのはかなり難しいだろうと思いました。加えて進んだ老眼は,作業そのものを難しくします。

 どっちにしても,移植予定のカンチレバーの降誕にあるマグネットを外し,太くなっているパイプをMC20側に差し込んで接着するしかありません。マグネットを外し,長さを揃えるところまでは,やっておきましょう。

 ここで頭を冷やすため,寝ます。

 翌日,潰れた切断面をまち針で広げる作業でウォーミングアップ完了。

 そして,事前に考えた作戦をおさらいします。

 作業を確実に行う為に,本体を可能な限りばらします。まずは邪魔なケースは外してしまいます。場合によっては前側のポールピースも外してしまい,接合部分を露出させます。ただ,それだけコイルの断線を引き起こしやすくなりますから,細心の注意が必要です。


 早速,カバーを外します。上面にあるシールを剥がし,爪で引っかかっているプラスチックのカバーをゆっくり下げていきます。この時,背中側にある端子盤も一緒に動いてきますが,なんとここにコイルの細い線が直接繋がっているので,動かないように気を付けてカバーをずらしていきます。

 ここでポールピースを眺めてみると,接合部がちょうどポールピースの穴の中です。これでは作業できませんので,ポールピースも外します。マイナスネジを緩めると,マグネットと前後のポールピースが外れますが,強力な磁石で工具が持って行かれないようにすることと,コイルが宙ぶらりんになるので,断線に気を付けることがとにかく必要です。

 ポールピースを外したら,そのままネジを戻して仮留め,マスキングテープでベースに固定して接合作業を進めます。

 まず,そのまま移植するカンチレバーがささらないか確かめますが,さすがにそれは無理。そこで,もとのカンチレバーの残った部分を抜き取り,コイルのボビンからでている接合部を1mmほど露出させます。

 口で言うのは簡単ですが,なにせすぐそこにはコイルがいます。小さいニッパーで力加減を工夫して外側のアルミスリーブを切り取っていくわけですが,下手をするとコイルもダンパも壊してしまうわけで,そうなったらもうすべてがおしまいです。

 実体顕微鏡で様子を確認しながら,少しずつ剥いていきます。

 よし,ひとまわり細い棒が出てきた。これなら刺さるはず。

 先にまち針で広げた,少し太めのアルミパイプがとりあえず刺さることを確認出来たら,これを接着して固定するため,2液混合のエポキシ接着剤を練ります。ほんの少しだけ塗って,新しいカンチレバーを差し込んでみます。

 5分で硬化しますので,それまでに位置を出します。上下左右からみてまっすぐかどうか,針は傾いていないか,針の先端の場所は適切かなど,これも顕微鏡を見ながら確認して修正をしていきます。

 5分経過し,正しい位置で固着しました。指で触っても大丈夫です。

 本気で使うには24時間経過しないとだめですが,音出しくらいは出来るでしょう。慎重に元通り組み立ていきますが,ポールピースの取付には随分と遊びがありますので,固定する位置を慎重に出していきます。

 ケースも,外すときはカンチレバーが折れてなくなっているので気にしませんでしたが,組み付けるときは針が突き出ていますので,引っかけてしまわないように,信用に被せていきます。

 取り付け,針圧をとりあえず1.7gかけて,音を出します。心配なのは断線です。

 左から音が出ません。やってしまったーーーー。

 ・・・と思ったら,ラインケーブルの接触不良でした。ややこしい。これもどうにかしないと。

 とりあえず,音は出ているようです。そして私は,その伸びやかさとみずみずしさに,心を奪われました。

 もっときいていたい,と思いましたが,接着剤がきちんと固まっていないのに,2g近い針圧をかけていいはずもなく,早々に切り上げました。

 修理完了後の写真が,これです。

20190712113309.jpg

 どうです,接合部が奥に引っ込んでいるせいで,綺麗に修理が出来ているでしょう。

 本格的な視聴は後日やります。シェルはどうしよう,針圧はどれくらいかけよう,オーバーハングも調整しないとなあ,テストレコードで性能の確認も必要だと,いろいろやることがあります。

 でも,とにかく音を出してみて,その素性の良さは一発でわかります。SPUは濃密ですがきらびやかさはなく,DL-103は情報量は多いですが凡庸で,AT-F3/2は派手ですが希薄で重心が高く,うちのMCは各々のカバーレンジが小さい事が悩みでしたが,MC20mkIIは濃密さと情報量はSPUゆずりで,程ほどの重心の低さと華やかさが備わっています。これはどんなジャンルの音楽でも,華麗にならしてくれるのではないでしょうか。

 1つ気になる事があるとすれば,出力電圧が非常に低いことでしょうか。DL-103では0.3mV,SPU#1では0.18mVであるのに対し,MC20mkIIは,なんと0.09mVです。

 実際に音を出してみても,小さいなあという印象が強くありますし,レベルを上げればイコライザアンプやヘッドアンプのノイズが目立って来ます。トータルのS/Nの良さはMMにかなわないというのがMCの弱点ですが,MC20mkIIは特に厳しく,気にならない程度を越えてしまっています。

 MC20mkIIを本気で使うなら,このS/Nの悪さを解決しないといけないですね。

 

 

