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instax mini LiPlayはチェキの正常進化版なのか

  • 2019/06/26 13:00
  • カテゴリー:散財

 7,8年ほど前に,正月の福袋に「チェキ」が入っていたことがありました。数千円で買える最も安いチェキの,当時の型落ち品でした。

 デジタルカメラが大きく進歩しているときで,フィルムが少しずつ店頭から消え,どこでも出来た現像が出来なくなっていき,まず真っ先にインスタント写真など消えてなくなるだろうと,そう信じて疑わなかった時代です。

 1枚1枚,じーっという音と共に紙切れが吐き出され,しばらくすると画像が浮かび上がってくるという神秘性に,面白いなあと思った事は私にもありましたが,実用性を考えても,画質を考えても,そしてコストを考えても,どうしても肯定的な気分にはなりません。

 やがて子供が生まれ,彼女が私の写真を撮っている姿を真似するようになると,一眼レフは当然として,簡単操作が売りのコンパクトデジタルカメラでさえも,子供ににとって難しい事がわかってきました。

 操作が難しいのではありません。操作によって結果がどう変わるかを,とにかくたくさん「暗記」しなければならないのです。

 電源をいれ,シャッターボタンを半分押せばAFが作動し,画面の真ん中の四角が緑色ならピントが合っていて,赤ならピントが合っていない,そこからさらに押し込めばシャッターが切れる。

 たったこれだけの事,誰にもわかると思うでしょう。

 しかし,

 シャッターボタンってなんだ?
 半押しってどのくらい押すことだ?
 ピントってなんだ?AFってなんだ?
 真ん中の四角ってなんだ?
 ピントが合うってなんだ?
 シャッターってなんだ?切れるもの?

 我々は,ある程度の基礎的知識をベースにあらゆるものを使っています。ものを作る人も,そういう基礎的知識のある人を対象にして作っていますし,そうしないととてもものを完成できません。

 でも,結局,ここでやりたいことは単純に,目の前の光景を紙に印刷したい,それだけなのです。

 その上,この難しい操作のあとには,本当の地獄が待っています。

 SDカードを取り出し,PCに転送,プリンタをUSBでつなぎ,印刷用の紙をプリンタに入れて,印刷用ソフトを立ち上げ,印刷する。おっと,インク切れ?筋が入るけどどうしたらいい?

 もうくどくど書きません。

 繰り返しますが,やりたいことは目の前の光景を紙に印刷したいだけです。

 こんなの屁理屈だ,現実的にこんなに説明しないといけない人などいない,と私も思っていました。しかし,いるんですね。

 そう,子供です。

 子供だから知らないわからない,のではありません。その人にとって,初めての事だからわからないのです。子供は初めての事がほとんどです。だから子供はなめられますが,大人だって初めての事には右往左往するでしょう。

 しかし,子供も,自分がやりたいことははっきりしています。目の前の光景を紙に印刷したいのです。

 私は,小さなデジカメを子供に渡し,せめてデータとして目の前の光景を取りこむところまではやってもらおうと頑張りましたが,何もしらない,すべてが初めての子供には,説明不能である事を思い知り,そこに立ち尽くしてしまいます。

 無理だ,子供には無理だ。

 しかし,私の前に一条の光が差し込みます。

 チェキです。

 レンズを引っ張れば電源が入ることで,電源とは,の説明が不要。
 パンフォーカスなのでAFもピントの説明も不要。
 シャッターボタンに半押しがないので,半押しの説明が不要。
 カメラを相手に向けて「唯一の」ボタンを押せば,紙が出てきて画が出てくる。
 電池が数年間もつ。交換したことなどない。

 すごい,すごすぎます。

 もう一度繰り返しますが,やりたいことは,目の前の光景を紙に印刷することです。デジカメだととても印刷までたどり着けないのに,チェキならあっという間に,自分のしたいことにたどり着きます。

 私は,感激しました。チェキが大好きになりました。

 そして,子供に,チェキをどんどん使わせました。

 低画質? 出力サイズが決まっているのに画質云々なんか関係ない。
 高コスト? これだけ簡単なのは,難しい処理がフィルム側に入っているから。

 そして,このシンプルな「ボタンを1つ押せば紙にその光景が印刷される」ことを実現する仕組みを作ることは,案外難しい事にも気が付きます。そして最も簡単な仕組みこそが,インスタント写真技術です。