世にも珍しい魚眼ズームAT-X107DXを中古で買う

 突然魚眼レンズが欲しくなりました。

 チェキをオモチャ代わりに遊んでいる娘が,エフェクトの1つである「Fisheye」の面白さに目覚めてしまい,私も再発見の機会を得たというのが理由です。

 「魚眼」ではなく「フィッシュアイ」で,ひどく歪んだ画像を生み出すレンズを覚えた娘は,私よりもずっと先に特殊レンズの洗礼を受けました。

 ついでにいうと,B&Wというエフェクトも再発見の対象となっていて,なんでもないポートレートが,なにかを語ろうとする意味深なものに変わることに新鮮な驚きを感じてしまいました。

 なんというか,私がモノクロで撮影していた頃というのは,とにかく枚数を稼ぐことが目的だったので,そんなに感動的な説得力のある写真を撮ることは一度もありませんでした。

 加えていうと,さすがフジフイルム。デジタルなのに,そのコントラスト,その階調には,思わず笑ってしまうほどの再現性があります。
 
 話を戻すと,私はこれまで魚眼レンズを使ったことも欲しいと思った事もありませんでした。高価ですし,ほぼ例外なくデメキンレンズなので神経質になるし,その割には使い道は限られてしまい,常用出来るレンズではないというのが,興味を全く持たなかった理由です。

 だから,PENTAX Qのトイレンズで,数千円の魚眼レンズがでた時には,真っ先に買いました。結果,面白いと思いましたし,案外使えるもんだなあと思いましたが,やっぱり常用出来ないので,一眼レフ用のまともな魚眼レンズには手を出しませんでした。

 そして,偶然見かけたのが,ペンタックスがコーティングを変更して発売した,魚眼ズームの記事でした。

 APS-C用の10mm-17mmというズームですが,10mmだと180度の対角魚眼,テレ側になると歪みが減り超広角ズームとして使えるという,面白い一本です。

 これ,トキナーとの共同開発らしく,同じ光学系のレンズが他のマウント用に,トキナーから発売されているのですが,これもペンタックスの旧製品も,10年以上前から売られるロングセラーです。(なにせ作例がD200とか,そんな懐かしい時代の作例です)

 ですので,定価はは8万円ほどですが,実売は45000円以下と安くなっています。AFもボディモーターで駆動するものですし,デザインも垢抜けていません。光学特性もずば抜けているとはいえず,この当時の平凡なものですので,今どきの基準で見れば全然ダメなんじゃないかと思います。

 なにより,APS-C用というのが厳しいです。海外版はフードが取り外せて,フルサイズでも使えるようになっているそうですが,国内版はフードが作り付けですので,ケラれてどうにも使えません。

 でも,魚眼ズームだと,ズームによって魚眼と超広角を切り替えて使う事が出来るわけで,魚眼だけではどうにも使えない状況でも,このレンズであればさっと広角に切り替えて使う事ができます。

 ズームレンズは単焦点レンズ数本分の役割をするといいますが,これこそその真骨頂でしょう。APS-Cなら17mmは25.5mm相当です。今どきこれは超広角とは呼びません。

 しかも幸いなことに,このレンズは欲しいと思っていたトキナーのレンズです。

 トキナーのレンズは,AT-X16-28mmF2.8PROを買った時,その色を大変気に入りました。あいにく,解像度が今ひとつで手放してしまいましたが,この青色には未練があり,安ければ買い直そうかなと思っていたくらいです。

 もちろん,この魚眼ズームが同じ「トキナーブルー」を出してくれるとは限りません。でも,時代的にも大なり小なり同じ方向を向いているでしょうし,少なくともタムロンのような傾向ではないと思います。

 だとすれば,この値段で,しかも広角域で,トキナーブルーが楽しめることになります。これはおいしい。

 ただ,今さらこのスペックのレンズを新品で買うのも,ちょっと勇気がいります。ということは,中古を探すことになるわけです。

 AT-X107DXという名前のこのレンズは,ロングセラーではありますが,大ヒット商品ではないでしょうし,そんなに球数があるとは思えません。でも,買った人の多くが「だめだ使いこなせない」とさっさと売りに出している可能性もあり,数は少ないけど値段は安いというレンズかも知れません。

 探してみると,中野の某店で,程度がAランクのニコン用が26000円。他に在庫はないようですし,他のお店では在庫すらありません。むむむ。

 現物を見ないままで中古を買うことは,必ず1つや1つがっかりさせられるものなのですが,いちいち中野に出向けませんし,確認したところで結局買うのですから,もう買ってしまいましょう。Aランクという言葉を信じて・・・

 届いたものは,キャップくらいしか付属品がない状態で,レンズ本体は綺麗で使用感も少ない良品でした。ちょっと当て傷のようなものがありますが,ほとんど気になりません。

 問題はフロントレンズキャップでして,フードに被せるものなのですが,分厚いアルミで出来た非常に質感の高いものなのですが,コイツの表面に傷がたくさんあるのです。

 なにか,シールでも貼り付けたものを無理に剥がして,ゴシゴシ擦ったような感じの擦り傷で,随分目立ちます。安いものならキャップだけ別に買うかと探してみましたが,あいにくアルミ製なので非常に高価とわかり,あきらめました。

 ちゃんと調べていませんがこれ,ペンタックスのFA43mmやFA77mmのキャップとよく似ています。

 手に取ってみると,これがなかなかずっしりとして,いい質感です。小型で取り回しもいいのですが,ちゃちな感じはせず,見た目に反して凝縮感があります。設計はペンタックスだということらしいですが,さもありなん,という感じがします。