 感光,現像,定着,色の調整など,難しい事はすべてフィルム側が担います。だからユーザーは難しい事はなにも考える必要はありません。一方で,ユーザーが調整を行う余地はありません。
 
 そんなわけで,私は子供に,写真を撮影することも面白さ,ひいてはその本質である「なにをどう撮るのか」に興味を持ってもらうことにしました。そう,デジタルカメラは,写真の本質を経験し楽しむために,越えなければならない壁が多すぎるのです。

 果たして,チェキは,子供のカメラになりました。やがて,名刺サイズの印画紙があちこちに山積みになりました。

 もったいないからなんでもかんでも撮るなよ,という言葉は,チェキを与えた大人が発してはいけない言葉とわかっています。しかし,私の現実の経済状態が,この言葉をどうしても口から出るのです。

 そんなある日,ハイブリッド型のチェキが登場したというニュースが耳に入ってきます。曰く,デジタルカメラとチェキへのプリンタを一体化したものだそうです。

 私の最初の印象は「賢い人がウンウンいって考えた結果閃いた,1周回って元のところに戻ってきたアイデア」です。直接光を当てて感光させればいいようにせっかく作ってある印画紙を,なぜわざわざデジタルで撮影し,このデータを元に印刷をせねばならないのか・・・

 どうも,印画紙をデジタルで感光させたら面白そうだという思いつきから,そのメリットを後付けで考えて商品化を押し通したように見えて,それはチェキのあるべき姿ではないと思えたのです。

 この考えは今でも変わりません。しかし,現実的な問題として,デジタル写真を印刷することを考えた場合に,本体のプリンタ機構を簡単にするには,やはり紙の側に色を出す仕組みを入れるしかなく,そしてそれは今のチェキの印画紙が最適であるという事実があります。

 この時登場したハイブリッド型のチェキは,スクエアフォーマットの大型のものでした。我々が一般にチェキと呼んでいる名刺サイズのInstax miniというフォーマットではありません。

 そして先日,いよいよこの名刺サイズのフォーマットでハイブリッド型が登場しました。それがinstax mini LiPlayです。

 チェキの面白さがわかってきた私としては,フジが作るんだから印画紙の画質はもっと高いに違いない,チェキの画質が悪いのはきっと光学系がプアだからだと思っていました。事実,子供の使っていた廉価なチェキは,プラレンズです。

 真面目な光学系のチェキはどうも売っていないようで,もったいないなあと思っていた所にこのハイブリッド型の登場です。ここで初めてハイブリッド型への期待を私は持つに至ったのでした。

 instax mini LiPlayは,ハイブリッド型にしたことによる明確なメリットがあります。1つは本体が小さくなったこと。チェキは印画紙に直接露光しますので,投影面はずばりあの印画紙のサイズを持っていますから,当然光学系は大きくなります。(一方で精度はゆるくなるので,安く作る事ができるはず)

 しかし,一度デジタルにするなら,光学系は小型に出来ます。小さいCMOSセンサ(instax mini LiPlayは1/5インチです)にオートフォーカス機構やレンズなどの光学系を1つにまとめたカメラモジュールが携帯電話やスマートホン用に安く用意されているので,これを使えば小さく出来ます。

 AFのように,レンズを動かす機構が入れば,マクロモードを入れることも簡単です。つまり寄れるチェキが誕生します。

 子供が失敗する撮影の多くは,近寄りすぎでした。そりゃそうです,子供は近づいて今見ているものを撮影したいのですから。

 パンフォーカスのチェキでは60cm程度が限界で,それでは子供が手のひらに載せるような大きさのものでも,豆粒のような大きさでしか撮影出来ません。

 まして,素通しのファインダーしかないチェキで,撮影結果を正確に予想するなど難易度が高すぎます。近寄るとぼけてしまう,近寄るとファインダーの位置から被写体がズレてくる(パララックス)ということは,子供には窮屈な制約です。

 instax mini LiPlayは,寄れることがとても大きなメリットだと思います。

 プリンタ機構はすでにフジが選考して商品化しているので,得に問題になりません。極論すれば,instax mini LiPlayとはこのプリンタのどこかに,カメラモジュールを押し込んでしまえば完成するような商品です。

 消費電力が増大するので乾電池ではどのみち無理で,そうすると小型の充電池を内蔵することになります。そうするとさらに小さく出来ます。

 そしてそのプリンタについても,小型化が可能です。印画紙とカートリッジのサイズが決まっているので面積は小さく出来ないかも知れませんが,光学系に奥行きが必要な従来のチェキに比べ,有機ELで出来た印刷ヘッドを密着させて印刷するプリンタは,薄く作る事が可能です。

 小さいカメラと薄いプリンタを電線で繋いで,1つの箱に入れたものが,このinstax mini LiPlayというわけです。

 一度デジタルになってしまえば,何でもありです。ストレージに蓄え,失敗写真を印刷せずに済むのは当然として,フレームを追加したり画像を加工したりすることは,誰でも思いつくことでしょう。

 カメラの画像をPCやスマホに転送することも出来るし,PCやスマホの画像を印刷することも可能になります。

 これだけでは足りないと感じたフジは,音声をクラウドに置き,ここへのアドレスをQRコードで印刷することで,短い音声を写真に取り込む事にしました。これも新しい機能でしょう。

 それで,価格はプリンタ単体よりもちょっと安いくらいです。カメラの値段はもう無料みたいなものです。しかしその分,全体的な安物感は拭えなくなってしまいました。

 しかし,このチェキには,スマホプリンタとしての機能に加えて,高画質化というカメラにとっての本質的な改良と,ランニングコストの大半を占める印画紙の無駄な消費を抑えるというコストダウンを期待出来る製品と,私の目には映りました。

 チェキが我々家族の標準ツールとなっている現状から鑑みて,これは買うしかありません。

 予約して発売日に届いたinstax mini LiPlayですが,インプレッションを簡単に書きます。


(1)質感

 歴代最小とまで謳っている本体の大きさは,手に取ってみると想像以上の大きさに面食らいます。もっと小さく,もっと凝縮感のあるものを期待しただけに,叩くと「カンカン」と無粋な音を発する筐体に,まず最初に幻滅しました。

 実際に大きいという事もそうですが,多用された曲面とデザインの妙技によって小さく見えているはずですから,実際には見えている以上に大きいはずです。事実,大きさから来る持ちにくさまでは,隠し切れていません。

 プラスチッキーで,ああこれはやっぱりチェキ一族なんだなあと思うのですが,これだけ設計に無理をしていなければ,落としたりぶつけたりしても,壊れることなどないんじゃないかと思います。


(2)画質

 注目点である画質ですが,これもちょっと期待外れでした。本体で撮影,本体で印刷してみると,銀塩のチェキとそっくりの画質で印刷されます。

 スマホから印刷してみましたが,これもまあチェキで撮影したかのような見事な画像処理です。色合いといいコントラストといい白飛びの具合といい,チェキの雰囲気をこれほど残せるものかと感心しました。

 カメラのは500万画素と10年前の携帯電話並み,一方の印刷は312dpiで階調ありですのでかなり高画質なはずですが,カメラの画像はそれなりに綺麗でも,印刷するとチェキになります。
 
 原因が印画紙の性能によるものなのか,それとも画像処理でわざと銀塩のチェキと同じ程度の画質を落として印刷しているのかわかりません。しかし,フィルターによって画質がそれなりに変化していることを考えると,印画紙の性能の限界によって画質が低下しているとはちょっと言い切れないように思います。


(3)使い勝手

 使い勝手は悪いです。まず説明書が不親切で,手に取ってもオロオロするだけです。

 設定の一部はスマホのアプリからしか出来なくなっていますが,それがどの機能なのかは説明書には書かれていませんので,試行錯誤が必要です。

 また,広くハイブリッド型を標榜する製品の宿命である,それぞれの機能の切り替えですが,このカメラについては画像の再生と印刷に独立したボタンはあるのに,撮影モードに移行するボタンがシャッターボタンと兼用になっています。私はこれがなかなか理解出来ず,カメラモードへは電源投入時にしか入れないものだと思って,いちいち電源を切っていたくらいです。

 LCDの画質も悪く,解像度も足りなければ発色もコントラストも悪いです。なにより,視野角の狭さには閉口もので,少し横から見ると色が派手に転びます。娘は,こういう機能だと思っていたほどです。

 UIとしても,ボタンへの機能割り当てが直感的ではなく,暗記しないといけないものが散見されます。悪いことにグローバルモデルゆえボタンに付いているのはアイコンで,そのアイコンもわかりにくいものです。