 ズームもフォーカスも,可動部分も滑らかです。4万円そこそこで売っているレンズとは思えないです。

 実際に撮影してテストをしますが,光学的には問題なし。さすがに暗いですし,画像も高価なズームに比べるとさっぱりですが,そこはやはり一眼レフ用,ちゃんとした画像が撮影出来ます。

 D850はAPS-Cにクロップすると,撮影エリアの外側が黒く塗りつぶされてファインダーに投影されます。ですのでこのレンズでもなんら問題不自由を感じる事なく使えるわけですが,12mmという超広角の世界に見慣れた人でも,画面がグイーンと曲がる魚眼の面白さは,ファインダーを見ただけで感じられることでしょう。

 ということで,何枚か撮影してみます。このレンズは14cmまで寄れるありがたいレンズで,これだけ寄れれば魚眼も超広角も怖くありません。魚眼は,中央部は歪みが少なく,外に行けば大きく歪むレンズなわけですから,ぐっと寄って被写体を真ん中に据えることは必ず必要になります。

 くっつくんじゃないかと思うほどに近寄った娘の顔を撮影し,本人に見せてみると,にやっと笑ってから「フィッシュアイだ」とうれしそうにいいます。この歪みを表現手法として使うのは難しいですが,魚眼も含めた広角はとにかく「寄る」ことが基本です。

 その上で,180度言う視野角を使い,ぱーっと目の前の画像を一網打尽にするというのはなんと気持ちのいいことか。特に縦位置でいけば,足下から空まで全部入り込んできます。これは面白いです。

 機会があれば,D850をAPS-Cに固定して,このレンズだけで外に出てみたいところです。きっと面白い景色を切り取ることができるでしょう。同時に,バリエーションの少ない,どっかで見たことのあるような写真が量産されることにもなりかねず,そうしたつまらなさに,案外がっかりすることになるかも知れません。

 

GPSDOが壊れたので修理

  • 2019/07/08 13:36

 先日,ふと自作のGPSDOのパネルに目をやると,OCXOの制御電圧を示すメーターが振り切れていました。PLLが特区していて,10MHzをきちんと出力しているときは中央に来るようにしてありましたので,振り切れるというのは明らかに故障で,出力も10MHzではなくなっています。

 このGPSDOは2016年8月に完成したもので,その後大きなトラブルもなく,うちの基準クロックとなってくれていました。

 これはいかんと,あわてて詳細を調べます。

 調べてみると,周波数を制御する電圧が,条件と下限を行ったり来たりしている状態でした。つまり,PLLが全くロックしていない状態です。

 しかし,これほど制御電圧がへんかしているのに,出力周波数が変化しない(フラフラと変動はしている)のもおかしいと,OOCXOのVC端子に,電源器を繋いで電圧を動かしてみました。

 しかし,周波数が全く変化しません。

 周波数が変化しないなら,PLLがロックするはずがありません。OCXOの制御電圧端子に直結した電源器の電圧を動かしても周波数が変化しないのですから,もうこれはOCXOの故障です。

 このOCXOはヤフオクで手に入れたもので,4000円ほどで購入しました。ダブルオーブンではないのですが,何かの役に立つだろうとGPSDOの自作を始める少し前に買って置いたものでした。

 24時間運転とは言え,3年で壊れるとは・・・

 まあ,ジャンク品なんていうのはそんなもんです。

 気を取り直して,修理を試みます。OCXOはGPSDOのキーパーツです。これが壊れた以上は交換しかありません。

 そこで,やはりオークションを探して2つ手に入れました。1つは小型のシングルオーブンで,5Vで駆動するもの。もう1つは12Vで駆動するもので,ダブルオーブンです。

 どちらも電圧制御が可能と書かれていませんが,端子の数や周波数調整用のトリマがないことを考えると,電圧制御で間違いなさそうです。

 届いたので早速確認をしますが,5Vの小型のものは問題なく,1Vで2Hz程度の周波数の可変が出来ています。もう1つは動作が怪しい。

 12Vのダブルオーブンのものは,GPSDOを5V用に改造しなくて済みますし,しかもダブルオーブンですので,さらに高性能化が図れます。一石二鳥とこのOCXOに交換することを本命としていたのですが,動作が怪しいとあれば慎重にならざるを得ません。

 古いOCXOを取り外してから,ダブルオーブンのOCXOをミノムシクリップのコードで仮接続します。するとやっぱりロックがかかってくれません。

 しかも,OCXOに手書きで書かれた端子名に誤りがありました。信じて電源を入れていると,ヒーターのONとOFFで周波数が大きく変動します。どうも,Vref端子を電源と間違えて書いてあったようです。

 正しい端子につなぎ替えてもやっぱり周波数は制御電圧で変化しません。きちんと調べてみると,通常2Hz/1V程度であるはずの所,0.5Hz/1Vくらいです。しかも,電源電圧で圧12Vをかけても,10MHzを越えてくれません。これでは,ロックなどかかるはずがありません。