 私自身が操作方法を習得するのに30分ほどかかりましたが,これを娘に教えるのにとても苦労しました。

 もう1つ,許せないのが通信についてです。

 プリンタとして使う時にはスマホとBluetoothで繋ぎます。しかし,同時にペアリングしておける台数が1台に限られているのです。

 複数のスマホと共有出来ず,一々ペアリングを削除しなければなりません。プリンタだけではなく,スマホの設定からも削除が必要なので,とても面倒です。

 スマホやタブレットは一人一台です。家族で共有出来ないと不便で仕方がありません。

 セキュリティ面が理由ではないかと考えましたが,スマホから可能な操作が少ないこともあり,複数のスマホのペアリング情報を残しておくことは難しくないはずです。

 もっとも,設定がスマホのアプリから行う現在の仕組みは,本体の設定状態とアプリの設定の記録とを同期させねばなりません。Aさんが設定したあとBさんが設定をいじり,またAさんに戻ってきたとき,Aさんのスマホに残っている設定状態との食い違いをどこで同期させるのか,真面目に考えないと破綻しそうです。

 個人的には,接続したスマホごとに設定を切り替えるのが良さそうですが,それだとスタンドアロンで使う時にどの設定で使うのかという問題が残ります。ということは,やっぱりスマホのアプリで設定をさせるという現在の仕様そのものに無理があったという事になるでしょう。

 もう1つ,せっかく低画素なカメラなのに,画像をPCなりスマホに転送する方法がないのです。マイクロSDで持ってくればいいのですが,なぜBluetoothで転送できるようにしなかったのでしょうか?これも疑問が残る,不便な仕様の1つです。


(4)面白さ

 実のところ,一度デジタルを経由するかどうかは,紙の写真をすぐに手に入れたいという目的に対して,どうでもいい些末な事なのかも知れません。撮影し,選んで,印刷を行うと,いつものチェキの写真が出てくるという事に,ややこしい背景は関係がありません。

 撮影は手軽に,しかし印刷はよく考えてということで,撮影と印刷が同時に起こるかつてのチェキに比べて,悩む「壁」の場所と大きさが再調整されたものと考える事ができるでしょう。

 そして,撮影と印刷の2点間には,フレームの追加とフィルタによる加工というデジタルならではの遊びがはいります。

 娘はこの2つが面白いらしく,私としてはここをもっと強化するして欲しいなあと思いました。


(5)電池寿命

 電池がすぐ切れます。娘もびっくりしていました。

 充電がUSBからになったことはよいのですが,3時間ほど充電にかかってしまい,その間は使えなくなるのに,簡単に電池が切れてしまいます。

 LCDの輝度を落とすとか,LCDをOFFにするとか,そういう低消費電力化の設定があるかと思いましたがありません。

 原理的なものは仕方がないとして,以前のチェキが,いつ電池を交換したかを忘れてしまうくらい電池が切れなかったことを考えると,今回のモデルはあまりに電池寿命が短すぎるように思います。


(6)全体として

 これはなんとも難しいカメラです。歴代最小のチェキとみるか,スマホの周辺機器とみるか,安い低画質デジカメとみるか,画像を加工できるチェキとみるか,見方によって評価は変わると思います。

 個人的には,画質と質感,大きさと電池寿命で大きく期待から外れてしまった感は否めず,それがこのカメラの魅力を半減させているのですが,嬉々として使っている娘を見ていると,そんなものはどうでもいいのかも知れない,とそんな風にも思えてきました。

 私が残念だと思った点は,おそらく次のモデルの改良点として必ず検討されることだとは思いますが,小型軽量は別にして,高画質化が果たしてチェキのユーザーの望むことかといわれれば,それは違うような気もします。

 オモチャと割り切るにはちょっと高価ですし,スマホのカメラにも画質で負けているので,カメラ代わりにはなり得ません。

 かといって半額の光学式チェキとそんなに出来る事も違ってこないわけで,私の中では,これは結局,賢い人がウンウン唸って1周回って原点に戻ってきたチェキだということに,なってしまいました。

 楽しいのは事実です。子供も面白がって毎日使っています。これが来てから家族で遊ぶことが増えました。

 ただ,それはきっとチェキの面白さが根本にあると思うので,安いチェキとよく比べて選んで欲しいなあと思います。

 夏休みが間近に控えています。チェキを自分の道具にした私の子供が,この夏をどんなふうに切り取って残すのか,楽しみです。

 

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