 しかも,制御電圧を電源電圧と同じにしても,周波数がフラフラと変動して定まりません。2から3Hzの変動がありますので,これはOCXOとしては不適切です。

 うーん,どうも壊れているようです。

 残念です。一応10MHzが出ている事は画像に出ていましたし,実際にそれらしい周波数は出ていますが,GPSDOにつかえるようなものではありません。

 もう,このOCXOはあきらめました。嫁さんは「詐欺だ」といってましたが,まあジャンク品ですし,仕方がないところでしょう。

 もう1つの5VのOCXOは非常に調子が良いです。5Vを外部から与えてGPSDOに繋いで見ると,きちんとPLLがロックします。

 そこで,基板に12Vから5Vにする7805を追加し,ここから5VをOCXOに供給することにしました。

 動き出せば,ゆっくりPLLがロックしていきます。24時間後には,10mHzの桁がポロポロと1から2くらい,変動する程度まで安定してきました。

 ダブルオーブンを奢ることは出来なかったのですが,従来と同じ程度の最終性能は出ていそうな幹事です。

 ちなみに,故障前のOCXOと同じ型番のものをebayで見つけ,オーダーしましたが,出荷前のテストで不良品である事がわかり,キャンセルされてしまいました。

 残念ですが,仕方がありません。

 ダブルオーブンのOCXOは故障品を掴まされました。釈然としませんが,オークションにはこういうリスクは折り込み済みで,仕方がないなあとあきらめました。

 しかし,ジャンク品だけに,簡単に壊るもんですね。予備を買っておいた方がいいかもしれません。

instax mini LiPlayはチェキの正常進化版なのか

  • 2019/06/26 13:00
  • カテゴリー:散財

 7,8年ほど前に,正月の福袋に「チェキ」が入っていたことがありました。数千円で買える最も安いチェキの,当時の型落ち品でした。

 デジタルカメラが大きく進歩しているときで,フィルムが少しずつ店頭から消え,どこでも出来た現像が出来なくなっていき,まず真っ先にインスタント写真など消えてなくなるだろうと,そう信じて疑わなかった時代です。

 1枚1枚,じーっという音と共に紙切れが吐き出され,しばらくすると画像が浮かび上がってくるという神秘性に,面白いなあと思った事は私にもありましたが,実用性を考えても,画質を考えても,そしてコストを考えても,どうしても肯定的な気分にはなりません。

 やがて子供が生まれ,彼女が私の写真を撮っている姿を真似するようになると,一眼レフは当然として,簡単操作が売りのコンパクトデジタルカメラでさえも,子供ににとって難しい事がわかってきました。

 操作が難しいのではありません。操作によって結果がどう変わるかを,とにかくたくさん「暗記」しなければならないのです。

 電源をいれ,シャッターボタンを半分押せばAFが作動し,画面の真ん中の四角が緑色ならピントが合っていて,赤ならピントが合っていない,そこからさらに押し込めばシャッターが切れる。

 たったこれだけの事,誰にもわかると思うでしょう。

 しかし,

 シャッターボタンってなんだ?
 半押しってどのくらい押すことだ?
 ピントってなんだ?AFってなんだ?
 真ん中の四角ってなんだ?
 ピントが合うってなんだ?
 シャッターってなんだ?切れるもの?

 我々は,ある程度の基礎的知識をベースにあらゆるものを使っています。ものを作る人も,そういう基礎的知識のある人を対象にして作っていますし,そうしないととてもものを完成できません。

 でも,結局,ここでやりたいことは単純に,目の前の光景を紙に印刷したい,それだけなのです。

 その上,この難しい操作のあとには,本当の地獄が待っています。

 SDカードを取り出し,PCに転送,プリンタをUSBでつなぎ,印刷用の紙をプリンタに入れて,印刷用ソフトを立ち上げ,印刷する。おっと,インク切れ?筋が入るけどどうしたらいい?

 もうくどくど書きません。

 繰り返しますが,やりたいことは目の前の光景を紙に印刷したいだけです。

 こんなの屁理屈だ,現実的にこんなに説明しないといけない人などいない,と私も思っていました。しかし,いるんですね。

 そう,子供です。

 子供だから知らないわからない,のではありません。その人にとって,初めての事だからわからないのです。子供は初めての事がほとんどです。だから子供はなめられますが,大人だって初めての事には右往左往するでしょう。

 しかし,子供も,自分がやりたいことははっきりしています。目の前の光景を紙に印刷したいのです。

 私は,小さなデジカメを子供に渡し,せめてデータとして目の前の光景を取りこむところまではやってもらおうと頑張りましたが,何もしらない,すべてが初めての子供には,説明不能である事を思い知り,そこに立ち尽くしてしまいます。

 無理だ,子供には無理だ。

 しかし,私の前に一条の光が差し込みます。

 チェキです。

 レンズを引っ張れば電源が入ることで,電源とは,の説明が不要。
 パンフォーカスなのでAFもピントの説明も不要。
 シャッターボタンに半押しがないので,半押しの説明が不要。
 カメラを相手に向けて「唯一の」ボタンを押せば,紙が出てきて画が出てくる。
 電池が数年間もつ。交換したことなどない。

 すごい,すごすぎます。

 もう一度繰り返しますが,やりたいことは,目の前の光景を紙に印刷することです。デジカメだととても印刷までたどり着けないのに,チェキならあっという間に,自分のしたいことにたどり着きます。

 私は,感激しました。チェキが大好きになりました。

 そして,子供に,チェキをどんどん使わせました。

 低画質? 出力サイズが決まっているのに画質云々なんか関係ない。
 高コスト? これだけ簡単なのは,難しい処理がフィルム側に入っているから。

 そして,このシンプルな「ボタンを1つ押せば紙にその光景が印刷される」ことを実現する仕組みを作ることは,案外難しい事にも気が付きます。そして最も簡単な仕組みこそが,インスタント写真技術です。

 感光,現像,定着,色の調整など,難しい事はすべてフィルム側が担います。だからユーザーは難しい事はなにも考える必要はありません。一方で,ユーザーが調整を行う余地はありません。
 
 そんなわけで,私は子供に,写真を撮影することも面白さ,ひいてはその本質である「なにをどう撮るのか」に興味を持ってもらうことにしました。そう,デジタルカメラは,写真の本質を経験し楽しむために,越えなければならない壁が多すぎるのです。

 果たして,チェキは,子供のカメラになりました。やがて,名刺サイズの印画紙があちこちに山積みになりました。

 もったいないからなんでもかんでも撮るなよ,という言葉は,チェキを与えた大人が発してはいけない言葉とわかっています。しかし,私の現実の経済状態が,この言葉をどうしても口から出るのです。

 そんなある日,ハイブリッド型のチェキが登場したというニュースが耳に入ってきます。曰く,デジタルカメラとチェキへのプリンタを一体化したものだそうです。

 私の最初の印象は「賢い人がウンウンいって考えた結果閃いた,1周回って元のところに戻ってきたアイデア」です。直接光を当てて感光させればいいようにせっかく作ってある印画紙を,なぜわざわざデジタルで撮影し,このデータを元に印刷をせねばならないのか・・・

 どうも,印画紙をデジタルで感光させたら面白そうだという思いつきから,そのメリットを後付けで考えて商品化を押し通したように見えて,それはチェキのあるべき姿ではないと思えたのです。

 この考えは今でも変わりません。しかし,現実的な問題として,デジタル写真を印刷することを考えた場合に,本体のプリンタ機構を簡単にするには,やはり紙の側に色を出す仕組みを入れるしかなく,そしてそれは今のチェキの印画紙が最適であるという事実があります。

 この時登場したハイブリッド型のチェキは,スクエアフォーマットの大型のものでした。我々が一般にチェキと呼んでいる名刺サイズのInstax miniというフォーマットではありません。

 そして先日,いよいよこの名刺サイズのフォーマットでハイブリッド型が登場しました。それがinstax mini LiPlayです。

 チェキの面白さがわかってきた私としては,フジが作るんだから印画紙の画質はもっと高いに違いない,チェキの画質が悪いのはきっと光学系がプアだからだと思っていました。事実,子供の使っていた廉価なチェキは,プラレンズです。

 真面目な光学系のチェキはどうも売っていないようで,もったいないなあと思っていた所にこのハイブリッド型の登場です。ここで初めてハイブリッド型への期待を私は持つに至ったのでした。

 instax mini LiPlayは,ハイブリッド型にしたことによる明確なメリットがあります。1つは本体が小さくなったこと。チェキは印画紙に直接露光しますので,投影面はずばりあの印画紙のサイズを持っていますから,当然光学系は大きくなります。(一方で精度はゆるくなるので,安く作る事ができるはず)

 しかし,一度デジタルにするなら,光学系は小型に出来ます。小さいCMOSセンサ(instax mini LiPlayは1/5インチです)にオートフォーカス機構やレンズなどの光学系を1つにまとめたカメラモジュールが携帯電話やスマートホン用に安く用意されているので,これを使えば小さく出来ます。

 AFのように,レンズを動かす機構が入れば,マクロモードを入れることも簡単です。つまり寄れるチェキが誕生します。

 子供が失敗する撮影の多くは,近寄りすぎでした。そりゃそうです,子供は近づいて今見ているものを撮影したいのですから。

 パンフォーカスのチェキでは60cm程度が限界で,それでは子供が手のひらに載せるような大きさのものでも,豆粒のような大きさでしか撮影出来ません。

 まして,素通しのファインダーしかないチェキで,撮影結果を正確に予想するなど難易度が高すぎます。近寄るとぼけてしまう,近寄るとファインダーの位置から被写体がズレてくる(パララックス)ということは,子供には窮屈な制約です。

 instax mini LiPlayは,寄れることがとても大きなメリットだと思います。

 プリンタ機構はすでにフジが選考して商品化しているので,得に問題になりません。極論すれば,instax mini LiPlayとはこのプリンタのどこかに,カメラモジュールを押し込んでしまえば完成するような商品です。

 消費電力が増大するので乾電池ではどのみち無理で,そうすると小型の充電池を内蔵することになります。そうするとさらに小さく出来ます。

 そしてそのプリンタについても,小型化が可能です。印画紙とカートリッジのサイズが決まっているので面積は小さく出来ないかも知れませんが,光学系に奥行きが必要な従来のチェキに比べ,有機ELで出来た印刷ヘッドを密着させて印刷するプリンタは,薄く作る事が可能です。

 小さいカメラと薄いプリンタを電線で繋いで,1つの箱に入れたものが,このinstax mini LiPlayというわけです。

 一度デジタルになってしまえば,何でもありです。ストレージに蓄え,失敗写真を印刷せずに済むのは当然として,フレームを追加したり画像を加工したりすることは,誰でも思いつくことでしょう。

 カメラの画像をPCやスマホに転送することも出来るし,PCやスマホの画像を印刷することも可能になります。

 これだけでは足りないと感じたフジは,音声をクラウドに置き,ここへのアドレスをQRコードで印刷することで,短い音声を写真に取り込む事にしました。これも新しい機能でしょう。

 それで,価格はプリンタ単体よりもちょっと安いくらいです。カメラの値段はもう無料みたいなものです。しかしその分,全体的な安物感は拭えなくなってしまいました。

 しかし,このチェキには,スマホプリンタとしての機能に加えて,高画質化というカメラにとっての本質的な改良と,ランニングコストの大半を占める印画紙の無駄な消費を抑えるというコストダウンを期待出来る製品と,私の目には映りました。

 チェキが我々家族の標準ツールとなっている現状から鑑みて,これは買うしかありません。

 予約して発売日に届いたinstax mini LiPlayですが,インプレッションを簡単に書きます。


(1)質感

 歴代最小とまで謳っている本体の大きさは,手に取ってみると想像以上の大きさに面食らいます。もっと小さく,もっと凝縮感のあるものを期待しただけに,叩くと「カンカン」と無粋な音を発する筐体に,まず最初に幻滅しました。

 実際に大きいという事もそうですが,多用された曲面とデザインの妙技によって小さく見えているはずですから,実際には見えている以上に大きいはずです。事実,大きさから来る持ちにくさまでは,隠し切れていません。

 プラスチッキーで,ああこれはやっぱりチェキ一族なんだなあと思うのですが,これだけ設計に無理をしていなければ,落としたりぶつけたりしても,壊れることなどないんじゃないかと思います。


(2)画質

 注目点である画質ですが,これもちょっと期待外れでした。本体で撮影,本体で印刷してみると,銀塩のチェキとそっくりの画質で印刷されます。

 スマホから印刷してみましたが,これもまあチェキで撮影したかのような見事な画像処理です。色合いといいコントラストといい白飛びの具合といい,チェキの雰囲気をこれほど残せるものかと感心しました。

 カメラのは500万画素と10年前の携帯電話並み,一方の印刷は312dpiで階調ありですのでかなり高画質なはずですが,カメラの画像はそれなりに綺麗でも,印刷するとチェキになります。
 
 原因が印画紙の性能によるものなのか,それとも画像処理でわざと銀塩のチェキと同じ程度の画質を落として印刷しているのかわかりません。しかし,フィルターによって画質がそれなりに変化していることを考えると,印画紙の性能の限界によって画質が低下しているとはちょっと言い切れないように思います。


(3)使い勝手

 使い勝手は悪いです。まず説明書が不親切で,手に取ってもオロオロするだけです。

 設定の一部はスマホのアプリからしか出来なくなっていますが,それがどの機能なのかは説明書には書かれていませんので,試行錯誤が必要です。

 また,広くハイブリッド型を標榜する製品の宿命である,それぞれの機能の切り替えですが,このカメラについては画像の再生と印刷に独立したボタンはあるのに,撮影モードに移行するボタンがシャッターボタンと兼用になっています。私はこれがなかなか理解出来ず,カメラモードへは電源投入時にしか入れないものだと思って,いちいち電源を切っていたくらいです。

 LCDの画質も悪く,解像度も足りなければ発色もコントラストも悪いです。なにより,視野角の狭さには閉口もので,少し横から見ると色が派手に転びます。娘は,こういう機能だと思っていたほどです。

 UIとしても,ボタンへの機能割り当てが直感的ではなく,暗記しないといけないものが散見されます。悪いことにグローバルモデルゆえボタンに付いているのはアイコンで,そのアイコンもわかりにくいものです。

 私自身が操作方法を習得するのに30分ほどかかりましたが,これを娘に教えるのにとても苦労しました。

 もう1つ,許せないのが通信についてです。

 プリンタとして使う時にはスマホとBluetoothで繋ぎます。しかし,同時にペアリングしておける台数が1台に限られているのです。

 複数のスマホと共有出来ず,一々ペアリングを削除しなければなりません。プリンタだけではなく,スマホの設定からも削除が必要なので,とても面倒です。

 スマホやタブレットは一人一台です。家族で共有出来ないと不便で仕方がありません。

 セキュリティ面が理由ではないかと考えましたが,スマホから可能な操作が少ないこともあり,複数のスマホのペアリング情報を残しておくことは難しくないはずです。

 もっとも,設定がスマホのアプリから行う現在の仕組みは,本体の設定状態とアプリの設定の記録とを同期させねばなりません。Aさんが設定したあとBさんが設定をいじり,またAさんに戻ってきたとき,Aさんのスマホに残っている設定状態との食い違いをどこで同期させるのか,真面目に考えないと破綻しそうです。

 個人的には,接続したスマホごとに設定を切り替えるのが良さそうですが,それだとスタンドアロンで使う時にどの設定で使うのかという問題が残ります。ということは,やっぱりスマホのアプリで設定をさせるという現在の仕様そのものに無理があったという事になるでしょう。

 もう1つ,せっかく低画素なカメラなのに,画像をPCなりスマホに転送する方法がないのです。マイクロSDで持ってくればいいのですが,なぜBluetoothで転送できるようにしなかったのでしょうか?これも疑問が残る,不便な仕様の1つです。


(4)面白さ

 実のところ,一度デジタルを経由するかどうかは,紙の写真をすぐに手に入れたいという目的に対して,どうでもいい些末な事なのかも知れません。撮影し,選んで,印刷を行うと,いつものチェキの写真が出てくるという事に,ややこしい背景は関係がありません。

 撮影は手軽に,しかし印刷はよく考えてということで,撮影と印刷が同時に起こるかつてのチェキに比べて,悩む「壁」の場所と大きさが再調整されたものと考える事ができるでしょう。

 そして,撮影と印刷の2点間には,フレームの追加とフィルタによる加工というデジタルならではの遊びがはいります。

 娘はこの2つが面白いらしく,私としてはここをもっと強化するして欲しいなあと思いました。


(5)電池寿命

 電池がすぐ切れます。娘もびっくりしていました。

 充電がUSBからになったことはよいのですが,3時間ほど充電にかかってしまい,その間は使えなくなるのに,簡単に電池が切れてしまいます。

 LCDの輝度を落とすとか,LCDをOFFにするとか,そういう低消費電力化の設定があるかと思いましたがありません。

 原理的なものは仕方がないとして,以前のチェキが,いつ電池を交換したかを忘れてしまうくらい電池が切れなかったことを考えると,今回のモデルはあまりに電池寿命が短すぎるように思います。


(6)全体として

 これはなんとも難しいカメラです。歴代最小のチェキとみるか,スマホの周辺機器とみるか,安い低画質デジカメとみるか,画像を加工できるチェキとみるか,見方によって評価は変わると思います。

 個人的には,画質と質感,大きさと電池寿命で大きく期待から外れてしまった感は否めず,それがこのカメラの魅力を半減させているのですが,嬉々として使っている娘を見ていると,そんなものはどうでもいいのかも知れない,とそんな風にも思えてきました。

 私が残念だと思った点は,おそらく次のモデルの改良点として必ず検討されることだとは思いますが,小型軽量は別にして,高画質化が果たしてチェキのユーザーの望むことかといわれれば,それは違うような気もします。

 オモチャと割り切るにはちょっと高価ですし,スマホのカメラにも画質で負けているので,カメラ代わりにはなり得ません。

 かといって半額の光学式チェキとそんなに出来る事も違ってこないわけで,私の中では,これは結局,賢い人がウンウン唸って1周回って原点に戻ってきたチェキだということに,なってしまいました。

 楽しいのは事実です。子供も面白がって毎日使っています。これが来てから家族で遊ぶことが増えました。

 ただ,それはきっとチェキの面白さが根本にあると思うので,安いチェキとよく比べて選んで欲しいなあと思います。

 夏休みが間近に控えています。チェキを自分の道具にした私の子供が,この夏をどんなふうに切り取って残すのか,楽しみです。

 

F2の分解清掃で小ネタ2つ

 完全な機械式カメラであるF2フォトミックがまともに動き出して,あとはフィルムでの試写を行うのみとなったのですが,その後の小ネタを2つほど。

(1)ファインダーアイピースバラバラ事件

 さすがに50年も経過すると,プラスチックは分解し,柔らかくなったり欠けたりします。ひびが入ってボロボロと崩れていくこともしばしばです。

 プラスチックは安いし,自由な形に成型できるし,強いし美しいし,色も選べるということで,今やこれなくしていかなる工業製品も成り立たないのですが,問題の1つは経年変化に弱いことがあると思います。

 実際,金属で作られた大昔のカメラは修理可能でも,プラスチックを多用した比較的新しいカメラは修理出来ないことがごく普通に起こっています。

 ニコンFもF2も機械式カメラであり,壊れても修理可能だといわれていますが,プラスチック部分については例外で,ここが壊れてしまうと別の方法を使って修理するしか方法がなかったりします。F2の電池ケースの割れは,もはや定番の故障です。

 で,私のF2もようやくにしてボディとファインダーが組み上がって,暫定的に露出計の調整も終わって一息つき,改めて眺めていると,アイピースがねじ込まれる部分のプラスチックにひびが入っているのを見つけました。

 これはまずい。今のうちに手を打たないとえらいことになります。

 急いでアイピースを取り外し,周辺の張り皮を剥がします。2本のネジが出てきますが,これを緩めて,接眼レンズがくっついているこのブロックを取り外します。

 よく見てみると,上と下にそれぞれひびが入っていて,上のひびはもう少しで完全に破断しそうなほど長く伸びています。

 更によく見ると,ビスの穴から横方向にひびが入っていて,もうボロボロと壊れてしまいそうです。

 プラスチックには接着剤なのですが,ここは最強の接着法である「溶着」を使います。アクリル用接着剤を隙間に流し込み,ぐっと押しつけておくと,接着面が溶けてくっつきます。くっついてしまえば元のように一体化するので,割れてしまったことすらなかったように,元の強度が戻ります。接着の強さは,力を加えてねじったら,接着部分ではなく他の部分が壊れてしまうほどです。

 ただし,寸法がちょっと変わってしまいます。溶けるのですから当然です。

 それと,接着剤とはいいつつ,揮発性の有機溶剤ですので,乾いてしまうのはすぐです。しかし,溶けたプラスチックが固着し,元の強度を発揮するには最低一晩放置しなくてはいけません。1時間や2時間程度で力を加えると簡単に剥がれてしまいます。

 ということで,完全で破断すると位置合わせも難しくなるので,割れ筋のうちに修復です。

 裏側の押さえ金具,接眼レンズ,そしてゴム枠の3つを取り外します。順番と向きはメモしておきます。

 そして割れ筋の部分を両側から押さえて,隙間が小さくなることを確認します。そしてその割れ筋に,接着剤を流し込みます。すっと入り込んで行きますが,ここで力を緩めず,出来ればテープやゴムで密着させておきます。これで一晩です。

 あまり強く押すと,溶けた部分がはみ出してしまい,寸法が変わってしまいます。また,力を緩めると隙間が余計に広がってしまい,接着そのものが出来なくなってしまいます。

 事故は個々で起きたのですが,指で挟むようにして押さえつけていたのところ,なんと別の部分がひび割れてしまい,そこが完全に破断してしまいました。大慌てで部品を集めてあわせて,さらに接着剤を流し込みます。

 ようやく元の形に戻りました。翌朝様子を見ると,幸いうまく接着できているようです。

 せっかくですので,接眼レンズも綺麗にクリーニングしておきます。そしてゴム枠,磨いた接眼レンズ,そして押さえ金具を戻し,ファインダーに取り付けてビス留めです。

 しっかり修理が出来ていることが確認出来たら,張り皮を貼って完成です。どうも,視度補正レンズを強くネジコンd事も悪かったような気がします。少しゆるめにしておきましょう。

 この,アクリル用接着剤でプラスチックを溶着する方法は最近私が多用するもので,スチロールはもちろん,接着が難しいとされるABSでも強力に接着できます。ポリプロピレンやPETなんかはやっぱりダメなんですが・・・

 F2の電池ケースもこれで修理をしていますし,結果は上々です。

 ただ,古いプラスチックの修理は,溶着した部分こそ元通りになるかも知れませんが,全体的に脆くなっていますから,他が割れてしまうかも知れません。
 

(2)シャッタースピード簡易テスタ

 メカだけで1秒から1/2000秒を作り出すF2のメカシャッターは,カメラが精密機械といわれていた時代があったことを我々に思い出させてくれますが,電子制御シャッターと違って精度が心配なのも事実です。

 特に,高速側のシャッターは無理をしているのか,最高速が出ていないことが多くのカメラで見られたそうです。(アサヒカメラのニューフェース診断室のバックナンバーを見てみて下さい)

 そういう話になってくると,自分のF2も心配になってくるものです。多少のズレはいいとしても,大幅に狂っていないかだけは確認しておきたいです。

 アナログオシロを使って簡易チェックはやっていますし,結果1/2000秒で問題ないことをある程度確認してありますが,もうちょっとちゃんと,楽に確認出来ないものかと思っていたところ,フォトトランジスタがONになる時間を測定することを思いつきました。

 調べてみると随分と古典的な方法で,オシロスコープを持っているカメラ修理を趣味とする人ならほぼ全員がやっているんじゃないでしょうか。

 フォトトランジスタは手持ちの関係でTPS603Aという東芝の廃品種を使います。フォトトランジスタですので速度は遅く,電流を流しても数msの遅れがあります。

 1/1000秒なら1msですので,あまりに遅いと正確に測定出来ませんが,かといってフォトダイオードは使うのが面倒ですし,スローシャッターを確認出来るだけでも意味がありますので,さっさと作ってしまいます。

 アクリル板を適当にカットし,真ん中に3.2mmの穴を開けます。ここにTPS603Aを押し込み,そばに両面テープで貼り付けた基板に,足をハンダ付けします。

 基板には470Ωの抵抗も取り付け,電源とGNDと出力の3つの端子を出しておきます。

 電源は10Vあたりをかけ,オシロスコープを繋ぎます。

 カメラの裏蓋を外して,フィルムの代わりにアプリル版をテープで固定します。ミラアップし,マウント側からマグライトで光を当て,シャッターを切ります。

 おお,ちゃんとシャッターが開いたときにONになっています。

 さすがに1/1000秒くらいになるとなまってしまいますが,F3でも測定を行って相関を取っておけば,結果を目安くらいには使う事が出来るでしょう。

 また,本当はシャッターは走り始めと走り終わりで速度が違っていて,それが露光ムラの原因になります。だから,シャッターが開いている時間を測定する前に,シャッター幕の走行速度を合わせて置くのが必須なのですが,それはそれでまた別の測定器が必要なので,今回はやめます。

 横走なら,左側と右側のシャッターの開いている時間を比較すれば,幕速が出ているかどうかもわかるでしょうし,今回はこれでいいです。

 さて,結果ですが,X接点よりも低いスローシャッターは完璧でした。高速側も1/100秒まではほぼ完璧,1/2000秒が速いということがわかりました。

 ただ,速いと言っても,立ち上がりと立ち下がりがF3よりもなだらかで,ダラダラと露光している感じです。とはいえ,どんなシャッターの動きがこういう露光に結びつくのか私はちょっとわからず,もしかするとシャッター幕とフォトトランジスタとの距離が開いていたとか,光源との光軸が大きくズレて斜めから光が入ったりしていたのかも知れません。

 完全に開いている部分は500us以下ですが,開き始めるて完全に閉じきるまでの時間は70usを越えているので,ならすと500us程度になるでしょう。ですのでトータルで1/2000秒の露光時間になっているのだと思う事にします。

 本当は,F3だけではなく,F100などの縦走りの電子制御シャッターも測定したかったのですが,F100は裏蓋があいているとシャッターが動かないようになっていますし,SFXnはシャッターは動きますが開いてくれません。

 もう面倒くさくなったので,ここで終了。当初の目的であった,F2のメカシャッターがそれなりに精度で動いていたことがわかっただけで十分です。

 

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